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父の暴露

お待たせしました。


数日して、侍女がやってきた。


「お世話を務めさせていただきます、マリアと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」


優雅に淑女の礼をとり挨拶をしてくる彼女に驚いた。

侍女とはいえ、姫につくからには貴族出身とかってことなのかな?


キリッと目尻が上がり藍色の瞳と髪が色白の顔を彩ってクールに見せている。美人さんだ。


「こちらこそよろしくお願いします。マリアさん。」


「…姫様、下のものに対して敬語を使ったり、そのようにさん付けで呼んではいけませんわ。軽んじられてしまいます。わたくしのことはどうぞマリアとお呼びくださいませ。」


「えぇと…じゃあ、マリア。よろしくね…?」

おそらく年上の女性相手に敬語を使わないのも慣れなくてぎこちなくなってしまう。


言葉使いも姫様らしく訓練しなくてはいけませんわね、とニコリと微笑んだ。

おぉ…美人の微笑み!眼福眼福。


「今日明日には、国王陛下から、姫様がお戻りになったことを臣下の皆様にお話なさるそうです。…何か動きがあるかもしれませんので、あまりお一人で出歩かないようお願いいたします。

わたくしもすぐ傍に控えておりますので何か用事があればお申し付けくださいませ。」


「わかった。」


そう言われて思い出したのはあの男の子のことだった。

ちなみに、あれからも何度かエドと庭で過ごした。


あ、名前は、二度目に会ったときにエドと呼んでくださいと言われたのだ。

私もティアでいいと言ったら強く頭を振られたけど、呼ぶと花が綻ぶように笑った。可愛すぎる。


町に住んでいたときの面白かった話をすると、とても喜んで、エドは読んだ本のことなんかを聞かせてくれた。


この城に来てからフィリスさんやロードさん、父も忙しいみたいでそこまで話せないし、私としては和やかにおしゃべりが出来る楽しいひと時だった。


もちろん身分は明かしていないので、私のことは城仕えの侍女とでも思ってるかもしれない。

彼については…身分が高い誰かの子息ではないかと予想していた。



その日は父に呼ばれたため、フィリスさんに連れられて広間にやってきた。


「ここに戻って来て数日たつが、不便はないか?」

「ありません。快適に過ごしています。」


広間で他の人も入ってくる可能性もあるだろうし、言葉使いに注意を払う。


「実は、そなたに会わせたい人がいるのだ。そのことについて説明をさせてもらいたい。」


「???」

クエスチョンマークが浮かんでいる私に対して、慎重に言葉を進める。


「実はだな…お前とカレンが姿を消して数年がたったころにお前達の生存が絶望視され、世継ぎ問題で国政が揺らいだことがあってな。仕方なく…と言っては相手に失礼だが、周囲を納得させるために側妃を迎えたんだ。」



寝耳に水とはこのことだ。国のことを考えてそういうことはまぁあることだ。

でも、そんなこと先に言って欲しかった。


「黙っていてすまない…その、それを言うとお前が会ってすらくれないのではないかと思って…」


「そりゃそうです!"王妃の忘れ形見の姫"なんて、私が煙たく思われるのも当然じゃないですか!」


「でも私はお前と一緒に暮らしたかったのだ…」


どこの人たらしですかそのセリフ。

いい年して捨てられた子犬のような目をしないでください、イケメンが台無しです。


「そのせいでお前に敵意が向いてしまったことは申し開きも無いが…実は話はここからが本題で…実は、その側妃との間に王子をもうけてな。」


「…はい?」


あー頭痛い。

自分の今の立場を理解した。災厄扱いになったとしても文句はいえないレベルの厄介者だ。


「もうお分かりになったかと思いますが…姫様を狙ったのは、側妃のレオナ様側の人間だと思われます。

あの方は殿下を確実に王座につけることに尽力をつくしていますから。」


思わず頭を抱えた私にオーウェン宰相は可哀想なものを見る目で視線をくれていた。


「…私は国のために生きたいとは思っていますが王女になる気などありません、

ということを、徐々に示していくしかないですよね。周囲の思惑も合わさるとそう簡単にいかないでしょうけど…」


「姫様が聡明で助かります。しかしながら、姫様の地位からしても、最初から避けて通ることもできません。そこで、殿下と会っていただきたいのです。」


「え、いきなり?それ、側妃様も一緒?」


さすがにいきなり戦うのも怖いんですけど。思わず素になって聞く。


「いいえ。殿下はそれほどこちらに敵対心を抱かれてはいないはずなので、姫様が害をなすものだのなんだのと吹き込まれる前に会っていただきたいのです。」


「殿下本人はそこまで王座に執着もしていない…と。これはますます私が邪魔なわけだわ。わかった。会いましょう。」


「では…。ロード殿!殿下をこちらにお連れしなさい。」


「御意に。」


少し緊張してきた。こういう時、どういう顔すればいいんだろう?

余裕そうな笑顔かな…と思って表情を作る。


すぐに扉が開き、1人の男の子が俯き加減にゆっくり入ってきた。


王子として少し飾り気のある衣装を着ているその子を見て私は余裕の笑みを即効で脱ぎ捨てた。



「――――っ!エド…!?」



俯かせていた顔をぱっとあげてこちらを凝視するエド。


その様子を見て、父やフィリスさん達も怪訝な顔をする。


「ティ…ティア…さん?」


「え、どういうこと?エドが王子?おとうと?」


2人してどういうことかと見つめ合うけど、周りはさらに混乱している。


「…というか、姫様はどちらで殿下にお会いになられたのですか?」


ひぃ!久々のブリザード!広間が凍るのでやめてくださいフィリスさん!!

滅多に聞かない敬語も怖いです!


慄きながら簡単に説明する。


「夜にフラフラ出歩くなど…何かあったらどうするおつもりだったんですか…?」


ひぃぃ!!こっちは魔王光臨!!

ロードさんは最近天使の微笑みより魔王率の方が高い気がする!


「すすすすみません!」


怖すぎてエドその傍に行ってがっしり腕を掴む。するとエドは恥ずかしいのか、何故か頬を染め、取り繕うように父へと質問する。


「その、ティアさんが、異母姉弟、姉上…ということですか…?」


あねうえ!

いい響き…!!


「そうだ。なんだ、二人ともすでに仲良くなっていたなら良かった。エド、ティアにこの城のこと、色々教えてやってくれ。」


「な、仲良くって…は、はい…。」


ちらりとこちらを見上げたので、「エドが弟なら良かった!よろしくね。」

にこっと笑うと、さらに顔が赤くなった。


混乱してるんだろうな~。でもそんな姿も可愛い。


なでなでしている私を黙って撫でられているエドを、騎士達が、片方は不機嫌さを露に、もう片方は顔を引きつらせつつ静かに見ていた。



でたー


個人的に義弟の立ち位置って大好きです。天使弟、理想的ですよね。

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