鈍感は凶器
ご無沙汰しております!
お待たせしてすみませんでした!
帰還した時のティアのヨレヨレの姿を見て、マリアが顔を青くした。
みんな埃かぶってクタクタの格好だというのは同じではあるが。
「陛下への報告は私が参りますので、姉上はお休みください。」
エドは一瞬ティアを支えるフィリスの方を見たものの、結局向き直してシュウにこう告げた。
「……姉上を部屋へお連れしてくれ」
「かしこまりました。」
シュウはスッと無駄のない動作でティアを支え、歩き出す。
「ーーー殿下、自分は殿下とご一緒して宜しいでしょうか?」
「もちろん構わない。では、身支度を整えたら王の間へ。」
「はっ」
この時フィリスとエドの2人の間にかすかな緊張が走ったことなど、ティアは全く気づくよしもなかった。
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マリアが湯の準備をしに部屋の奥へ消えていくのを横目に、ティアはゆっくりとソファへ身を沈める。
「姫さんさぁ、もうこっちの寿命が縮むようなことしないでよ?殿下が鬼のようになるんだから勘弁してよ」
護衛がつくまでの繋ぎなのか扉の側に立ったままのシュウにそう言われると、申し訳ない気持ちで眉が下がる。
「心配させちゃってごめんってばー。ただ、姉想いなのは最高だけどエドは過保護だと思うんだよなぁ…」
シュウはその言葉に、ため息をひとつ。
「姫さんの鈍感っぷりはもはや凶器だよね。」
「え、何それ⁉︎」
嫌なんだけど!
後半の叫びを無視してシュウは肩をすくめる。
「だってさ、ロードの旦那の好意とか、全然気づいてなかったわけでしょ?」
「うっ!?そ、それはそうだけど!」
シュウは気付いていたのだということに気づき、顔を赤らめつつキッと顔を上げると、いつの間にやらシュウが真ん前に来ていたシュウにびっくりする。
そのまま、ぎっ…とソファの背もたれに両手をつかれ、シュウの腕の中に囲まれるような状態になってしまう。
「シ、シュウ…?」
身動きがとれず困惑する。
「姫さんのこと特別に想ってる人はいっぱいいるよ。それも気づいてないんでしょ?」
ねぇ?といつものシュウからは及びもつかない艶やかな雰囲気を醸し出しながら首をかしげた。
すこし焼けた肌に切れ長の瞳。
これまで至近距離で見ることのなかったそれ。
な、何これ、誰⁉︎
ていうかこの状況、なんなの⁉︎
覆いかぶさるようなシュウに対して脳内が混乱して思わずファイティングポーズをとったティアに、シュウは苦笑して体を起こす。
「まったく…色気が皆無だね姫さん!とにかく、悪意以外に好意が思わぬ事態をもたらすこともあるんだから、そこんとこの機微をもうちょっと分かるようにならないとね?姫さんなんだし。」
コロッといつもの雰囲気に戻ったシュウに、ティアは無言でこくこく頷いたのだった。
シュウ…が個人的には好きです(笑)
お読みくださりありがとうございました!
そしてお待たせしすぎて申し訳ありませんでした…。
道筋は出来てるのになかなか方向性に踏ん切りがつかず、自分史上最大に悩みました。
受け入れてもらえるのか…ドキドキ
次はおそらくフィルとエドの話です。
エドも好きです、個人的には。




