面倒事の予感
お待たせしております
2017/9誤字訂正
とりあえず私、エド、フィルの三人は一瞬でアイコンタクトを済ませ…
全力でしらばっくれた。
「誰のことか見当もつきませんわねぇ〜」
「残念ながら、そのような娘、見覚えがありませんね」
「ウィンスレットも銀髪ですし、ひょっとして見間違いではありませんか?」
討伐の時に明らかにフィルに運ばれているところを見られてしまっているんだけどさ。
まぁ、勢いで誤魔化したもん勝ちだよね!
「む…そう、か……」
あ、信じた。そして落ち込んだ。
「お兄様、諦めないで!ひょっとしたら城の者ではないのかもしれません。城下にいたりするかもしれませんわ!」
こっちはなんか燃えてるし。
控えてるウィンスレットさんは気付いてるんだろうなー私たちが隠してるって。
しかしながら、落ち込んだ王子と燃えてる姫という謎の空気に耐えらなくなったのか「殿下、姫様、そろそろ今夜の戦勝会の準備をした方がよろしいのでは?」とウィンスレットさんが進言したことで、その場はお開きとなった。
「あー、なんか面倒事の予感。」
エドやフィルと並んで歩きながら愚痴ると隣から大きな溜息が届く。
「本当に姉上は天然の人たらしですよね」
「エ、エド??」
私のつぶやきに答えたエドは、いつものほんわか空気ではなく、なんだか刺々しい。
あれ?なんか雰囲気違う?
「殿下、本音漏れてますよ」
フィルがぼそぼそとエドに話しかけるとあっという間にいつものエドにもどり、「とりあえず誤魔化せて良かったですね。姉上が他国に嫁ぐなんて淋しいですから」と、天使の微笑みを浮かべた。
部屋に着いたところで夜に向けた準備の為にエドとフィルとは一旦別れる。
今夜はフィルも会に参加する側なので準備に多少手間がかかるのだ。
「では、後で迎えに参ります」
そう言ってフィルはキラキラ眩しい笑顔を見せてその場を後にした。
「よし、じゃあ準備しよっか!マリア…あ、これフィルの落し物かな?」
先程までフィルがいたところにブルーの石がついたブレスレットが落ちていた。
「いま走れば追いつけるかもしれませんわね。わたくしが行って参りますので、姫様は少しお待ちください」
マリアがブレスレットをもって部屋を出て行く。
フィル、あんなブレスレットしてたかな?
あんまり記憶にないけど…
そんなことを思いながらふと窓を見やると、
「えぇ⁉︎」
目を疑う光景が視界に入ってきた。
どうしよう、誰か人を呼ぶ?
マリアが戻って来るまで待つ?
いや、見失ったらマズイよね…
すぐ追いついて連れ戻すのが一番かな⁉︎
素早くマリアへの伝言を紙に書き、
サッとバルコニーから身を踊らせる。
『風の波!』
風魔法でふわりと舞った紙には走り書きでこう書かれていた。
[ソフィーヌ姫が城を抜け出した。連れ戻してくる]
元何でも屋あらため
面倒事引き寄せ屋、ティア。




