2人での稼ぎ
それからカガミが奪われた魔石を回収しつつ、俺も適度に掘って魔石を集める。
カガミの匂いを追えるのか、カマイタチは精力的に働き、一回り大きくなっている魔物を見つけていた。
元々が誰も来ない1階の奥、掘り出す魔石も小サイズ。魔物を狩って得られる魔石も小サイズ。
カガミが奪われた魔石は、小から中の間くらいで、ランクは上がらなくても普通のよりは高値で売れそうだった。
そして驚くべきはカマイタチだ。カガミのイメージが具体化した存在は、継続する魔法そのもの。呪文を必要としない魔法として、衰える事無く敵を倒していく。
カガミ自身は魔法を唱える事は無く、攻撃を指示しているだけだが、その際に発する発動ワードの時に、魔法を使うような疲労感はあるらしい。
その時に、カマイタチへとカガミの魔力が流れ込んでいるみたいだ。
しかし、ただの魔法でないのはその探知能力だ。魔力探査にはまだ引っ掛からない1階の魔物を、しっかりと見つける事ができる。
カガミの魔石を持っていない個体も、俺達より気づいて教えてくれていた。
精霊と言うよりも動物に近いイメージをカガミが抱いたことで生まれた副次効果は、狩りをする上でかなり効率を上げてくれた。
そして俺の採掘も捗った。カガミとカマイタチが目を配る中、俺がつるはしを振るって魔石を集める。自分で警戒すること無く、掘ることに専念できるので、一箇所での作業時間が短く済んだ。
そうやってポイントを変えながら、カガミが敵を倒し、その間に俺が掘る。1階の地図もどんどんと埋まっていった。
途中で食堂で貰ったパンやスープを火の魔法で温め直して、ダンジョンの中としては優雅な食事。
「ありがとうございます」
スープとパンをカガミに渡す。食事は必要としないカマイタチには、引き続き警戒を続けて貰っている。
「ふふっ、こんな余裕のある食事は久しぶりです」
魔石を入れる皮袋を椅子にして、野菜スープを美味しそうに飲んでいる。
「庶民用の格安ランチだけどね」
「でもとっても美味しいです」
そこには、昨日までの張り詰めた感じが薄れている。
「私の家は没落寸前の貴族なんです。兄も弟も魔力が無くて、かろうじて私が魔力を持っていたので、私が爵位を継ぐことになりそうなんです」
少し気が緩んだのか、それとも誰かに聞いて貰わないと潰れそうなのか、カガミが身の上を話し始めた。
D級ギリギリの魔力とはいえ、兄弟4人の中で唯一の魔力持ち。両親もD級から辛うじてC級に上がって帝魔を卒業したらしい。
父親の準男爵領は帝国の北側、山の麓にあって森林が多く、魔獣の出現も多い。領主として求められるのは、戦闘力だった。
魔力を持たない2人の兄も、弓の腕を磨いて狩りや魔獣への警戒を行っている。
ただ魔力を持たない彼らでは、魔獣を倒すことはおろか、追い払うのも難しい。父や母が現場に来るまで監視するのが主な任務だ。
「私も10歳ごろから母親に付いて、魔獣狩りに同行していました」
「そんなに早く……」
「役に立ってたとは言えませんけどね」
それでも魔力を持つ彼女は、家の将来を背負って帝魔へと送り出された。そこで良い成績を修めて、魔力を少しでも上げて、良い婿を取る。
しかし、D級のクラスメイトも似たような境遇の者が半数を占めていた。貴族の地位を守るために、少しでも上に行かなければならない。ギスギスした雰囲気は否めなかった。
人よりも上に行きたい気持ちが、協力よりも個人プレイに走らせて無理をしてしまう。
「協力したらこんなに楽なのになぁ」
「レントさんは自分を持っていると言うか、自信があるんだと思う。魔力は低いかもしれないけど、それを補う方法を知ってるみたい」
「人と同じことをやってたら、勝てないのは分かってるからね。人のやらない方法を試していってるだけさ」
女の子から少し褒められただけで、妙に照れくさく感じてしまい、昼食を片付けて午後の仕事へと取り掛かった。
その日の稼ぎは2人で銀貨5枚と過去最高をマーク。このペースでいけば、カガミの治療費もすぐに返せそうだった。




