MPを増やしたい
「すごいよ大根ちゃんっ!身体が震えて目が回って、足が思うように動かない!!さっき私が受けた時はまだ何とか動けそうな気配があったのに、今のはノーチャンスだったよ!」
バタちゃんは状態異常が切れると、一目散に私に駆け寄ってきた。まだふらついている人もいるのに、元気な人だなあ。
「結果は五十人でも全く問題なし!それ以上は分からないけど、声が聞こえる範囲だったら人数の制限とかはないんじゃない?AWOだし!」
AWOだしって言葉で納得できちゃうのがすごいところだよね。
「あとは……そうだなー。土にでも埋まってみる?」
ん?
たしかにそれがマンドレイクのあるべき姿だけど、土に埋まったところで動けないマンドレイクになるだけだよ?
「不思議そうな顔だね?水性系の種族は水の中でわずかにHPが回復するし、火性系……?火の中にいる種族は、火を浴びると身体能力が上がったりするんだよ」
なるほど。種族によってそういった特性があるのなら、私は土に埋まることで何かしらのメリットがあるかもしれないのか。ならやってみる価値はあるね。
『どうやって掘るの?』
「え、どうしよう……スコップ持ってくる?」
道具もなしに土を掘るのは大変じゃない?ましてや人が埋まるくらいなんてそうそう。イメージと違うけど、横になって埋まればその分掘るのも楽になっていいんじゃないかな。
「あの、すいません……。自分、罠魔法で落とし穴作れるんですけど、作ります?」
足元で倒れていた眼鏡の人が、ふらふらしながら声をかけてきた。【魔根の悲鳴】を一番近くで受けていたからか、まだ少し足元がおぼつかないみたい。
「そうじゃん、君がいたんだった。この子の【罠魔法】は、深さ3メートル以内だったら自由に落とし穴を作れるんだよ!」
【罠魔法】ね。私が好きそうな魔法じゃないの。
「アース・ピット」
彼がそう呟くと、瞬く間に落とし穴が作られた。ちょうど私くらいの大きさに空いている。今のを戦闘中にやられたらたまったもんじゃないね。
「じゃあ、入ってみる?」
コクリ。
とりあえず穴の中に入ってみる。かなりピッタリなサイズだけど、狭くて暗い場所はなんだか落ち着くな。あ、上から土を被せて欲しい。
『埋めて』
「はいはーい、ちょっと待ってねー!HPが回復するかも見たいから、少し傷つけといて」
言われた通りナイフを取り出して、指を少しだけ傷つける。毒になっちゃったけど仕方がない。
「じゃあ埋めるよー。アース・クリエイト」
バタちゃんが魔法を使うと、私と穴の隙間にどんどん土が流れ込んでくる。身体の周りが土で埋まり、視界も塞がっていく。バタちゃん以外にもアース・クリエイトを使っている人がいるから、あっという間に土の中へ。
…………。
うーん、埋まったはいいものの特になんともない。HPとMPは回復していないし、毒も消えてない。強いて言うなら、なんだか落ち着くってぐらい。土の中で何かが起きるわけでもないし、一旦出よっか。
身体を揺らして地上に上がる。土の中がなんとなく心地いいことを伝えると、なぜかバタちゃんはニヤついていた。
「地上であることが起きてたんだけど、何か分かる?」
土の中にいる私じゃなくて、土の外?葉っぱが何かしたの?
「大根ちゃんが埋まったと思ったら、急に認識しづらくなったんだよ。多分隠密か何かだと思うけど、ここに大根ちゃんが埋まっているって知らなかったら気づかないと思う」
そんな効果があったんだ……。
結構使えそうだけど穴を掘る必要があるし、めんどくさいな。今後取る余裕ができたら【罠魔法】取っちゃおうか。
「やっぱりマンドレイクは面白い種族だよ」
それはそう。
「今検証したいのはこれくらいかな。またしばらくしたら検証したいことが出てくると思うけど、その時はまた協力してくれる?」
もちろん。私自身に対する理解度を上げるのにも役立つからね。
「ありがとう!じゃあ報酬なんだけど、どういうのがいい?大根ちゃんが欲しそうな情報でもいいし、物でもお金でもいいよ。言ってくれればできる限りのことはしてあげる!」
報酬ね……改めてそう言われると困るなー。情報って言われても何を聞くべきなのか分からないし、武器もいい感じに揃ってる。お金は……なんとも言えないけど、何か特別なものが欲しいよね。
あ、MPに関係する装備が欲しいな。魔法をもっと使いたいし、MP上限を増やしたり回復してくれるものがいい。
『私、MPをたくさん使うから、上限を増やしたり回復を早める装備が欲しい』
「確かにそれがいいかもね。回復はマナポーションでできるから、最大値を増やしてくれるアイテムにしよっか」
そう言うと、バタちゃんはインベントリから耳飾りのようなものを取りだした。
「鑑定してみて」
『蓄魔のイヤーカフ』
耐久値:624/800
機械皇マギナによって作製されたアクセサリー。MPの余剰分を貯蓄することができる。装備すると自身のMPの一割分を余剰魔力として貯蓄し、MND+10。
「MP上限を増やす装備ってあまり見つかってないんだけど、これはかなりいいと思うよ。今はそこまでMPは増えないと思うけど、長い目で見たらかなり使える装備だと思う。ちなみに骨董品屋に売ってたんだよ?」
機械皇マギナが気になりすぎるけど、たしかにすごい装備だ。レベルが上がってMPが増えるほど、魔力を貯められる量も増えていく。
「他には何が欲しい?」
他?まだ何かもらえるの?
「何?もしかしてこれで終わりだと思った?」
うん。だって今のイヤーカフだけでも、すごくいい報酬だったよ?
そんなことを思っていると、バタちゃんはニンマリとした笑みを見せる。
「大根ちゃんが思ってるよりも、情報っていうのは価値があるんだよー。まあ、今ので七割くらいの価値があるから、あまり大きな報酬は出せないけど」
物はもういいし、情報かな。
北のエリアボスがいる場所を聞くのは……いいや。レベリングにいい場所とか知らないかな。
『レベリングに向いてる場所を教えて』
「いいラインついてくるねー!大根ちゃんはどういう戦い方をするの?」
『魔法、状態異常、鈍器』
「幅広いねー。じゃあこことかどう?」
バタちゃんは地図を取りだし、北東方向にある湖を指さした。ファストリアから10キロメートルくらい離れている。
「鈍器も魔法も使えるなら、ここがオススメかな。この地図もあげるから行ってみてね」
バタちゃんから地図を受け取り、インベントリにしまう。検証に付き合っただけなのに、思わぬ成果を得てしまった。
さっそく行ってみますか。
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