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出会い


部屋を抜け出して庭に出てみると、色とりどりの花が咲く花壇や小さな噴水があって、吹き抜ける風が心地よかった。


広すぎず落ち着く庭だ…。

それでも平民として暮らしていた時よりはかなり広いけどね。


正直、色々なことがありすぎて眠れなかったから、少しだけここでゆっくりしようかな。



そう思って、置いてあった大きめの椅子に腰掛ける。

まぶたを閉じ、水の音と風とを感じてそれぞれの精霊が眠る気配をたどりながら、体の力を抜いていった。



「……はっ!?」


ね、寝てた!?

眠れないとか繊細ぶっておいて外でガチ寝するとか!

乙女としてあるまじき行為!


と、そこで体の右側の違和感に気づく。


「……………ええと……?」


ティアの右側、ちょっと空いたスペースにちょこんと男の子が座り、ティアにもたれかかってすやすや眠っていた。


満月の灯りに照らされた髪は黄金色に輝き、少しくせ毛なのかふんわりしており、思わずなでなでしたくなる。


…のんきにそんなこと考えていたけど、これってヤバイかな?

誰にも見つからないようにって言われてたのに早速見つかってしまった。


ここは起こさないように部屋に戻ってなかったことにしようか…

でもこんな男の子一人外に放り出しておくのもなぁ…。


あ。起きた。


ぱちくりと瞬かせた瞳も黄金色で、小動物を彷彿とさせてすごく可愛い。

ああやっぱり撫でたい…ちょっとならいいかな…。

おそるおそる手を伸ばす。


なでなで。


「………」


なでなでなで。


「………」


「ああ~きゃわいい~癒される~」


「あの…」


男の子が戸惑うように声を発した。


「はっ!ご、ごめんね!痛かった??」

慌てて少し距離を取る。


「いいえ…僕の方こそ、勝手に寄りかかって眠ってしまってごめんなさい…」


そう言って見上げてくる頬は薔薇色に染まっている。殺人的な可愛さ…!


「ううん。…君はここによく来るの?」


こくりと頷く。

「夜、眠れないときとか一人になりたい時はここでのんびりします。」


「そっかぁ。じゃあ今日は私が来て邪魔しちゃったか~。ごめんね。

私も何だか眠れなくって来ちゃったんだ。」

はは、と笑ってみる。


「いいえ…」

困ったような顔をしているけど、笑ってくれたらさらに可愛いんだろうなぁ…。


ふと上を見上げると、キレイな満月。

…そうだ!


「お詫びに素敵なもの見せてあげる。ちょっと待ってて。」


そう言って噴水の傍までいき、手のひらに魔力を集める。

風と水に働きかけ、噴水の水を操って滝のように噴射させる。


そうすると、水しぶきに満月の光が当たって、キレイな虹がアーチを描いた。


「すごい…」


「月の光で出来る虹、月虹げっこうっていうのよ。見た人には幸せが訪れるんだって」


昔母と旅した先の滝で偶然見かけたことがある。懐かしい思い出だ。


男の子は呆けたように見入っていたが、

「気に入ってくれた?」と笑いかけると、美しい笑みで「はい、とっても」と答えてくれた。


「お姉さんは精霊魔法が使えるんですね」


「そう。よく知ってるね」


あ、はにかんだ。

美少年はどんな表情も様になるなぁ。

「僕も今魔法について勉強中なんです」


すると男の子は呪文を唱え始めた。

「我が前にその可憐なる息吹を現したまえ」


ふわ…っと白い可憐な1輪の花が男の子の手に現れた。


「わぁ可愛い。すごいね、もうきちんと魔法が使えるんだ」


ふふっと照れくさそうにした後、すっと手を伸ばし、その花を私の髪につけてくれた。


「もらっていいの?嬉しい」

私も思わず顔がほころぶ。男の子もくすぐったそうに笑う。

うん、やっぱり笑った顔が天使みたいで可愛い。


しかし、伸ばしたその腕に傷跡を見つけて思わず細い腕を掴んでしまった。


「この傷…」


さっと腕を隠した男の子は、俯きながら小さな声で呟いた。

「僕は抜けているのでよくドジをしてしまうんです。」


よく見ると、体のあちこちに明らかに誰かに殴られたような傷もある。

理由は知られたくないようなので聞かないけど…でも、その寂しそうな姿をただ見ているのは辛かった。


だから、せめてと思い、そっと男の子の体を抱き寄せる。


「治癒術は使えないから直接癒してあげることはできないけど…痛いのが早く良くなるように、精霊さんにお願いしておこうね」


抱きしめてポンポンと背中を叩きながら、優しく暖かい風で包み込む。


身を硬くしていた男の子の体から少しずつ力が抜けていき、最後にはすすり声が聞こえてきた。


「大丈夫だよ」


胸に顔をうずめて震えながら涙を流す男の子を黙ってだきしめた。



長い間そうしていたけど、男の子も落ち着いたみたいだし、空が白んできたのでもうそろそろ戻らなくちゃ。


ゆっくりと体を離すと、男の子はふんわり微笑して、

「あの、ありがとうございました。僕はエドワルドといいます。」


「私は…ティア。またね、エドワルド君。おやすみなさい。」



お互い名残惜しそうにしながらも手を振って別れる。



このまたね、が、すぐに来るとはこの時の私は全く予想していなかった。


今日も読んでくださりありがとうございます。


ようやく出ました、新キャラ!


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