表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/129

3階での戦闘

 翌日、昼食からの散歩というノルマをこなし、ダンジョンの3階を目指す。

 1階、2階共に入口からほど近い所に下への階段があるので、3階に降りるのには入口から5分も掛かっていない。


「ここが3階か……」


 3階からがダンジョンの本番と言われる。その1つ目の理由は造りだ。

 1階、2階は、鉱山を思わせる土壁で、どこでもつるはしで掘れそうな造りだった。

 しかし、3階への階段を降りると石造りの迷宮へと姿を変える。青白い光を放つ不思議な苔が所々に生えていて、それなりの明るさがあり、壁はおろか床も石が敷き詰められている。

 ややヒンヤリとして少し湿っぽい空気は、地下水が流れ込んでいるのだろうか。


「いよいよって感じだな」


 俺はブーツの紐を確認し、ベルト、ナタ、手袋に胸当てと、装備品を一通り確認する。ここからは常に臨戦態勢で。

 カガミが3階をきっかけにパーティを解散したのには、3階から難易度が大きく変わるという理由もあった。

 強さを増した魔物だけでなく、様々な罠も追加されていく。魔術師である帝魔生徒にとって、不意をついてくる罠は、対処を間違うとかなり痛い目に遭う。細心の注意が必要だった。


 俺は木の板に貼り付けた方眼紙を取り出し、左手に持つとマッピングを開始。

 石造りで方形なダンジョンは、マップを描くのは楽に感じる。先を尖らせた木炭で、コシコシと線を引きながら奥へと歩き始めた。



 3階に出てくる魔物は、リザードマンにオオトカゲだ。リザードマンは立ち上がったトカゲで鱗に覆われた身体に、意外と器用な手で槍を振るってくる。

 オオトカゲは外見こそイグアナに近いが獰猛な肉食で、自分より大きな家畜を食い荒らす。ワニほど大きな口は持っていないが、鋭い牙に強い顎の力は人の骨でも容易に噛み砕く。


「魔力で強化されてなければ、相手にしたくない魔物だよな」


 全身の鱗は革鎧よりも硬く、魔力を持たない人間では傷つける事すら難しい。



氷縛陣アイスバインド


 魔法陣を消費して魔法を唱える。リザードマンとオオトカゲ1匹ずつのコンビを纏めて、氷によって足止めにした。

 爬虫類などの変温動物は、冷やすと動けなくなると思われがちだが、実際はそこまで動けなくなるわけではない。

 筋肉が動くと熱を発するため、戦闘態勢に入っていると特に動けなくなる事はなかった。

 ただそれでも手足が氷で物理的に止められると、かじかんで鈍くはなる。


「てりゃっ」


 そこへナタで斬りかかる。まずは直立するリザードマンへ。相手も槍を掲げて受け止めにくるが、1mちょいの短槍で、柄の部分は木。ナタを受け止めるには、少しやわかったようだ。3度ほどナタを叩きつけた所で2つに斬れ、そのままナタの刃がリザードマンへと届く。


「ギシャア!」


 血が吹き出しながらも、一撃では倒れず、2つになった槍を両手で振り回しはじめる。俺はととっと距離を取ると、魔法を唱えた。


「血の巡りを阻害せし闇の力よ。彼の者のうちに潜みて牙となせ。ヴァイパー毒牙バイト


 出血を遡り血液へと毒を流し込む。即死はしないが、徐々に体力を奪っていくだろう。

 その間に、氷による拘束を脱したオオトカゲが迫ってきていた。全長2mはあるトカゲが、威嚇するように口を開けて迫ってくるのは、なかなかに迫力がある。


「大気に隠れし氷の精よ、塊となりて敵を穿て。アイス弾丸バレット


 その開いた口目掛けて氷の塊を撃ち込む。んがんんっと口を閉じて少し仰け反るオオトカゲ。しかし、俺の魔力じゃそこまでの威力もない。すぐにこちらへと突進してくる。動くと冷気による多少の強ばりも解けたのか、一気に加速。そのまま頭突きをされそうになった。

 革のバックラーで直撃は避けるが、俺の身体は大きく押される。2歩、3歩と下がりながらバランスを立て直し、転倒は免れるが、すぐにオオトカゲが迫ってくる。


「くそっ、氷槍アイシクルランス


 迫りくるオオトカゲにとっておきの中級魔法を使ってしまう。これで終わらなければ、魔力が枯渇した状況で戦わなければならない。そうなると、魔力による身体強化も弱まってくるのでジリ貧だ。

 しかし、そこまでの事態に陥る事無く、氷槍に貫かれたオオトカゲはそこで動きを止めて、黒い霧となって消えてくれた。



「まずいなぁ……初戦でいきなり魔力が尽きるか」


 リザードマンは毒が回ってそのまま倒れたらしい。オオトカゲを倒してそちらを見ると、魔石が転がっていた。


「しかも魔石はまだ微サイズとか……」


 階段近くの敵という事で、まだ魔素をそれほど蓄えてなかったらしい。個体として強いので、1階の敵に比べると一回り大きいが、まだまだクズ石の領域を出る大きさではない。

 魔力が尽きても、数分ほど安静にしていたら魔力は回復していく。しかし、1戦ごとに休憩を挟んでいては稼ぐというには程遠い。


「蓄えがあるうちに効率的な戦い方を見つけなきゃな」


 階段側の安全地帯で休憩を取り、魔力を回復させてから探索を継続する。




「戦闘しないなら楽なんだがなぁ」


 補助魔法にあった気配を消したり、姿を隠す魔法を駆使すれば、リザードマン達の知覚をすり抜けて進むことは可能だった。しかし、それではこの先で戦闘していく事は叶わない。知識も増えない。そして何より稼げない。

 まだ多少の蓄えはあるが、借金を背負う身でもあるので、稼げないと未来はない。

 金貨1枚ではなく、ミノタウロスの肉を入手するにも戦闘力は必要だ。


「その為に必要なのは魔力かぁ……お?」


 学生証代わりの名札を見ると、魔力が5から6に上がっていた。3階で戦闘してきた事が、成長に繋がったか。

 これをわずか1の上昇と見るか、2割の成長と見るか……ここは前向きにやれる事が増えると見るべきだろう。

 魔法陣のおかげで人よりも効率的に魔力を使えるので、2割の成長はそれなりのボトムアップになるはずだ。


 その日の稼ぎは銅貨で10枚と散々だったが、立ち止まる事無く進むしか無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ