お見舞いから始まる嵐
お待たせしました。
しばらくシリアス続きます…!すみません。
「側妃様、殿下、姫様がお越しになりました。」
侍女さんが扉をノックし、扉を開く。
薬草の匂いがする室内では、側妃が横になっているベッドの横、枕元にエドが座っていた。
扉付近にはロードやポルナレフがエドの護衛として待機している。
椅子に座るエドの背中がいつもより小さく見えて、思わず駆け寄り肩に手を置く。
「…エド」
「姉上…」
小さな肩は震えてこそいないが、今にも壊れてしまいそうなほど弱々しい。見上げる瞳にはいつもの輝きがない。
…私はこの小さい子を放って、何をしてたんだ。
母が亡くなった時のことを勝手に引きずって。
エドの頬を包み込んで顔をこちらに向け、こつん、と額を合わせる。
「エド…来るのが遅くなってごめんね。側妃様は侍女のみなさんが見てくれるから少し休もう?」
「…はい…」
いい子、と頭を撫で、ロード達に目配せする。
「私も後から行くから先に殿下を部屋へ。」
「かしこまりました。」
すっと礼をしてロードがエドを支えて部屋をでて行く。
それを見届け、私はひとつ息を飲んで、側妃を視界に入れる。
一応起きてはいるようだが、いつもの猪のような勢いからは考えられないようなか細い呼吸は、体力もかなり低下していることを示していた。
亡くなる直前の母の姿がチラリと頭の奥をかすめたが、きゅ、と手を握り、ゆっくり一呼吸おく。
こんなことをした犯人は近くにいるはずだ。
「…ちょっと側妃様とお話があります。護衛の2人以外下がって。」
侍女達が下がった後、側妃が目線だけでこちらを見た。
「側妃様。回りくどいのは面倒だから単刀直入に言います。あなたに毒を盛ったのは誰ですか?捕まえて解毒剤を持ってくるので教えて下さい。」
驚いた様子で側妃は眉を顰めた。
「あなたのこと快く思ってない私がそんなこと尋ねるのは不思議?……自分のためですよ。私は母を殺して、今はあなたを蝕むその毒に、もう負けたくない、それだけです。」
じっと見つめられて居心地がわるくなり、目をそらしつつ、仕方なく、それに、と続ける。
「……あなたみたいな母親でも…いなくなればエドは悲しむ。血を分けた母親はこの世に1人だけだから」
聞こえるかどうかの小さな声でそう言うと、側妃の口から乾いた息が漏れた。笑ったらしい。
あ、これはバカにしてる目だ。
私がムッとして片眉をあげた時、その目のまま、今度は乾いた息ではなく言葉を紡いだ。
「ホント母親そっくりね…」
そう言った顔が思ったより優しくて、違和感を覚える。
「あなたは…母のこと憎んでいるんじゃないんですか?」
側妃が震える指先で指差した引き出しを開けると、何枚かに渡ってかかれた手紙のようなものが出てきた。
「もしもの時のために、そこに記しておいたわ。…読んでちょうだい」
私は静かに頷き、ページをめくり始める。
それは、側妃、レオナ・シヴァ・セレスティナの人生を綴ったものだった。
お読みいただきありがとうございます。
次は側妃視点です。




