小話〜魔道具のその後
115話の後
盗賊達が売り捌こうとしていた宝や魔道具はどうなったの?な話
※注意※
突発的な思い付きで非常にコメディ色の強い至極どうでも良い内容です(おい 笑)
キャラ崩壊してるの見たくないよーという方はスルースキルをご活用下さい。
「ロード隊長、すべて運び終わりました」
「疲れたぁー」
「ポルナレフ、ディエゴ、みんなも、ご苦労だったな。……副団長、これどうしましょうか?」
広間に運び込まれた宝物、魔道具の山に思わず眉間にシワが寄る。
「うーん、すごい量だね。宝に関しては国内の持ち主を辿って返せるものは返して、呪いがかかっていそうなものは魔導師達に解呪をさせてから考えるしかないか…」
「持ち主探すのも大変そうですね…」
フィルが絶望的な声を上げたところでひょっこりシュウが現れる。
「旦那達、ここはシュウさんにお任せ!」
「「は?」」
一番近くにあった絵を手にとってまじまじ観察するシュウ。
「えーと、この年代の絵画、数年前にセレスティナ南の方の商人が落札してましたね」
「落札?」
「うん、闇オークションで」
「……お前…何してたんだ」
「何でも屋の依頼でちょっとねー」
二ヒヒ、と笑ったシュウの言葉をその場にいた皆が聞かなかったことにして、シュウの言う持ち主(暫定)を参考にするためメモしていく。
そこにーーー
「魔道具の解呪するって聞いたから、手が足りなかったら手伝おうと思って来たよ〜」
ティアが登場。
「姫様!でも、危ないですから…」
さすがに副団長は渋ったが、魔導師達は大歓迎だ。
「意見をくださるだけでも!」と懇願するので(それだけ膨大な量なせいもある)、ティアも加わることになったのだが。
それが大騒動の始まりになるとは、誰も思いもしなかった。
作業が思いの外はかどり次々と広間からものが運び出されるなか、事件は起こる。
ガッシャァァン!!!!
大きな音のあと、煙があがる。
「わぁ⁉︎」「なんだ⁉︎」
ケホケホと咳き込む人はいるものの、誰か倒れたり、大きな被害はなかったようだ。
皆がそうホッとしたのもつかの間。
「ぎゃああ⁉︎姫様⁉︎」
「っティア⁉︎」
フィルが魔導師の悲鳴に慌てて見回すと、ティアはちゃんとそこにいた。
いたのだが。
「あぅ?」
だいぶミニサイズになっていた。
「ーーーで、運び出す際にぶつかってしまい、解呪の最中の魔道具が割れてしまった、と。なんの魔道具なんだ?」
不機嫌にエドが魔導師達に確認すると、震えながら代表者が答える。
「そ、それが、ツボに篭った魔気を多量に浴びるとその分の時間を奪う、というものだったようです。姫様が一番近くにいたため大きく影響を受けられたのかと」
「時間を………それで若返ってしまったのか」
「で、ですが、この類の魔力は持続しないので、時間が経てば元に取るはずです。今回は広範囲の空気に拡散したので効力も弱まってるはずですし」
「そうか、わかった。ではとりあえず残りの解呪に当たってくれ」
「「「「かしこまりました!」」」
魔導師達は先程とは比べものにならないほどキビキビと解呪に戻っていく。
「………で、何でこうなってるのか教えてくれないかな、ディオルク?」
「………自分が聞きたいです」
4歳ほどの姿になったミニ・ティア。
いつもの姿がそのまま小さくなっているが、手も、桃色のほっぺも、子供らしくぷくぷくと柔らかみがありそうで、撫で回したくなる可愛さだ。
そのお姫様は、なぜか座るロードの足の間にちょこんと乗り、長い髪を弄ってきゃっきゃと遊んでいる。
その姿は見るものを和ませーーーなかった。
エドとフィルのあたりからブリザードが吹あれたため、早々にディエゴなどはちゃっかり「これ、運んでいきまーす」と避難していた。
「ディオポルト、なぜ姉上はそこにいるんだろうね?」
「心の清らかな者のもとへ行くのかもしれませんよ」
キラリと微笑するロードにギリリと歯噛みするエド。
「手放す気はないのか?」
「この子が離れないんですよ」にっこり。
「く…っ僕も姉上を撫で撫でして愛でたい…!」
それを聞いていたミニティアが、ロードの髪をペイっと離し、とことことエドの元へやって来る。ロードがすごく寂しそうな顔をしたのにはもちろん気づかない。
「なーでなーで」
「くっ⁉︎なんだ、この…嬉しいけど"それじゃない感"!姉上…えーと、この場合違うか…ティア?」
こてん、と首をかしげたティアにエドが「〜〜〜〜〜〜!!!」声もなく悶える。
「えーーーと、そうだ、遊びに行かない?」
「なにするの?」
そう言われてもエドはこの歳の女の子の遊びなど知らない。
「あー、チェス…とか」
「やー」
「あぁ…!」
プイッとそっぽを向かれ崩れ落ちる。
「ティア姫、高い高いしてあげましょう」
「ディオルク、姉上はそんな危険な遊びは「わぁーい!」えぇ⁉︎」
たったかた〜とフィルに駆け寄り飛びつく。
「小さな頃の過ごした時間で言えば護衛してた自分が一番ですから、遊び方は熟知してますよ」ニヤリ。
エドとロードが悔しそうな顔をしてるのを横目に高い高いをするフィル。
「そ〜れ」
「わぁ…うにゃあぁぁー⁉︎こわいぃぃふぇぇぇ!」
「えぇ⁉︎」
「フィルの旦那も背ェ伸びてるし、今はもう高すぎるのか〜」とシュウ。
「あはは、残念だったなーディオルク!」
「そんな馬鹿な………」
フィルはガックリ膝をついた。
少し離れたところからそれらを見守っていたポルナレフは、「これは一体なんの時間なのだろう…」とひとりごちた。
その後も
「ティア姫には黒とか濃い色が似合うのでは」
「いや、姉上は黄色に決まってるだろう」
「ブルーじゃないですか?」
「おーい旦那たちー自分の色を幼女に纏わせようとか軽く犯罪の匂いしますよー」
庭で花かんむりを作り、どれがティアに似合うか言い合いをする3人にシュウも呆れ顔だ。
「シュウ殿は加わらないので?」
先ほどからシュウが殊更優しげな視線をティアに送っていることはわかっている。
ポルナレフがそう尋ねると、
「俺は大人の方が好きだな〜。だってもっと違う遊び方したいしさぁ?」と笑顔で返され、咄嗟によく意味がわからなかった朴念仁のポルナレフは「はぁ」と相槌を打っただけだ。他に人がいなくて幸いである。
そんなちょっとズレた男たちのいるカオスな空間から、遊ぶのに飽きたのかサッサと抜け出したミニティアは、城の中をさまよい歩く。
「ママぁ〜、ぐす、うっ」
暗い廊下を歩くうちに心細くなったのか、泣きながら自分が作った不恰好な花かんむりを握りしめる。
頑張って歩いていくと、大きな扉が開いていたため、おそるおそる中に入る。
と、書類に囲まれた男が顔を上げる。
「ん?なんだ、君は….どこの子だ?見覚えがある気がするが……名前は?」
「あぅ、てぃあ……」
「は?あぅてぃあ?」
剣呑な雰囲気になったのを察知したのか「ふぇ…」と目にこんもりと涙を溜めるティアに、焦ったように近寄って、抱き上げた。
ティアは勢い余って持っていた花冠をぽすん、と男の頭に載せる。
そこでタイミング悪くノックが。
「オーウェン宰相。失礼しま……した」
即座に閉まるドア。
扉の外ではドタドタと喧しい足音が遠ざかっていった。
「…なんなんだ。」
恐れられている宰相が執務室で花冠をかぶって小さな子供を抱いているのを目撃しておののかない勇者は王宮にはいなかった。
抱き上げられてティアが大人しくなったのをいいことに、おそらく迷子であれば自分のところにも話がすぐ来るだろうとそのまま執務を続けることにした。
こう見えて多忙なのだ。
かくして執務机に向かうオーウェン宰相の膝の上でミニティアがコアラのように抱きつきながら眠るというよくわからない構図となった。
それは、魔道具の効果が切れるまで続いた。
「はぁ⁉︎」
ティアは短い悲鳴と寝心地の悪さで目が覚めた。
「ん……?」
硬い布団……というよりもたれかかってる?
ふと顔を上げると、オーウェン宰相と目があった。
「……………え?」
「ひ、姫様……というか、あの子供は」
数秒間見つめ合ったのち、2人して現状を理解。
「うきゃあぁぁぁぁ⁉︎⁉︎」
「うわぁ⁉︎」
その悲鳴でミニティアを捜索していた男達が駆けつける。
「ティア!ここか!………て」
「姫様!!!……おや?」
「ディオルク殿!ディオポルト殿!!これは違うぞ!」
「ひぃぃオーウェン宰相ゴメンなさいすみません!ていうか、なんで私ここにいるの⁉︎」
わたわたと離れながら声を張り上げる2人。
「どういうことかな、オーウェン宰相?」
「殿下!自分も何が何だか。迷子を保護したら膝で寝付いたのでそのままにしていたら、気づけばこんなことに」
「それはわかってる!なぜ姉上がその膝で寝てしまったかということだ!羨ましすぎるだろう!」
「意味がわかりかねます!!」
「私もわからないんですけど⁉︎⁉︎と、とりあえずオーウェン宰相意外と筋肉ありますね!」
「へぇそうなんだ?」
「おぉっフィル怖い!」
「姫様、筋肉なら私もありますよ」
「いや別に筋肉好きとかそういうんじゃないから!」
「何この状況、お、面白すぎる…!」
ぎゃはは、とシュウがお腹をかかえて笑う。
この騒ぎは、ポルナレフが副団長を連れて事の説明に当たるまで続いた。
その後、魔道具の解呪の現場にティアの姿がなかった事は言うまでもない。
平和(笑)
ポルナレフが大人