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ティア姫(フィリス・ディオルク視点)(改訂)

初めてフィリスのフルネームでてきました。


内容的にはティアと会った日~あの夜 のフィリス視点です。

遠い日、守ると誓ったあの姫に再会できる―――

そう思って城を出たが、記された場所には姫も王妃もいず、捜索活動も難航した。


数ヶ月探し回ってやっと見つかった姫は、フィリスの記憶よりもだいぶ大人になっていた。


まぁ初めて会った時から10年はたっているから当たり前ではあるが。


アパートの一室の前で待っていたフィリスとロードの前に現れた姫…ティアは腰まである琥珀の髪を後ろでゆるくまとめ、エメラルドのような透き通った緑の瞳でこちらを見つめていた。


…かなり警戒されている。


それでもロードが話をし、聞けば、

王妃様からは自分の身分について何も聞いていないという。

それはつまり、王宮で過ごした昔のことも

覚えていないということだ。



道理で自分を見ても全く反応しないわけだ。

何だか面白くない気持ちになり一言も発しなかったが、まさか王妃様が亡くなっていたなんて…

あまりのことに本当に言葉がなくなってしまった。



だが、そうなればティアだけでも確実に連れて行かなくてはならない。



ロードに促されて姫が王族魔法石に魔力を込めた時、その姿がかつての王妃様に重なる。


言い知れぬ喜びと悲しみ、畏敬の念が、自然と俺やロードを跪かせた。




ティアは、とりあえず王宮に来てくれることにはなった。


お世話になった人に挨拶をしてきたいと言うので、

ロードがディエゴやポルナレフと合流している間、

俺は護衛として遠くから見守ることにした。


ティアが親しげに街の人と話し終わった後、

目に入ったのは立ち去る時の寂しげな顔。


いてもたってもいられなくなり、つい言ってしまった。


「王宮行きなんて、君が嫌なら断ればいい。国王陛下だってロードだって、無理矢理君を姫として連れて行こうとはしないはずだ。」



できれば、ティアには安全な場所で楽しく暮らして欲しかった。

何も、無理して王族貴族の思惑うずまくあんな場所に行くことはない。

本気でそう思った。


でも、



「申し訳ありませんけど、一度決めたことは曲げないことにしてるんです。だから、道中よろしくお願いしますね」

そう返され驚いた。


王宮にいた頃より確実に強い意思を宿した瞳に、一瞬、見惚れてしまう。


彼女が自分の意思で行くと言っている。


なら俺はただ傍で守るだけだ。

そう気持ちを新たにした。


しかし出発して馬車から街を眺める横顔はまだ寂しげで。

ずっと見ていたせいで目が合ってしまい、思わず「変な顔」とか言って顔をそらしてしまった。

この言い方はないだろ、俺。自分で言っておいて結構落ちた。


馬車の中に戻ったティアは何やらブツブツ言っていた。


+++++++++++++++++++


そして今。


何故ティアは俺とロードの部屋にいるのか。


単純に部屋が2つしか空いていなかったからなのだが。


この一旦心を開いた後の警戒心のなさは変わっていない。

そここそ変われと思うのだが…

らしさと言われれば仕方ないのかもしれない。



ロードがディエゴたちの部屋にいっている間に戻ってきたティアに何をしていたか聞かれて一瞬迷ったが正直に答える。


男が星を眺めるなんてロマンチストっぽくてどうかと言われることもなく、むしろ自分も見たいと窓に寄って空を覗き込んできた。


石鹸の香りが鼻をくすぐり、身がこわばる。


…この距離は、マズい。


窓枠に腰掛けて上半身を少しひねる体勢だった俺の頭のすぐ下にティアの顔がある。

少し動けばその桃色の形のよい唇から吐息を奪えそうなくらい近い――



無意識のうちに自分が顔を近づけ手が腰を抱こうとしていることに気づき、



何してる!!



ようやく得られつつある信頼関係をここで崩すわけにはいかない。

理性を総動員して、なんとか声を出した。


「あのさ、わざとなの?」


かなり密着していることに気づいたティアは

顔を赤くして、少しずつ離れた。

遠のく熱に、少しだけ残念な気持ちが芽生える。



それから、ティアは信じられないことを言い放った。

ベッドはロードさんとフィリスさんで使ってくださいだと…?


もうダメだ。俺達をなんだと思ってるんだ?

女性としても姫としても意識がなさ過ぎる。

あんまりな発言に怒りすら沸いてきた。


詰め寄ってベッドに押し倒す。


顔の横に腕を置いて逃げられないようにすると、

ティアは耳まで真っ赤になりあわあわ言っている。


その姿が可愛くて、いっそこのまま口付けてしまおうか、とも思ったが、

我慢しておく。


腕の中で縮こまるティアを見て、改めて思う。

あぁ…俺が守りたい姫は、なんて小さな体なんだろう。

いくら魔法使いとして優れていようとも、

その身はこんなにも華奢なのだ。


心の中ではそんなことを考えつつ、

もっと俺達に、というか異性に対して警戒心を持て、と説教すると、

爆弾発言(ただし俺にとってだが)を投下した。



フィリスさん達だから信用している、と。



…ずるいな、

まっすぐに目を見てそんなこと言われたら、

もう何も言えない。


意識せずににこちらが喜ぶことをしてくれるのも昔から変わっていない。

ただ…



「逆にそんなに信用されてもな…」

男としても人としても。


そんなつぶやきは夜の闇に消える。


俺は無意識に忌まわしき力を持つ右腕を掴んだ。



暫くして、寝息が聞こえてきた。


まさか、

「嘘だろ…?」


ティアは押し倒されたポーズのまま、

爆睡していた。



なんて神経してるんだ………



抱きかかえてきちんとベッドに入れて、

布団をかぶせる。


その際図らずも寝顔を見ると幸せそうで、なんだかバカバカしくなってきた。


こうも能天気で無神経で愛しい存在に振り回される未来を予感して。


フィリスは額に優しくキスを落とした。


今日も長文を読んでいただき、ありがとうございます。


本当は初めての出会いやフィリスの力についても書きたかったのですが

長くなりすぎたので断念。

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