伏兵
フィル視点です。
※これより後、ちょっとフィルの恋愛脳がうごめきだす為、キャラが違くない?と感じられるかもしれません。ご注意ください。
キン…と刃が仕舞われた金属音が鳴り響く。
夜、誰もいない騎士団の鍛錬室でのトレーニングの日課を終え、軽く息を吐いた。
困った。
ティアが足りない。
それもこれも殿下のせいだ。
訓練と仕事の合間に会いに行こうとすると、「稽古に付き合ってくれる?」だの、時間のできる夜にティアを訪ねようとするとどこからともなくやってきて「婚前のケジメは大切だよね?」だのと。
全然近づけない。
くるくる変わりやすい表情に、キラキラと輝くエメラルドの瞳。
花のような香りのする琥珀の髪。
柔らかい笑い声も暫く聞いていない。
「はぁ…………会いたい…」
「同じようなこと言ってんねアンタら。こっちは無表情だけに怖いけど」
ぽつりとこぼした言葉に気配もなく背後にいたシュウが答えた。
「っ、…驚いた。アンタらって誰のこと」
「姫さん。寂しがってたよ。」
「は?」
ティアも自分に会いたがっているとしたら、結構、いや物凄く嬉しいけど。
「…何でそんなことを教えてくれるんだ?」
「俺は、姫さんの幸せな顔が見たいだけだよ」
パチクリと目を瞬いたフィルにはおかまいなしに「ちなみに、殿下は今日は明日に備えてもう眠ってるよ。」とニカっと笑って、音もなく去っていった。
思わぬ伏兵に居を突かれてしまったフィルは、今度は深い深い溜息を吐いた。
…ライバル多すぎじゃないか?
あの人たらしの姫君は…。
せっかくの助言を活かすべく、フィルは王宮へと足を向けた。
すごく悩んだのですが恋すると人はこうなるんでしょう、きっと…という広い目でご覧いただければ幸いです。
次の話はアップしていいものか…
悩ましいですが…