甘い笑顔
お待たせしました。
今回も長いです。
手を伸ばせば触れられるくらいのところにフィルが立っている。
慌てていたのかまだ少し息が乱れじんわりと汗をかいているけど、今はそれがより生命力を感じさせてくれて。
しかし、自分の目が信じられず都合のいい幻覚でも見ているのかと頰をつねってみる。
つねりすぎた。痛い…
「…何してるの。」
「夢かと、思っ…よかっ…」
堪えていた涙が安堵によって緩んでこぼれ落ちる。
その涙を掬い取ってくれる手は温かい。
…本物のフィルだ…
じわじわと心があたたかくなっていく。
「さっき麓でロード達にもすごい怒られたんだけど…心配かけてごめん」
少しだけ首を傾げて困ったように言う。
「フィル…っ!」
口元を緩める久しぶりの笑みを見て一気に湧いた喜びのままぎゅっと抱きついて、フィル、と繰り返し呼びながらわんわん泣いた。
細身ながら広いフィルの胸の中で体温を感じているとさらに泣けてくる。
フィルは一瞬強張った後、戸惑いがちに私の背中に手を回し、優しく抱きしめた。
「…眠っている時、闇の中で君の声が聞こえた。その後温かい光に包まれたと思ったら、目が覚めたんだ。」
あやすように私の頭を撫でながらそういうフィルの言葉を精霊王が引き継ぐ。
『光の精霊王の魔力による祝福だな』
「祝福??」
「光の精霊王の魔力?」
きょと、と顔をあげた私と怪訝な顔をしたフィルの声が重なる。
あ、そうか。フィルは知らないんだった。
「フィル、こちら、光の精霊王。で、私のおばあちゃん。」
泣きながらだったから片言になってしまった。
「は?」
このバカ何を言ってるんだ?という表情ですら、懐かしくてつい顔が綻んでしまう。
「だから、お母さんは光の精霊王の子供で、私は子孫だったの。で、祝福って?」
ザックリ説明を強制終了して気になったことを精霊王に問いかけると、
『其方の光を外側から浴びせるのではなく、内側に循環するように魔法を授けたろう?
それが我の魔力であれば祝福となってその身を光で満たす。おそらくそれで其の男を蝕んでいた闇を払ったのだろう。その時のティアの魔力が其の男の体内にあったからこそ、我の光が其方の時と同じく反応してここまで連れて来たのだ。』
内側に光の魔力を循環?
……そんなことしたっけ?
顎に手を添えて思い返す。
「あ」
気づいた瞬間、一気に顔が熱くなる。
そ、そうだった私眠り続けるフィルにキ、キスを…!
ぅわぁぁぁぁ!!!!!!!
あの時必死で気づかなかったけど、よく考えたら寝込みを襲ったようなものじゃん!
最悪!!
「…ティア?」
「ぐわぇ⁉︎」
乙女としてあるまじき奇声を発して、寄り添ったままだったところから飛び退る。
なぜか不満げな顔をしたフィルは、
「ティア?どういうこと?」と尋ねてくる。
言 え る か!!!
「いや……別に…なんでも、何もしてないよ!」
『目を泳がせながら答えても全然説得力がないぞ、ティア。』
「ぐぅ…!お、おばあちゃんは黙っててくれる⁉︎」
キッと睨むと、精霊王はニヤニヤしながら『おぉうちの孫は怖い怖い。ーー其の男に聞きたいことがある。其方も泣き疲れたろう。茶でも淹れてくる』と言って私たちから離れていった。
…ちょっと気を遣わせたかな?
「ティア、ごめん。ちょっとからかっただけ。さっきも言ったけど、眠っててもティアの声、聞こえてたから。」
え、と見やると再び距離を詰めていたフィルの綺麗な顔がすぐ目の前にあった。
思わず後ずさろうとする私の頰を両手ではさんで固定してしまう。
熱を持った瞳で射抜かれ、鼓動が高鳴る。
「ティア」
あぁ、なんで名前を呼ばれるだけで胸がきゅっと苦しくなるんだろう
「近づくだけじゃ、足りないよ。それから、あのキスの意味は…これからじっくりと教えてあげる。毎日でも。」
そう言ってまぶたや額、頰にキスの雨を降らせてくる。
最後に、啄むように軽く唇を合わせた。
「もう離さないから、覚悟して?」
吐息のかかる距離でそう言って、今までにないくらい温かに甘く笑った。
読んでくださりありがとうございます。
想い開通?
どーだ甘いだろう!!
……すみません(笑)
ちょっと仕事でハイになった状態なもので…
言うほど甘くもないよっていう。
ていうかフィル久々でどんなキャラか若干忘れている…
フィルを好きでいてくれる方、イメージ壊したらごめんなさい!




