ソフィーヌ姫の暴走
「く、すごい人出…城下も戦勝会に合わせてお祭り騒ぎなんだった。」
城下で飛ぶとさすがに目立つので駆け足でソフィーヌ姫を探す。
すぐ捕まえられると思ったのに意外とすばしっこいなぁ…
忙しなく辺りを見回す
………いた!
視線のだいぶ先に、明らかに平民ではない高級な衣服を身につけた少女を発見した。
「ねぇそこの貴方。白銀の髪に紅の瞳の美女を知りません?」
風に乗って聞こえてくる声。
必死に話しかける少女を上から下までジロジロ長め、ニヤニヤしながら酔っ払いが頷く。
「白と赤の女ぁ?…おー知ってるぜぇ!」
いや嘘だろ、というその言葉に、ぱあっ!と表情を変えるソフィーヌ。
「ほ、本当ですの⁉︎」
「あぁ、案内してやるからついてきな」
路地裏に何の疑いもなく入っていく。
ちょ、待てよ!行くんですか⁉︎
仲間と思しき数名の男たちがソフィーヌを取り囲み、腕を乱暴に掴む。
言わんこっちゃないですよ、もう。
「は、離しなさい!無礼者!!」
「ひゃはは!『無礼者!』だってよー!無礼者に乱暴されるアンタは何なんだぁ?」
「いやっ!はっ、離しなさい!離して!!」
手足をばたつかせて暴れても所詮は非力な女の子。男達には敵わない。
口を抑えられてーーーー
「はーい、そこまでですよ、お兄さん方」
あまりに場違いな明るい声に、その場にいた者は思わず皆動きを止める。
路地裏の入り口で立ってこちらを見る私を見て、ソフィーヌは「ムグゥウ!」と叫び声を上げる。
安心させるようににっこりと頷いてから、力ある言葉を紡ぐ。
『風の刃』
数人の男目掛けて魔法を飛ばす。
いきなりのカマイタチに怯む男たち。
「なん…っこの女、魔法使いか⁉︎チッ…早く喉を潰せ!!」
焦りながらも対処法を即座に指示するあたり、ただの輩というわけではなさそうだ。
これは、オーウェン宰相あたりに報告が必要かな?
「させるわけないでしょうが『焔玉』」!
走り寄る男達目掛けて炎の球をぶつける。
小さな爆発にふっとぶ男共を目で追ったその一瞬。
「ーーー止まれ。この女がどうなってもいいのか?」
そのソフィーヌ姫の後ろにいつの間にかもう一人男の姿があった。
屋根の上にまだ一人いたのか…!
しかもこいつ、魔法使い?
黒ずくめの男からは微弱ながら魔力を感じる。
ソフィーヌ姫は何らかの捕縛魔法をかけられたのか、気を失ってしまった。
「…っわかった。首元のナイフを外しなさい。」
さっきの爆発音などで警備の騎士が駆けつけるはずだ。少し時間を稼げばーーーー
男がゆるりとした動作でこちらに手を挙げたのが見えて身構える。
私の意識は、そこで途絶えた。
 




