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9話目 嵐

ガンダとラルの叫びがこだまする。


「確かにそうだ!ありゃあ、あいつと同じ変な面のビラだった!」


「そうですわ!あの『笑撃団』という名前のインパクトに引っ張られていて、全く気づきませんでしたわ!!!」


メリアが困ったように笑う。


「あのねぇ...まぁいいわ。それより、どんな感じだった?魔力は?武器は?どんなしゃべり方?どんな雰囲気だった?詳しく聞かせなさいよ!」


先程までの妖艶な雰囲気は一切なく、そこには未知への探求心だけが残っていた。


「うーん。なんつうか『タコ』みてぇな歩き方だったな、腰に刀も差してた。それと腹に穴が開いてた。」


「そうですわねぇ、紳士的な口調でしたわ!金払いも良くて!それと、腹に穴が開いていましたの。」


ガンダとラルは口をそろえて言った。

メリアはぽかんと口を開けている。


「え、ええと?腹の部分に空洞があるということ?何らかのオートマタてきな…」


「いや、人間だったぞ。血も見えたし、思い出したくねぇが内臓らしきのも見えたぜ。」


メリアがさらに困惑する。ここまで魔法を探求してきた者でも全く理解できないものがあるのだと思い知っている。


梁の上でメリアの困惑する表情を見て朧は思わず口を緩ませた。


(そうだ。我が君は貴様らごときが想像できるほど安くはないのだ。ゴミムシめ)


その時、ドアが開け放たれた。三人はその話に夢中でその存在に気づいていなかった。


(朧...どこに偵察に行ったんだろ、まぁいいか。ヤンデレだし、俺の不利になるようなことはしないだろ。)


そう考えながら歩を進めるのは昼間の黒装束の男だった。三人のテーブル以外の人間が動きを止め、言葉を失う。そしてその男は昼間と変わらず、受付のカウンターの前に立った。


そこには昼と変わらず受付嬢エルダがいた。この日ほどシフトをロングで入れたことを後悔した日はない。


「こ、こちらは冒険者ギルドです。何かご入用ですか?」


冷や汗をかきつつ、眉毛をピクつかせている。


「クエスト...いや、依頼を受けに来た。オークの討伐はあるかな?」

(このクエスト、初期から受けられるけどもらえるアクセサリーが万能なんだよな。自傷ダメージ10%減!景清にピッタリ!だけど、言い換えたら、他のキャラに自傷ダメージが入るキャラなんていないからほぼほぼゴミ扱いだけど!)


「お、オークですね!はい!こちらです!」


そそくさと依頼書を取り出し、差し出す。


「あ、えーっと...お名前の方は...?」


「景清。」


「は、はい。かしこまりました。少々お待ちください」


そういってエルダは奥へと入っていった。

景清が待つ間ふと何気なく天井の梁に目が行く。


「...朧?」


視線の先にはついさっき別れたばかりの朧がいた。その眼には驚愕の色が浮かんでいる。驚愕したいのはこちらなのだが。


「...久しいな。」

(ほんと!さっきぶりだしな!なにしてんだ?こんなとこで)


その思いが通じたかは分からないが、朧はぎこちないジェスチャーで三人のいるテーブルを示す。


(なんだ?なにかいるのか?)


そこに目をやると対戦で死ぬほど戦ってきたキャラが三人集まっていた。

ガンダ、ラル、メリア。ランクマッチで使用率の高いキャラ達。


(ガンダとラルは初期リスがここだからまだわかる。だけどメリア?あいつここから結構離れた魔術塔が初期リスだろ?なんでこんなとこに...)


盛り上がっていた三人が視線を感じて振り返ると、そこには話題の人物である景清本人がこちらを見ていた。


「あ...」

それは景清ではなく、一明としての一言だった。


「「「いたーーーーーー!!!!!」」」


三人と一人の運命が交差した。してしまった。




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