姫様とは(ディエゴ視点)
謎にディエゴ視点にしてみました(笑)
※2017/9 誤字訂正しました
こんにちは、ディエゴです!
ノームアンセスタのハノアという少女の腕がようやくほどけた頃、
姫様は突然彼らの鍛冶場などを見学したいと言い出した。
本来なら我々は今すぐにでもここを発って王都へ向かいたいところであり、それは姫様もわかってはいると思うけど…
姫様と行動をともにするようになってから、その活発な自由奔放さと、身のうちから溢れる気品に翻弄されまくっている。どちらが本当の姫様なのか。
ロード隊長やフィリス隊長が特に気にした風でもないので、平騎士である私やポルナレフが意見をすることもなく。
何か考えがあるんでしょう。
そうしてまずは鉱山にやってきたものの…
「帰れ!人間共!」
「また俺達の邪魔しに来たんだろう!?出て行け!!」
…普段虐げられているせいで人間不信に陥っているノームアンセスタ達は、我々を視界にも入れたくないようで。そりゃそうか。
数人が我々にかなりの敵意を向け、
その他の人たちは関わらないように遠巻きに仕事をしています。
迫害といってもいいくらいのこともされていると噂で聞いたことがあるので仕方のないことかもしれない。
今の時代、ノームアンセスタ達にいい感情を抱く人間の方が少ないので、先ほどのヒリエスという少年達への姫様の反応の方がかなり珍しかっただろう。
さて、憤る若い彼らを前に、姫様はどうするか?
と、思って見たら、姫様は鉱山で働く他のノームアンセスタに混じって、道具を手に生き生きと掘っていた。
「思ったより難しいのね!えいっ」
…何してるんですか、姫様…
王族がこのようなところに来るだけでも問題なのに、ましてや一緒に作業するなんて前代未聞。
フィリス隊長達やヒリエス少年も目を丸くしている。本当に姫様は規格外です。
「な、お、お前!何やってるんだ!!」
焦るノームアンセスタ達。私もうんうんと頷く。
「え、ちゃんとそっちのおじさまの許可もらいましたよ?」
姫様が指差した人物はこのあたりにいる中では一番大きく、おそらくここを統括しているのだろう、腕を組んであちこちに指示を飛ばしている。
「…っ、監督!こんな人間の小娘を入れるなんて!」
監督と呼ばれた人物と言い合いをする若いノームアンセスタ達。
それを尻目に作業を続けようとした姫様は、ふと洞窟状になっている鉱山の天井の方を見上げ、表情を険しくする。
身を翻し監督に向かっていった。
「…監督!みんなを今すぐここから出して!」
監督はすぐに反応して、中にいた作業員達を外に出し始めて。
何事かと怪訝な顔をする我々の傍にフィリス隊長に肩を支えられてやってきた姫様が「ディエゴさん達も早くっ!」と声をかけてくれた時、洞窟が大きく揺れた。
まさか…崩落する!?
慌てて洞窟の外に身を投げ出すようにして脱出すると、先ほど言い争いをしていたノームアンセスタの若者達が逃げ遅れているのが見える。
まずい!下敷きになってしまう!
一番近くにいたポルナレフが彼らの腕を取ったのを見やると、姫様がフィリス隊長の腕の中から飛び出して魔法を紡いだ。
「樹の網っ!」
どこからともなく蔦が一斉に伸びてきて、崩れ落ちてくる岩を次々受け止めていく。
全員が脱出し終わったあと姫様がかざしていた手をゆっくりとおろすと、蔦は少しずつどこかへ消え、岩が重力を思い出したかのようにずずん…と地面に落ちた。
ポルナレフは少し肩口を切ったようだが、深い傷ではないようだ。
ノームアンセスタが恐る恐る近寄って、傷に効く薬草で手当てをしてくれています。
「今のは…地の魔法…??」
姫様の魔法を見たノームアンセスタ達はざわついている。
そんな中で先ほどの監督が姫様の傍へ来て、頭を下げた。
「危ないところを救っていただき、感謝する。地の精霊王の契約者よ。」
ざわめきが大きくなった。
「気づいてたんですか?」
「お前の身のうちに精霊王の力を感じる。かなり血は薄れたとはいえ、
ノームアンセスタとして地の精霊の力は感じ取れるものだ」
なるほど。自分達の血の頂点・精霊王の力を持つ女だから、
何も言わず作業を許可してくれたってわけですか。
そして、ハノアという少女が姫様を母親呼ばわりしたのも、
おそらく血の匂いをかぎとったのだろう。
「それに俺は結構長生きなほうだからな。お前に良く似た、精霊魔法を使う女に会ったこともある。」
それは…おそらく王妃様のことでしょう。ここにも来た事があったんだ。
「お前…何故俺達を助けた…?」
先ほど姫様につっかかってきた若者達がバツがわるそうに話しかけてきた。
「え、助けるのに理由なんているんですか?」
心底不思議そうに首を傾げる姫様。あれは本気だな…。
「私が言う筋合いではないのは承知ですが、あなた達はもっと自分達に誇りを持つべきです。あんなに素敵なツリーハウスを作る技術も、こうして鉱山で働く腕力もある。そして何より、他を思いやる優しさに溢れてる。人種が違う?それはあなた方が正当な扱いを受けない理由になりません。…そう思うことに対して、もっと、自信を持ってください。」
その言葉と真摯な瞳に、その場にいたノームアンセスタ達は静まり返った。
この話は小さな集落にあっという間に広まり、そのあと姫様が見学にいくあちこちで人だかりができるようになったとさ。
途中人だかりから抜けた姫様がこっそりポルナレフに傷の具合を尋ねて頭を下げていたのを見て、改めて思う。
自由奔放なのも気品が溢れるのも、どちらも姫様なのだ。
国王陛下や王妃様と同じように、姫様が物事を受け入れる器は計り知れない。
だから人も精霊も、彼女に惹かれ集まるのでしょう。
そんなことを思いながら、自分もその一人なのだな、とひとりごちた。
読んでいただき、ありがとうございます
。
ディエゴはフィリスより年上、ロードより下くらい。
みた目がチャラいと言われるのが悩み。
……という使う予定のない設定があります。