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慰労会までのひととき

お待たせしました…!

先日の反逆者討伐の重要関係者だけの内々の慰労会ということで、今日のティアは落ち着いた紺の細めのシルエットのドレスに身を包んでいる。

繊細なレースは黒で、どこか大人っぽい雰囲気だ。


大きなパーティーとは違い華やかにする感じでもないので、化粧も軽め、髪も緩く巻いて片方に纏めてたらすくらいにしてもらった。



準備はバッチリなのだが心の準備は全く出来てない。



フィルとちゃんと話す。



そう決めたはいいものの、どう切り出すか、なんと話せばいいのか、頭の中でいくらシミュレーションしても上手くいかない。



「慰労会までまだ時間があるし、ちょっと涼みに行こうかな。」


今日は護衛の面々も準備があるため、マリアだけを伴って眼と鼻の先にある庭に出た。



「ーおや。姫様?」



やってきたのは、深いアメジストの瞳に女性をメロメロにする笑みをたたえた、シェールだ。


「ごきげんよう、シェール様…いえ、シュヴァルツ公爵、とお呼びするべきですわね。」


す、と淑女の礼をとったティアに、シェールは少しだけ首を傾げて楽しそうな表情になる。

動きに合わせて長めのブラウンの髪がサラサラ揺れるところも世の乙女たちの心をくすぐっている一因だろう。


「ふふ…どうぞ今後もシェールとお呼び下さい。貴方にそう呼ばれることほど私にとって光栄なことはございませんよ。ところで…こんなところで姫様にお会いできるとは、少し早めに来た甲斐がありました。今日はいつにも増して美しい」


蕩けるような微笑みはロードと同じ系統で、つまり、心臓に悪い。


はぁ、と生返事で空を見上げてみる。


実はあの夜会の時に無理矢理肩を抱きこまれたことで、彼に対しては何となく体が引き気味だったりする。


後から聞いたところによると、あの行動は、父であるシュヴァルツ公が私を害さないよう警戒してのことだったそうだ。

…もともと知り合いのフィルとロードはすぐそれに気付いたみたいだけど。


なんでも、シェールはあの父親の意向で騎士団にこそ入っていないものの、昔は学園で1、2を争うほど武芸と頭脳の面でも秀でており、言いよる女性が後を絶たないことから女好きというような噂がながれていたようだ。


…最初にそう言ってくれたらあんなにビビらなくてすんだのに。


少し遠い目をした私を見て何を思ったのか、シェールは突然距離を詰めてきた。手を伸ばせば触れられるところまで来ると、こんな質問を投げかけてきた。


「姫様は、会うたびに美しくなられる。……どなたか心を寄せる方がおられるのですか?」


「えっ!?な、なんででしょう!?」

わたわたしていると、後ろからも声がかかる。


「それは私も気になりますね。」


「ひぇい!?あ…ロード!エド!」


色気のない悲鳴をあげて振り返った私の前には天使の微笑みなのに目が笑ってないロードと、柔らかく笑ってるのに背中から黒いオーラを放つエドがいた。


「姉上?…シュヴァルツ公と一緒だったのですね。」


寄り添うような距離のまま、私の代わりにシェールが返事をする。


「これは、殿下、ロード殿。偶然にも夜の女神が私に微笑んでくれたようで、美しく彩られた姫様に一番にお目にかかる幸運に預かりました。」


頭を下げながらかなり気障なことをのたまう。

そしてその言葉にピクッと体を揺らす2人。



なんだかわからないけど不穏な空気が!!怖いんですけど!



それを破ったのは、温度の低い、涼やかな声だった。



「ーーみなさんお揃いで。そろそろ時間ですよ。姫様、宰相様が探しておられました。先に参りましょう。」


「あ、は、はい。」


急いでフィルについていくと、角を曲がったところで足を止める。



2人きりになったのは久しぶりで緊張して足元を見てた私はもろにフィルの背中に顔面を強打した。


「ぶっ!!!」


「あ、ごめん、…大丈夫…?」


「あ、あぁ、うん大丈夫。フィル、オーウェン宰相はどこ?」


まだ目を合わせるユウキが出なくて、すぐに距離をとってあたりをキョロキョロ見回すと、珍しく歯切れの悪い答えが返ってくる。


「あ、っと…それも、ごめん。ちょっと2人になりたくてああ言ったんだ。」


そのセリフにドキッとする。

思わずパッと顔を上げると、熱を持った青い瞳とかち合う。



「……今日、慰労会が終わった後、話がある。少しでいいから、時間をくれる?」


わ、私もと言ったほうがいいんだろうか?

心拍数が上がって声がうまく出ず、こくこく頷くことしかできない。



ホッとした様子で、ありがとうと口元を緩ませたフィルを見てさらにドキドキしながら、慰労会へ向かうのだった。




駄文長文、お読みいただき感謝です!


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