天然
お待たせしました!すみません!
そしてサブタイトル適当です。すみません!
ヤエムの宿屋に入り一息つく。
また襲撃がないとも限らないけど、それでビビって出発して、帰路で襲われたらたまったものじゃない。
「先ほどはご立派でした。」
マリアが宿屋の主人に飲み物を頼みに行っている間、部屋で2人になったロードにお褒めの言葉をもらってしまった。
「先ほどって…」
『愚か者!!他者の邪魔をしたところで自らを貶めるだけど気づけませんか?素晴らしい品物は、たゆまぬ努力と勤勉、誠意の上で成り立つのだと知りなさい!』
「…というあの啖呵でございます」
「一字一句、声色までよく真似たものね…いや、勢い余って口から出てしまっただけなんだけどね」
「それでも、あの者たちは国を侮辱したも同然。王家らしいご対応でした。」
隊長として周囲から多くの尊敬を集めるロードにそうやって認められるとなんだかくすぐったいけど、とても嬉しい。
「…ありがとう。」
フィルも見てたら褒めてくれたかなぁ…
ぼんやりそんなことを思う。
「…フィリスのことをお考えですか?」
「えっ⁉︎え、…あ、な、なんでわかったの?」
おぅ…これじゃ認めたようなもんじゃないか!
唐突だったから動揺が隠せない!く…っまたしても修行が足りない…!
「あなたの表情を見ていればわかりますよ。フィリスと…うまくいっているのですね」
「……たぶん、そうだと思う…」
ハッキリ好きって言われたわけじゃないけど…大切には思ってくれているはず。
モゴモゴ答えると、そうですか、と呟いたロードは目を瞑り深く息を吐く。
「そうであったとしても……お守りすることを許していただけますか?」
「あ、あのロード…」
こういう時、何て言えばいいかわからない。
でも慌てる私の前で笑った顔は、いつも通り穏やかで。
何か言う前にそこでマリアが戻ってきたので、ロード入れ替わりで部屋を出て外の警備へ向かっていった。
「…姫様、どうかなさいましたか」
「マリア…」
たぶん情けない顔してるんだろうなぁ私。
……なんか一人で生活してた時より弱くなったみたいだ。
「何でも屋の時は…満足度100%をかかげて依頼をこなしてきてたんだけど。でも…色んな人に、もらった気持ちに対して100%で返すって、できないのかなぁ」
「もらう気持ちと同じものを全ての人に返すなど、不可能なことですわ。それでも、姫様が返したいと思うことを辞める必要はないのでは?『100%向ける気持ち』の形が違うだけですもの。」
気持ちの形が違う…
「……そっか!」
ありがとう! と言って部屋を飛び出そうとするティアの首根っこを捕まえて、「その格好でどこへ行く気ですの?明日になさいませ」と、マリアは冷ややかな目で怒ったのだった。
その頃、宿屋の外では…
他の騎士達とともに建物の入り口脇に立っているロードに、ある影が近づく。
「ロード、さん。」
隙なく警備しているように見えたロードは少しボンヤリしていたらしく、小さく肩を揺らして声の方を見た。
「ハノアさん?どうしました、こんな夜更けに。危ないですよ。」
ロードの言ってることを聞いているのかいないのか、気にした風もなくハノアはぺこりと頭を下げた。
「今日、ごめんなさい」
「謝ることはありませんよ、怪我がなくて何よりです。」
ハノアはじ…っとロードの肩を見る。
肩の傷は浅いものの、宮廷の治癒師は同行していなかったため、通常医療による処置しかしていない。
「ごめん、なさい」
再びハノアが頭を下げるとロードは困ったように眉を下げる。
「……ハノアさん、せっかくなら、謝罪でなく別の言葉の方が嬉しいですね。」
きょとん、としたハノアに微笑んでポンポンと頭を撫でる。
「女の子に怪我をさせるなど騎士の名折れですから。」
「…あ、………ありがとう、ございましたっ」
顔を真っ赤にしたハノアは勢いよく頭を下げてから、集落の方へと走り去った。
ーーー遠目でその様子を見ていた騎士は、後に「ロード隊長は天然のタラシだ」と言い伝えたという。
そうして夜の闇はゆるやかに心地よくすべての時間を包み込みこんでいった。
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