おまじない
貴族達でて来る前に、ちょっと休憩。
どっと疲れた…
が、しかし。
ここからは貴族が相手だ。
少しでも隙を見せれば足元を掬われかねない、というか足を引っ張りかねない。
しっかりしなくちゃ。
元平民の意地を見せてやる!ってそれじゃダメか。
「失礼致します、姫様。そろそろです。」
ドアからこちらを覗くフィルの顔を見て、ちょっとだけ肩の力が抜ける。
「…よしっ」
気持ちを奮い立たせて顔を上げると、フィルと目が合う。
フィルは、はぁ、と大げさな溜息をつき、こちらに歩み寄る。
そして、そのまま指先まで綺麗な手を私の頬にそっと添えた。
「へっ⁉︎え、な、何か?」
「…そんな不安丸出しの顔で見ないでくれる?可愛すぎだから。」
ふ、不安丸出し⁉︎そんなに?
てか、か、可愛すぎって何が⁉︎
もろに狼狽える私を他所に、フィルはゆっくり顔を近づけてーーー
ちゅっ
軽く音を立てて離れた。
「ーーーー⁉︎⁉︎」
フィルは両手で額を抑えて後ずさる私を見て、「不安を吹き飛ばすおまじない」と、くすっと笑った。
た、確かに不安感じるどころじゃないけど、ってそうじゃない!
絶対いま真っ赤になってる!!
これじゃ部屋出れないじゃない!
抗議の意思を込めてきっ、と睨むと、「それ、逆効果だよ?」と顔を覗き込んできたので慌てて顔ごとそらす。
意味がわからないけど危ない気がする!
とにかく、何だかフィルが急に触れてくると変な感じになるからそれだけは避けなくては。
「…も、もう不安は吹き飛びましたからご心配なく!」
「そう?また不安になったらいつでも言って」
大丈夫です!!と言って部屋を出る。
後を着いて来るフィルの足音に、不安とは違う何かを感じていた。
「…フィル、方法はどうであれありがとう。頑張るね。」
振り返って笑うと、フィルは少し間を置いてから、口元を緩めて頷いた。
この大きな扉の向こうには、多くの貴族がいる。
姫として、堂々と。
ーーーうん、やれる。
「開けて」
その一言で扉が開かれる。
読んでいただきありがとうございます〜
甘々って難しいですね。
ティアにはその気がないパターンですし…
こんな甘々シチュエーションっていいよね!みたいなのがあればぜひ教えていただきたいです。
そのうち書いてみたい。
ということで、次こそ貴族との絡みが登場かな?
よろしくお願いします。