ロードの想い
お待たせしました!
まさか自分もこんな展開になるとは思いませんでした(笑)
「あれ?姉上?」
「…寝てしまわれたようですわね。昨夜も遅くまで闇魔法について色々調べていたようですから…」
「そろそろ訓練の時間ですが、姫様寝かせときますか?それなら自分は殿下を訓練場までお連れしますけど。すぐ近くですから1人でも問題ないでしょう。」
「あぁ…今日の殿下の模擬試合の相手はお前だったな。じゃあお送りした後、念の為こちらに誰か護衛をよこしてくれ。」
「了解!では殿下、参りましょうか。マリアさんも行きます?」
「そうですわね。目を覚まされた後湯浴みをしたいでしょうから、準備しに行っておりますわ。」
「んじゃ、ロード隊長!あとよろしくです!」
「あぁ」
木陰に残されたロードとティアの2人の間に緩く風が通り抜ける。ティアの隣に腰を下ろして空を見上げると、太陽に雲がかかり地上に陰を落としていた。
寒くないだろうか、とティアの方を見ようとしたとき、木にもたれて眠っていたティアが体ごとこちらにずりおちてきた。
「おっと…!」
咄嗟に近づいて抱き留めたものの、無防備に体を預けてきたティアは目覚める気配が全くない。
ティアからの花のような優しい香りが鼻をくすぐり、腕の中の暖かさに脳内が麻痺する。
肩を抱きこむ力を強くし、ほんのり色づいた唇に吸い込まれそうに、知らず知らず顔を寄せる。
「……ロード」
パッとはじかれるように顔を上げたロードの前に、フィルが立っていた。
その瞳は、怒っているような悲しんでいるような、複雑な揺れ方をしている。
フィルは眠るティアをちらりと見た後、まっすぐにロードを見据える。
小さな頃から共に騎士団にいたが、初めて見るその表情に息を飲んだ。
「フィル…?」
「ロード。はっきり言わせてもらう。…俺はティアをずっと護りたい。願わくば、誰よりも傍で。
それは、姫だからじゃない、ティアだからだ。…ロードは?」
何を言っているのかわからない。
もちろん、自分も姫様を御守りしたいという強い気持ちは誰にも負けないつもりだ。
その疑問はそのまま顔に出ていたのだろう、フィルは凛とした佇まいはそのまま、少しだけ困ったような顔をする。
「…どっちなのかな、と思って。ティアとして?それとも――王妃様の形見である姫様として?」
衝撃を受けた。
今でも王妃様のことは敬愛しているし、その娘である姫様も、もちろん大切な存在だ。
私は、無意識のうちに姫様の中に王妃の影を探していたのか?
「私は…」
そう言ったきり、言葉が出てこない。
す、と視線をそらしたフィルも、どうしていいのかわからないようだった。
「…ごめん、ロード。混乱させたかったわけじゃない。
ただ、同じように傍を望むなら、俺は譲るつもりはないって伝えたかっただけ。」
その場に、木の上から突然2人以外の明るい声が降る。
「旦那たち、ご無沙汰です!」
「シュウ、完全に気配を消すな。さすがの俺とロードも咄嗟に間違って攻撃しかねない。」
「あはは。すみません。お姫さんに色々情報持って来たんですけどね。」
「なにかわかったの?」
「はい。でもまぁ、今回の件の慰労会もあるし、そのときにまとめて関係者に話しします。
…んで、雨がきそうだから、お姫さん、そろそろ中に入れたほうがいいですよ。」
「あ、あぁ…」
ロードは曖昧に言葉を返すだけで、腕にティアを抱いたまま動かない。
どうすればいいのか、迷っているのかもしれない。
「じゃーここは俺が部屋まで運んでおきます。
最短距離で刺客がいても狙われづらいとこ通っていくんで
お2人は訓練所戻っていただいても大丈夫ですがどうします?」
「いや…よろしく頼む。」
「了解。」
シュウにティアを任せるときに一瞬胸がチクリとしたが、
それすらもロードには何の痛みなのかわからなかった。
ティアを抱えたシュウの姿はあっという間に見えなくなり、
フィルにも声をかけて先に訓練所へ返した。
それからすぐに空を覆った厚い雲からぱらぱら雨が落ちてきたが、
雨から逃れようともせず、ロードはそこに立ちすくんでいた。
駄文、読んでいただき感謝です!
ビックリな急展開ですよー
書き溜めてるのでちょっとずつ出していきたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。