本領発揮
お待たせしてすみません。
ハノアが活躍します
「ウィンスレット殿、そちら側は任せましたよ!」
「獣如き問題ない、ディオポルト殿、そちらこそ平気か!」
「誰に言ってるんです?これでも騎士団第一部隊長ですよ…っと!」
喋りながら遅いかかる獣を炎を纏わせた槍で殴り飛ばしていく。
切り傷から発火し、獣はじりじり消し炭になっていく。
「紅蓮の騎士は伊達じゃないな」
「それはどうも…む、魔鳥か!」
足元の獣を彼方へ飛ばしながら見上げると無数の魔鳥が出現していた。
ロードは魔鳥の口から吐き出された酸を炎と槍を振る風圧で吹き飛ばすが、数が多い。
その間にも地上の獣がこちらを伺いながらじわじわ距離を詰めてくる。
多くを操るせいなのか、先ほどの死者と違い何度もよみがえることがないのが幸いだが。
「くそ、上に集中すると下がガラ空きになってしまうぞ!」
ウィンスレットが叫んだところで、これまで大人しく2人の姫に寄り添っていたハノアが動き出し、ティアとソフィーヌを庇うように、ロードとウィンスレットの間に立つ。
「ハノアさん?」
「援護する。上、任せて」
元々狩りをするつもりで持っていたかなり大きなサイズの弓を構えるが、果たして少女の矢が魔鳥にどれほど有効か。
解せない様子でロードは戸惑いつつ
「いやでもこの距離ですし、酸を吐くタイプの魔物に弓矢では!」そう声をかけるとーーー
ヒュンッ!!!
ハノアは何も答えず弓から矢放ち、その矢は吹き付けた酸を物ともせず、寸分の狂いなく魔鳥の頭を打ち抜いた。
「前に、あなたを守る、言った。」
そう呟きぽかんとしているロードをよそに、ハノアは次々と魔物を落としていく。
百発百中だ。
「わー鋼鉄の矢とか初めて見た」
そう言うティアの声でハッとする。
ノームアンセスタの人間と比べ長い腕で通常より大きな弓を使いこなし、矢は鉱山でとれた鋼鉄を加工した特製品。
飛距離と強度は波の弓矢と比べ物にならない。
彼らにしか出来ない攻撃とも言える。
「矢、外したことない。甲羅も貫く。酸かかる前にヤる。」
狩人の目だ。
「………では、上はお任せします、ハノアさん」
「……ん」
ハノアがフワリと崩れてみせた初めての笑顔にロードは思わず見入る。
しかし、次の瞬間にはもう狩人の目に戻り、完全に自分に目標を定めた魔鳥達からの酸攻撃を右に左にかわしつつ、着実に数を減らしていく。
他の騎士も、戦いの間にその腕前に時折目にしては瞠目して、放っているのが少女と知りさらに驚きを露わにする。
掃討しつくしたか、というところで、
雄叫びのような声が夜空を突き抜けた。




