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蜘蛛VSティア

蜘蛛はダメです本当に…


「くくくくっ、く、くも蜘蛛ぉぉぉ!?」



しかも見たことないくらいにデカイ!!!!


なにあれ無理無理無理無理!!!

蜘蛛だけは存在が無理!



「く…っ!糸が絡まる…っおい、早くこの闇を抜け出すぞ!」


蜘蛛の吐き出す糸を剣で引きちぎりながら王子が叫ぶ。



私はあまりの恐ろしさにすぐに体が動かず、ぞわぞわ足元から鳥肌が立つ。


ついに王子も私も糸に足を絡め取られ、宙に浮いたその瞬間。


耐えきれず体からぶわりと魔力が溢れ出す。



「ひ…い、ぁ、ぃやぁぁぁあぁ?!!」



辺り一帯が、眩い光に包まれた。



+++++++++++++++++++++++++



光の魔力が凄い勢いで溢れ出し、辺りを覆い尽くした。


目の前の競り合っていた魔物から闇の力が吹き飛ばされ、あっけなく崩れていく。


光が収まった後には特に闇が濃い何体かだけが残り、討伐隊は一気に優勢になった。



ーーー今の光は、ティア?



自身の腕の闇の力が覚えのある光に反応したのを感じ、焦りを覚えながらも周囲を鼓舞する。


「魔物の闇が晴れたこの隙を逃すな!残らず殲滅しろ!!」


そう声を張り上げつつ、これまでの倍速で魔物を切り飛ばしながら、光のさす方へと走った。


++++++++++++++++++++++++++



「はぁっはぁ、は…っ」


胸を手で押さえ肩で息をする。

足はひどく震え、立っているのもままならない。


赤い瞳、白銀の髪になったティアの周りには、大蜘蛛の残骸と数え切れない蜘蛛の死骸が残されている。


宙ぶらりんから地面に落とされ気を失ったのか、レオナルド王子は倒れてはいるが大きな怪我はなさそうでホッとした。



「………ッティア!!!」


「フィ、ル……」


「っ大丈夫、ティア」


ついに足から力が抜けたティアをフィルが支える。


「フィル…っぅ、ひくっうぅ、くも、くもが、」


ポロポロ涙を流しながら息も絶え絶えによく分からない説明をしていると、ふわりと抱き締められた。


「よかった無事で…戦場に赴いた時よりも、生きた心地、しなかった」


そう深く息をつく。


優しい言葉と共に気遣う視線で支えてくれる大切な人の温もりに心の底から安堵する。

フィルの首筋に顔をうずめる形になり、すん、と匂いをかぐとすぐに涙が収まる。


「フィルの匂い…落ち着く」


すんすんと鼻を首筋につけたままかいでいると、少し焦ったような声が落ちてくる。


「…っティア。ここでそういうことしないで。我慢できなくなる」


「?」


何のことだと首をかしげると「あぁもう…タチ悪い」と目の周りを赤くして頭を振る。


魔力を一気に広範囲で放出したせいでしばらく待っても体にうまく力が入らないのがわかったのか、フィルにそのまま膝下に手を差し込まれ、お姫様抱っこをされたところで我にかえる。


「フィル、ごめん!恥ずかしいから降ろして…」

そう言っても聞き入れてはもらえず。


少ししてから離れたところにいたエドやシュウ達もモンスターを掃討し終えたのがわかった。


……というか先ほどから遠巻きにこちらを見られている気がする。



目を覚ましたレオナルド王子や周りに集まってきたユーレストの騎士達もぼんやりとこちらを見ていて、すごく居心地が悪い。




「魔物の討伐、根源の浄化は完了した。……殿下のところに戻ろう。」


フィルが周りでこちらを見ていたユーレスト、セレスティナ両軍にそう言って戻ると、黒いオーラの魔物…ではなくかなりお怒りの様子のエドが待っていた。


フィルに肩を支えられたままの私をチラリと見て、笑む。

「それで……姉上?総指揮の僕の言葉も聞かずに飛び出した挙句力を使い果たしてフラフラになった理由を聞いても?」



こっ、怖い!

なんだか義弟が怖い!!!

いつもの微笑みなのに⁉︎



「す………すみませんでした…」

へろへろと頭を下げて謝ると、エドが近づいてくる。


頭を下げたまま顔だけあげると、困ったように眉を下げたエドの顔がすぐ目の前にあった。


頬を挟まれてこつん、と頭を合わせる。


「……心配しました。もう何度目ですか?僕を置いていくのは。1人で飛び出していくのはやめてください。」


突然の触れ合いに一気に顔に熱が集まったけど、ゆっくり言葉が染みてきて、あぁ、家族に心配されるってこういう感じだったっけ…なんて考えたら目尻にじんときた。


ほおを優しくひと撫でして離れたのち、私から詳しい報告を受けたエドが魔物討伐完了を高らかに告げた。



光魔法で闇を元から絶ったため、これで凶悪魔物が異常に増えることもないはず。



こうして怪我人はいたものの奇跡的に死者もなく、共同戦線を無事に終えたのだった。



ユーレストの騎士と打ち合わせていたフィルによると、一応事後報告やら戦勝会やらがあるがその話はまた後日、ということになったらしい。


「今回はティアのお手柄だね。お疲れ様」


そう言って口元を緩めたフィルに、私もふにゃりと笑った。



ティアより戦績低かったら認めてもらえるのか微妙だな…

ーーーそんなフィルの呟きも、疲れ果て眠りの淵にいた私は聞こえなかった。


それぞれの軍が撤収し始める頃には、夕暮れが空を優しいオレンジ色に染めていた。

一瞬で蜘蛛の子蹴散らすティア。


闘いのシーンもっと書きたかったのに…(笑)


読んでくださりありがとうございました!

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