エドワルド・ポート・セレスティナ
前話までの
エド視点
噴水のある小さな庭園で初めて会った時、"キレイなひとだな"と思った。
女性が義姉とわかったあとは、姉上、と呼ぶと自分だけに綻ぶ顔がなんだかむず痒くて、嬉しかった。
短い時間の中で多くのことを共に学び、それ以外にも早く王族らしくなるために見えないところでの訓練もより一層励んだ。
だから、姉上が魔物の討伐の際に自ら自分の元を離れて戦火に飛び込んで行くのを、立場的にあの場を離れるわけにはいかなかったとはいえ見ているしかなかった己にものすごく腹を立てた。
なのに
強い光が濃い闇を晴らした後、
フィリス・ディオルクが姉上をだき抱えてあらわれた。
その抱えられた姉上の表情を見たとき、自分の中の何かが弾ける音がした。
心から尊敬する、大切な姉上。
その笑顔を向けられたものへの嫉妬なのかーーー
黒いものが心を支配しそうになる中でなんとか平静を保ったのは、王族としての意地だった。
皮肉にもそれは、虐げられるだけだった自分を王族としての意識と共に変えてくれた姉上のおかげで生まれたもので。
だから、ディオルクの功績は正面からしっかりと讃えた。
でも、2人の婚約までは認めない。
姉上に話を聞いてみよう…
そう思って部屋のドアをノックしようとしたとき
ばしゃああん!
何か大きなものが水に落ちる音が聞こえてきた。
「姉上⁉︎」
返事がないことに焦り、部屋の扉を開けるが、姿は見えない。
「…っ、風呂場か」
マリアを呼んで間に合う状況かもわからない。
もし刺客か何かだったらーーーー
護衛の兵を入り口に残し、エドは迷わず風呂場へ足を踏み入れた。
結果、浅いお風呂でのぼせて溺れかけている義姉を見つけたというわけだ。
裸はなるべく見ないように全力で意識した。
こちらが逆上せそうだった。
眠るティアを見て、出会った時のことを思い出す。
大きな存在だと背中を見ていたけれど、握った手は暖かくも小さい。
起きたティアに水を飲ませ、抱き寄せた肩はすっぽり腕の中に納まるほどしかなく、息を飲む。
お風呂上がりの香りに鼻腔をくすぐられ、吸い寄せられるように頰に手をやれば、ビクリと震える義姉に我に返った。
まずい、体が勝手に動いていた…
誤魔化すように本題に入る。
「姉上はディオルクのことをどう思っていらっしゃるのでしょうか?」
小姑エド、誕生