第24話 貧乏令嬢と軍神伯爵
「ふふっ、ブラッドリー様の寝顔、可愛い……」
目を覚ましたグローリアは、隣で眠るブラッドリーの頬を軽くつついてみた。
ううん……と少し身をよじるだけで、なかなか起きない。安心して眠っているのだろうか。それとも、朝は弱いタイプなのだろうか。
ブラッドリーについて、まだ分からないことはたくさんある。だから、これから知っていけるのだと思うと嬉しい。
(ちゃんと初夜を迎えられなかったのは残念だけど、これからだもの)
代わりに、昨日は一晩中抱き締めて眠ってくれた。
誰かに抱かれながら眠るのなんて幼少期以来で、すごく幸せだった。
「……二度寝、しちゃおうかしら」
ブラッドリーを残してベッドを去るのは寂しい。眠っている彼に頭をすり寄せ、グローリアは甘えるように再び眠りについたのだった。
◆
「グローリア、さすがに起きないか?」
次に目を覚ました時、外はすっかり明るくなっていた。壁の時計を慌てて確認すると、既に正午を過ぎている。
「わっ、眠り過ぎましたわっ!」
「ああ。本当に、よく眠っていたな」
くすりとブラッドリーが笑う。そして、グローリアの髪に手を伸ばした。
「寝癖がついている。いつも、俺に会う前になおしてくれていたんだな」
「少しでも可愛いと思われたいんですもの」
「……寝癖がついていても、可愛いと思うぞ」
目を逸らしながら、ブラッドリーはちゃんと言葉にしてくれた。
(きっと、女性を褒めるのは得意じゃないのに、頑張ってくれているのよね)
グローリアのために。
その事実だけで、朝からパンを何個でも食べられる気がした。
◆
「見てください、ブラッドリー様! 実が! 実がなっていますわよっ!」
昼食を終えた二人が中庭へ出ると、家庭菜園のトマトに実ができていた。
まだ青く、収穫時期は先だが、実ができたことがとにかく嬉しい。
「わたくし達の愛の結晶ですわ……!」
「……まだ食べるには早いのか?」
「さすがに、まだ早いですわ。赤くなってからが食べごろですの」
並んでしゃがみ込み、青い実を見つめる。
「前に、ハワード達のところへも野菜ができたら持っていきたい、と言っていたな」
「覚えてくれていたんですのね!」
「ああ。持っていくのもいいが、うちに呼ぶのはどうだ? これを使った料理を披露するというのは」
「まあ……!」
ブラッドリーがグローリアの発言を覚えてくれていたことも、新しい提案をしてくれたことも嬉しい。
きらきらと目を輝かせたグローリアを見つめ、ブラッドリーは優しく微笑んだ。
「大賛成! ですわ!」
「よかった。ハワードに伝えておく」
「ありがとうございます、ブラッドリー様!」
勢いに任せて、ブラッドリーに抱き着いてみる。しっかりと受け止めて、ブラッドリーはグローリアの腰に腕を回した。
「これからは俺も、グローリアを幸せにできるよう頑張りたいと思っている。だから、その……今後も妻として、俺の傍にいてくれたら嬉しい」
「ブラッドリー様……!」
「愛している」
幸せすぎて、頭の中が一瞬、真っ白になった。
愛している人に、同じ気持ちを返されることがこんなに幸せだなんて、知らなかった。
「ブラッドリー様……」
どんな言葉を返すべきか分からなくなってしまう。だから、言葉の代わりに、口づけを返すことにした。
「わたくしも! 世界で一番、ブラッドリー様を愛していますわ!」
真っ赤になったブラッドリーが、グローリアの頭を優しく撫でてくれた。
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