いよいよ、王都入りです
※2017/9/20誤字訂正
ついに王都へやってきた。
旅人や商人が行き交い、かなり賑わっている。
シュウは王都に入ったとたん、
「報告に行って来るよ!またね、お嬢さん達」と、
さっさと手を振って行ってしまった。
本当にまた会うことになる気がするから不思議な人だ…
ていうか、あれから全然刺客も来ず順調に進んできた私達。
刺客を送ってきた黒幕さんは諦めたんだろうか?
何もないにこしたことはないんだけど…
時間ができたらその件はロードさん達に聞いてみなきゃ。
さて、王都に入ったからといって白昼堂々と正面から国王陛下に会いに行くわけにもいかない。
しばらく表舞台に全く姿を現さなかった姫君の存在が変に知れ渡ると国政を無駄に乱してしまうことになる。
それはきっと母も望んでいなかっただろうから。
夜になったら王宮のどこかにある王族しか使用を許されていない隠し通路から中に入って顔を合わせることになっている。
その通路は王宮の中でも限られた人しか知らないらしく、ロードさんとフィリスさんが私に付き添ってくれるそうだ。
ポルナレフさんとディエゴさんともここでお別れ。
王宮にいることになればまた会うこともあると思うけど、どうなるかはまだわからない。
ちなみに、フィリスさんによると、私も5歳くらいまでは王宮に住んでいたけど、幼く危険だからという理由で王宮の外には出たことがなかったそうだ。
つまり、これが初めての王都ってことです!
なんか王宮の中に入っちゃったらそうそう出られなそうなイメージあるし、せっかくだから王都を満喫したい。
そう申し出たら、ロードさんは少し迷っていたけど
「そうですね…刺客もここまで来たら面だって動けないでしょうから、少し見て回りましょうか」
そう言ってくれた。
姫様の風貌だと王妃様のお姿を記憶している人に対して目立ちます、と肩から頭にかけるショールのようなものを巻かれて息苦しかったけど、そんなもの気にならないくらい真新しい感覚の連続で、ずっとキョロキョロしてしまっている。
「フィリスさん、あれは?」
「あれは、子供に人気のホットスナック。その場で火の魔法を使って焼くパフォーマンスが受けてる。」
「ロードさん、あそこでは何をしているんですか?」
「旅芸者達が大道芸をしているんです。」
土産物屋から面白い日用雑貨までんなお店も揃っていて、大陸中のあらゆる物があるんじゃないかというくらいたくさんのお店が並び、色んな人が行き交っている。
あちこちでお店の人が声をかけてくるのも、活気が出ていい。
「よっ!そこの綺麗なお嬢さん、彼氏とこれでもどうだい?今若い恋人達に人気のスイーツだよ!」
「いえ、彼氏じゃありません。」
とりあえず即座に否定したけど、薄い卵の皮にクリームをたっぷりと巻き込んだかぶりつくお菓子。甘い香りがなんとも食欲をそそる。
なんだかすごく美味しそうだ。
う~ん食べたいかな?と、チラリとフィリスさんを見たら、これでもかというくらい眉間に皺を寄せていた。
はい、すみません。ちょっとでも勘違いされたら嫌ですよね。
気をつけます。
そう思って一歩離れたら、ますます眉間の皺が深まった。
な、なんで??
その後、何故かそれを見ていた、フィリスさんと反対側にいたロードさんがそのスイーツを買ってくれた。
「おっと!ごめんなお嬢さん、こっちが彼氏か!」
「いえ、どちらも違います!」
これ以上余計なこと言わないで!
スイーツを頬張りつつもきちんと誤解を解こうと言ったら、ロードさんの黒い瞳が怪しく光った。
な、なんか怖いんですけど?
2人して微妙な空気を出すので小さくなってスイーツを食べる。
「2人も食べますか?」
食べかけだけど、甘いものでも食べてもらって機嫌をとろうとスイーツを差し出したら、
2人は一瞬こちらを凝視したあとふいっと同時に目をそらした。
そうですかいらないですか…
2人ともなんだかうっすら耳が赤いけど、そんなに暑いかな?
個人的には夜だからか少し冷えるくらいだけど。
そんなことをして過ごし、かなり満喫した。
王都が近づいたとき、これから先のことを考えて緊張していたけど、初めて見たものばかりなのにどこか懐かしい感じがして、少しだけ穏やかな気持ちになれた。




