小姑ですがなにか?
「…………ハイ?え、フィル?」
戸惑うエメラルドの瞳とは対照的に、黄金色の瞳は全く揺るがない。
「えぇと………た、頼りになる人だと思ってるよ」
「姉上にとって、ディオポルトもシュウもそうですよね。それだけですか?」
スパン!といっそ小気味よく切り込まれ、ティアは音にならない空気を吐き出す。
嘘も誤魔化しも許されない雰囲気だ。ティアはついに観念した。
「ーーーーあ、えっと。す、好きだなと思ったりもするけど……っぅうわあ!エドっ、こ、これ内緒にしてくれるんだよね⁉︎自分から人にキチンと話したの初めてだから死にそうなくらい恥ずかしいんだけど!」
両手で隠した頬を真っ赤に染めて口をはくはくさせるティアは、知らない少女のようだった。
胸がきゅっとなるのを自覚しながらエドは質問を重ねる。
「…姉上は、この先ディオルクとどうなるおつもりですか?共にいて幸せになれると思いますか?」
目をぱちくりさせたかと思うと、ようやく平静を取り戻したのかティアはくすくす笑いだす。
怪訝そうな顔をするエドに一言。
「エドがなんだかお母さんみたい。」
なんだそれはーーーー
肩を落とすエドに、笑いを収めたティアは真面目な顔をする。
「どうなるかは私だけの話じゃないし…まだよくわからないなぁ。」
困ったように言うから自分でも戸惑い、よくわかっていないのだろう。
「でも、ひとつだけ確かなのは。私がフィルを幸せにしたいってこと、かな。私はもうエドやみんなに、たくさん幸せをもらってるからね。」
そう言って綻ばせた顔がやけに優しくて、エドは、大切な姉をかっさらって行こうとしているディオルクはやっぱりいけ好かない、と再認識した。
また、自分がティアには特に幸せになって欲しい、と強く思っていることも。
この笑顔を曇らせたくはない。
そうですか、と小さく頷き、よく休むようにティアに言い含めて部屋を出る。
「…殿下。」
ティアが倒れたとでも聞いたのか、フィリスが部屋の前に来て待っていた。
どんな会話をしたか予想はついているのだろう、いつもの無表情ながらどこか複雑な面持ちだ。
「ディオルク、姉上は大丈夫だ。私自ら介抱したから。それにこんな夜更けに身内でもない男が婚前の淑女の部屋に入るなんて紳士の行為とは言えないな?」
うっ、と小さな呻き声をあげておとなしく引き返していったフィリスをしっかりと見送りながら
ーーーーちょっと邪魔をするくらいなら許されるだろうーーー
わずかながら溜飲を下げたエドだった。
いびる小姑(笑)
それなりに気持ちの落ちつけどころは見つけた模様。




