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動き出す

お待たせして申し訳ありません…

集落の開けたところで、ノームアンセスタのみなさんを前に切り株に腰掛ける。


「ふぅ・・・つっかれたぁ!あ、ヒリエス君、お茶ありがとー」


「いいえ。それよりもこれはどういう・・・」



「父からお仕事もぎとってきた!」

戸惑いながら尋ねてくるヒリエス君ににっこり笑って親指を立てると、「姫様!はしたないです!」とマリアに怒られた。



私がぶりぶりのドレスまで着て姫とわかられた上でココに来なければいけなかった理由。


王家から正式にノームアンセスタに依頼がなされるのを広めたかったから。


国に認められた能力を国民が卑下することはできない。


ノームアンセスタの能力の高さを、差別なくきちんと認めさせたい。


それに、国からの依頼を見事にやり遂げた暁には、人々はその前の悪評など忘れてしまうだろう。


そんなことを考えてのことだった。

実際、他にできる人もいないだろうしね。


説明すると、あたりは静まり返った。


ちょっぴり不安になってくる。

「・・・勝手なことしてかえって迷惑だったらごめんなさい。」


ち、沈黙が痛い。

もうやってしまったから今から「やっぱキャンセルで!」とかは無理だ。嫌がられたら謝るしかない。


そう心の中でビクビクしていると、

「…このような王族がいるとは、この国も随分様変わりしそうだ。その依頼、有り難く受けさせて戴きたく。また、我らのためにこのようなところまでご足労頂き、感謝いたす。ティア姫。」

監督が膝をついて頭を垂れた。


それに続いて、その場にいたノームアンセスタ達全員が跪いて深々と頭を下げていった。


「え、いや、そんなことしなくても…」


「姫様」


小さく自分を呼ぶロードの声でハッとした。


そうだ、姫として来たんだから、感謝の意をキチンと受け入れなくてはいけない。


私はすっと息をしていまだ頭を下げ続けるノームアンセスタの皆に声をかけた。


「…どうぞ頭を上げて下さい。私は依頼を持ってきたというだけ。ここから自身に対する見られ方をどう変えていけるかは、貴方達次第よ。…期待しています。」


最後だけちょっとティア個人の感想が入っちゃったけど。

言い終わると皆が顔を上げ、晴れやかな表情を見せてくれた。


その後、建設に関して材料や必要な他の人員を国で厳選して手配することなどを打ち合わせ、ノームアンセスタの皆も早速動き出す。



一息ついた頃には日が傾いていたため、ヤエムに宿を取り、一泊することに。



「それにしても、ティアさ…貴方様が姫様だとは知らず、大変失礼致しました。」


宿まで案内しようとついてきてくれたヒリエス君が頭を下げる。


「今まで通りティアさん、でいいよ?堅苦しい敬語も嫌だなぁ何だか」


「いえ、さすがにそういう訳には…」


「ティア、さん。姫様、大変?」


ヒリエス君とは反対側の私の隣を歩きつつ、何のためらいもなくこれまで通りに接してくるハノアちゃんに、ヒリエス君は目を見開き「ハノア!」と窘めたがハノアちゃんはどこ吹く風。


その様子がおかしくて笑うと、それぞれ前方後方にいるロードやディエゴもくすりと笑い声をもらす。


「そうだね、大変かも。でも、それ以上にいいことも沢山あるよ」


「いいこと?」


「そう。この国のことももっと好きになれたし、大切な人達も増えた。そういう守りたいものがあるからこそ、やらなきゃいけないことや責任も増えるけど、苦しくはないかな。……わかる?」


微笑みながらハノアちゃんに返すと、よくわからないのか、難しい顔をして唸っていた。


そのうちわかるよ、と頭をポンと撫でると、照れたようにはにかんだ。



そうしてヒリエス君やハノアちゃんと話しながら集落を出ようとした、その時。



突然、茂みから男達が飛びかかってきた。



男から一番近いのは、ハノアちゃん。



咄嗟にハノアちゃんの手を引くと、すぐにロードがハノアちゃんごと私をだき抱えて飛び退く。


「……ッ」


抱き締められる体勢で、耳元に聞こえたロードの吐息に違和感を覚える。


「ロード?」


そっと腕の力を緩めて見やると、私達を庇ったのだろう、肩に傷を負っていた。


「ロード!大丈夫⁉︎」


思わず顔を青くする私に、あっさり頷き体勢を立て直すロード。


「問題ありません。姫様、ハノアさん、お怪我はありませんね。それより、ここを動かぬよう。」


後方にいたディエゴや他の騎士達によって数人の男達は捕らえられたが、念のため他に刺客がいないか見回る騎士達。


どうやら、ノームアンセスタと同業の他社の差し金だったようだ。



「こんなことしてくるなんて…」

ヒリエス君のつぶやきに、私は落ち着いて返す。


「まぁ、これくらいは予測の範囲内だから。」


ただ、ハノアちゃん達がいたからロードも私も対応が一瞬遅れた。

ロードに怪我をさせてしまったのが辛くて、ちらりと呼ばれてきた近くの医者の手当を受けるロードを見る。


ふと顔を上げたロードと目が合うと、柔らかな微笑を返され、慌てて目をそらす。


動揺を隠せないとは、私もまだまだ修行が足りない…

冷静さを取りもどそうと必死になる。


そのせいで、手を繋いだままだったハノアちゃんの手に、ぎゅっと力が入ったことにも気づかなかった。


いろいろ、

動き出してます。


読んでくださりありがとうございました!


仕事のペースからいって頑張って週1更新かな…という感じです。


楽しみにしてくださってる方はすみません!

気長にお待ちいただければ幸いです。

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