一話【目覚め】
人生始めてのラノベです!nolaと併用してますよー!
全然できてないところ、場合によってはこれを読んでくれている人に不快な思いをさせるかもしれません。しかし、僕のこの作品に対する気持ちは本物です!
よろしければ、応援と指摘、感想もお願いします!
伏線にご注目!
豪雨が執拗に彼の身体を突き刺す。痛い、寒い、熱い、怖い。ずっとそう思っていることだろう。時刻は午後8時を回っているのか、周りは暗い。そして現在は3月、まだ冬に等しい季節なのだから、尚のこと雨水は凍てついている。それでも右手に握るペンダントを離す気は、さらさら無いようだ。なぜ彼が、いや少年がこのような状況になったのだろう。もちろん、少し前までは幸せに暮らしていた。
そう———“少し前“までは。
2011年3月10日午前7時。
ぼんやり目を覚ますと、いつもと変わらない天井が見えた。暖かい色の木が、自然に部屋の雰囲気を和ませている。そして、もう一度瞼を閉じようとした。すると、ドタドタと階段を駆け上がる音が響いた。
「優く――――ん!!!朝ごは――――ん!!!」
小鳥たちの控えめにさえずりは何処へやら、過剰な元気の良さでその名を呼んだ少女が、扉を勢い良く開けた。
「ん...あと五分...」
寝ぼけながらもう一度布団に潜ろうとする。しかしそれを少女———明莉は認めなかった。
「だーめ!おじいちゃんが朝ご飯作ってるんだからー!!」
明莉が無理やり布団を引きはがす。身じろぎも許されず、笑顔のまま襟首を掴んで引きずる。
「うぅ...明莉ちゃん、痛い...」
「んもぅ!男の子なのに女の子負けるなんて!優くんは非力なんだから!」
一階に引っ張り出されると、一瞬で味噌汁の匂いが漂ってきた。
「おぉ、起きたかい。寝すぎは体に良くないぞ!!と、言いつつ。じいちゃんもさっき起きたんじゃがな‼がはは‼」
呑気で豪快で、これ以上ないほど安心する声が響く。そしてその少年———優太は眠い目を擦りながら、ガタイのよろしい老人に言った。
「じいちゃーん!明莉ちゃんが意地悪するよー!」
地味に眠気が残った声で、必死に言葉を発するが、呂律が回ってないため迫力は皆無。すると、その老人———雄太郎が優しく言った。
「そう言ってやらないでおくれ。明莉は優太の為に起こしてくれたんじゃぞ?まずはありがとうを言いなさいな。」
優太の頭に手を置く。その手は、えらく大きくてどこまでも暖かかった。続いて明莉に向かって。
「明莉も、『男なのに女に負ける』は良くないんじゃぞ?それに、優太は強い心を持っておる。決して弱くないということを、覚えておきなさい。」
二人そろって、朝から涙目。怒られたとかそういうのではなく、単純に響いてしまったからだ。その朝食は少し塩辛く、かなり甘かった。———間違えて砂糖入れてる。
食事を終え、歯磨きをして、白色の服を着る。朝のルーティーンを通して、早速外に出る。
「外が暗くなってきたら帰ってくるんじゃぞー!!」
豪快に笑いながら、優太と明莉を見送った。晴天が広大に広がる青空の下、自然に手を繋ぎながら歩く。
「優くん優くん!!今日なにするー!?」
繋いでいる手をぶんぶん振りながら元気よく問う。その笑顔は、空の上に佇む太陽と等しいほど爛々と輝いていた。
「んー、じいちゃんにペンダントとかあげたい!」
手を握り返しながらそんな事を言った。すると、明莉が小首をかしげて尋ねる。
「なんでペンダントをあげたいのー?クッキーとかで良くない?」
当たり前の質問であった。義祖父に送るプレゼントといえば、お菓子や手紙が相場だろう。
「ペンダントって、実は『ずっと一緒にいたい』って意味があるらしいんだよ。だから、いつまでもじいちゃんと一緒に居てねーって言ったら、喜ぶと思うの!」
一拍の間、そして声が森に大きく響くほど爆発した。
「すご――い!!とってもお洒落!!おじいちゃん絶対喜ぶ!!早く買いに行こっ!!」
明莉が優太の手を引いて走り出す。その手は、やけに温かかった。二人が走って到着した場所は———『火元村』と呼ばれる、数ある村の中でも一段と人々が平和で穏やかに暮らす集落だった。
その村での唯一の宝石店、『火元宝石店』に着いた。店自体は古びていて、完全な木製。一見すると、かなり不気味な雰囲気と言える。しかし、優太と明莉はむしろ鼻歌を歌いながら入っていった。なぜなら、その店員とは仲が良いから。
「...あ、珍しい客人だね。いらっしゃい。優太、明莉。」
気だるげで陰湿っぽい声が静かに響く。店内には百色以上にも及ぶ宝石が並べられていて、その受付カウンターに肘をつけながら二人を見据える女性が一人居た。
「久しぶり、木葉お姉ちゃん!!お店始めてたんだ!!」
店の前に来た時から、その女性———水橋 木葉の醸し出す陰湿で気だるい雰囲気を感じ取っていらから、あの店構えなのに鼻歌を歌えたのだ。
「今日、実はペンダントが欲しくて来たんだー!じいちゃんにあげるの!」
意外そうに眼を開いた。この年齢で「ペンダントをプレゼントする」ということがそんなに珍しいのだろうか。
「...へー、アンタらが日咲さんにペンダントねぇ...んまぁいいや。いい感じの石選んどいてー」
少々投げやりだが、二人は気にしてない様子だ。ここにある石は、通常鉱石~微量な魔力を含んだ魔石まで様々な種類がある。だからこそ、優太と明莉の直観性が求められる。
「んー...これ、いや違うなー...あれ?これ良さそう!」
優太が選んだ宝石は、透明なクリスタルの内側にひっそりと金色が滲んでいる。落ち着きながらも華麗な雰囲気を思わせるような石だった。明莉も大賛成の様子。
「...ん。はいよー。運命的な出会いじゃーん」
(心の中)「あれ、こんな石あったっけ。ま、いっか。この子が選んだんだから、きっと。」
手際よく作業を進めてゆく。出来上がったペンダントは、間違いなく「綺麗と」言えた。
「わ――!!凄く綺麗!!おじいちゃん絶対喜ぶよ!!」
木葉に別れの言葉を言った瞬間に、全速力で家に帰る。もうすぐ日も落ちかけていたし、丁度良いだろう。
「おぉ!!帰ってきたかい!!...ん?何持っとるんじゃ?」
二人の口元がだらしなくたるんでいる事から、一瞬で見抜かれた。
『せーの...はい!プレゼント!!』
同時にクッキーが入った紙袋とペンダントを渡した。それを見た雄太郎は明らかに嬉しそうな表情を爆発させた。
「おぉぉ!!わしの為に二人が買ってくれたんかい!?じいちゃん嬉しいぞー!!」
二人の頭をわしゃわしゃと撫でた。その顔は、いつもよりも数段幸せそうだった。
———いつも通り三人で風呂に入り、晩御飯を食べ、各自部屋で就寝する。これが、優太にとってこれ以上ない幸せなんだ。明日も、明後日もこんな幸せが続く。そんな事を考え、幸せを噛みしめながら眠りに———。
2011年3月10日午後7時。
———ドゴォォォォォォォン!!!
爆音が世界を震わせた。体が弾かれたように起き上がる。窓の外は橙色の色に染まっていて何も見えない。パニックが肉体を支配してベットの上から動けない。炎が昇る音、人々の悲鳴、建物が崩れ落ちる衝撃。無意識に耳を塞ぐ。思考がまとまらない。やだ、怖い、誰か———。
「優くん!!早く立って!!」
目を開けると、涙を浮かべた明莉が必死に優太の肩を揺さぶっている。
「ぇ...あかりちゃ...」
言い終わる前に優太の腕を引いて無理矢理一階に運んだ。すると、一瞬で体が浮遊した。
「二人とも、今すぐ逃げるぞ。」
雄太郎が二人諸共担いだ。その横顔は、あの優しい義祖父ではなかった。
———外に出ると、それはまさに地獄絵図だった。あの自然溢れた木々、活気づいた人々、ひっそり佇む建築物。それは、全て変わっていた。
火の海、血塗れの死体、崩れ落ちた残骸。そして目に映ったのは、複数の黒い影だった。
「....平和な時代の潮時じゃろうか」
二人を降ろす。そして、ペンダントを握った。ほんの一瞬赤色に光った後戻った。それを優太に渡す。
「...二人とも、今すぐ走って逃げるんじゃ。前を向いて、振り返らず。」
有無を言わさない圧、覚悟を決めた顔。それが尚のこと優太に不安を募らせた。
「や...やだ...!じいちゃ———」
言い終わる前に、明莉に手を引かれた。抵抗しようとした、もう二度と会えない気がしたから。でも、明莉も泣いていた。だから手を振りほどけなかった。
「...優太、明莉。生き残って、大切な物を守れる人間になりなさい。」
その言葉と共に、二人が森の中へ消えた。
「...老いたな、龍炎の英雄。我々の要件は1つ、石を渡せ。」
すでに影は禍々しい剣が握られている。
「...若造が。わしに喧嘩売ろうとは、相当な阿保と見た。」
すでに取り返しがつかないほど激しい殺意が衝突する。一方そのころ。
「明莉ちゃん!やっぱりじいちゃんの所に戻らなきゃ!!」
「おじいちゃんが逃げろって言ったんだよ...!きっと...大丈夫だから———」
———ドゴォォォォォォォン!!!
二度目の爆音。同時に二人の背中を衝撃波が襲い、吹き飛ばされた。意識が朦朧としても、足を止められなかった。しかし、そこで二人が止まった。視界に広がるのは、断崖絶壁の崖だった。さらに足音が不吉にも後ろから聞こえる。きっとアイツらだ。じいちゃんは?なんでアイツらが?そんな事を考える刹那———唇が柔らかい物に塞がれた。明莉が優太に唇を重ねたのだ。
「...優太は生きて。そして、いつかあかりの事、迎えに来てね。...大好き。」
ドンっという音と共に、身体が下に向かった。下には川が流れていた。視界いっぱいに広がる明莉の最後の顔は、ボロボロと涙を流しながらも微笑んでいた。そして———川に落ちた。
2011年3月10日午後8時。
———どれくらい時間が経っただろうか。あの高さから奇跡的に生存していた。文字通り、死に物狂いで陸に這い上がった。先ほどから、妙に胸部が熱い。こんな季節でここまで凍てついた雨水が身体を突き刺しているというのに。下を見ると、先ほどの爆風に巻き込まれたのか落下中にぶつかったのか。大きな岩が心臓部に突き刺さっていた。気が付いた瞬間に崩れ落ちた。痛い、熱い、雨のせいで寒い、夜だから暗い。痛い、痛い、寒い暗い怖い痛———。
2011年3月10日午後8時10分。———日咲 優太の命という灯火が冷たい雨と耐え難い絶望によって消え去った。...刹那。ペンダントが一瞬激しく金色に輝き、その光が優太を包み込む。そして、彼が世界から消えた。
———???「...誰だ。我の神域に足を踏み入れし汚物が...」
その傲慢さと冷酷さが滲んだ声を最後に。
一話【目覚め】終わり。




