討伐開始!
本日87話を割り込み追加してからの
新話投稿になります。
読まなくても平気ですけども…
混乱を招いてたらすみません。
エドが颯爽と踵を返す後ろにさらにメロメロになりながら見つめていると。
「ティア姫様にも、殿下のそばでセレスティナ軍の後方を守っていただきます。」
討伐隊長フィルからのまさかの指示。
「え」
前衛でガンガン行こうぜ!モードだったんですけど。
す…とわずかに体を寄せたフィルは
「危ないところにわざわざどうしてきたの」と不満げにもらした。
「その危ないところに大切な人がいるから来たの!………勝手に来て悪いと思ってるけど、謝らないから」
私に何も言わずに危険な任務に赴いたことを完全に恨んでる。
じとっと見つめれば、フィルは、はぁ……とため息をついて私の背中をそっと押しやった。
エドやレオナルド王子のところへ早く行けということらしい。
むっとしながらも討伐隊の隊長の言葉には逆らえないので大人しく従う。
「これより討伐を開始する!予定通り背後より巣穴と思われるポイントから魔物を追い立て、こちらに向かわせたところで挟撃する!」
フィルの通る声を合図に、地響きが鳴った。
「闇を纏って凶悪化している可能性が高いと通常の魔物と動きが異なる!必ず2人以上でかかれ!」
そう言いながらも森の奥から次々と姿をあらわす魔物達に、真っ先に立ち向かっていくフィル。
あっという間に薙ぎ倒していく。
鮮やかなその闘技にみほれそうになる。
しかし、そのすぐそばでは、あのユーレストの女騎士が戦っていた。
…なんだかモヤモヤしたものが心をざわつかせた。
私もとなりで戦いたかった。
…立場が違うのはわかってるけどーーー
「上からも来たぞぉ!」
騎士の悲鳴に近い警告に気を引き締めてパッと見上げれば、鳥型の魔物達。
「姫さん援護よろしく!」
シュウが魔物達に向かって飛び上がる。
『風の咆哮!』
一陣の風が唸りを上げて吹いたかと思うとシュウがそれに合わせて空中の鳥型魔物よりも高くへ飛び上がり、次々と飛び移りながら倒していく。
私の攻撃魔法をバカスカ打って味方というかユーレスト軍に当たったら困るので控えておき、シュウを風でフォローすることに徹底する。
打ち合わせてなかったけど、戦いの間合いはバッチリだ。
レオナルド王子は私が魔法を使ったことに驚いたようだが、すぐに魔物達の血の匂いに顔を顰め、視線を戻す。
「殿下!!」
騎士の叫び声でハッと横を見ると、馬から降りたエドが軍の前衛をすり抜けてきたのであろう小さな魔物達を騎士と共に斬り捨てるところだった。
「こちらまできたか。姉上!上空はあらかた片付いたようですから、こちらへ…」と私を招こうとしたところで、悲鳴が上がる。
「うわぁ⁉︎おっ降ろせ!!」
騎士に囲まれて守られていたはずのユーレストのレオナルド王子がいつの間にか守りの囲いを抜けたところで鳥型の魔物に捕まっていた。
なにしてんのあの王子!!
魔法を放とうとしたところで魔物が飛び上がり、照準が定まらなくなったので断念。
『風の波!』
風に乗って浮き上がり、後を追う。
「姉上!危険です!!騎士に任せてください」
「ち…っ!姫さん、俺が追う!」
「それじゃ見失っちゃう!すぐ連れて戻るから!!」
巣まで連れて行かれるとやっかいだ。
エドとシュウの制止を振り切ってスピードを上げる。
「…っ!追いついたっ『荊の檻』!」
なんとか空中で鳥に追いつき、荊を絡める魔法で鳥を仕留めることができた。
落ちる途中で王子を受け止め、風のクッションで落下速度を軽減、ふわりと着地した。
魔法を立て続けに連続使用したことで若干の疲労を感じて、肩をコキコキと動かす。
「ふぅ……。レオナルド殿下、大丈夫ですか」
「…………あぁ。」
抱き留めていた私から離れて、王子は小さな声で答えながら辺りを見渡した。
「ここは………」
森の中ではあるが、ずいぶんと暗い。闇の力が満ちているようだ。
…これは……まさかの闇の残滓の核まで近づいちゃったかな?
私は大丈夫だけど、この王子は危ないかも…。
「ひとまず安全なところまで戻りましょう、殿下。」
足を踏み出そうとしたところで、奇妙な音に気づく。
カサカサッ
カサ カサカサカサ…
「おい?」
王子は聞こえていないのか、急に立ち止まった私に怪訝な顔をする。
「こ、この音、は」
ギギッと振り返ると、そこにいたのはーーーーーー
数え切れない子グモを従えた人間の三倍ほどはある大蜘蛛だった。
読んでくださりありがとうございます!