独白(その8)
私の女友達に、産婦人科の看護師がいるの。
ある日、彼女がこんな愚痴をこぼした。
「うちの病院の男の医者、やたら体を触ってくるのよ」
そして呆れたようにこう言ったの。
「毎日あれだけ女性の秘部を見てるのに、まだ看護師の体を触りたくなるなんて、ド変態よね」
私、その話を聞いて、ちょっと不思議に思ったの。
だって、異性の生殖器って、セックスという行為のラスボスみたいなものでしょう?
中にはそうじゃない人もいるのだろうけど。
それを毎日見ていると、人の性欲ってどうなるのかしら。
想像だけど、きっと「診察対象の臓器」として見ているはずよね。
だって、患者さんは何らかの体の問題を抱えているわけだから、医者はそれを治療しなきゃいけない。
いちいち欲情なんかしていたら、治療どころじゃないわ。
たぶん、人間の脳って便利にできているのよね。
仕事の時は仕事。
性欲は性欲。
ちゃんと切り分けられるようになっている。
でもね。
だったら、どうして看護師の体には触りたくなるのかしら。
同じ女性の体でしょう?
しかも仕事中よ。
まあ、私は男じゃないからね。
男の心理なんて分かるわけないわよね。
で、また考えたの。
もし私が男の秘部を毎日見る生活を送っていたら、って。
でもすぐ止めた。
だって、そんな生活したことないから、分かるわけないわ。
例えば、風光明媚な観光地に住んでいる人は、その地を訪れる旅行者ほど景色に感動していないんじゃない?
だって同じ景色を毎日見ているわけでしょう?
でもきっと、初めて見る別の美しい景色には感動するんじゃないかな。
つまり慣れの問題なのかしら。
いや、景色と性欲を同じにするのは無理があるわね。
でも、何となく似ている気もするの。
私の友達の言った「ド変態」って言葉。
実は、その言葉の裏には、
――そんな男でさえも、私には触れたくなるのよ
なんて、承認欲求が混じっていたりして。
性欲って、人間の感情の中でも動機が一番明確で、単純だと思っていたけど、そうでもないのかもね。
それと、私って、女の心理も分かってないかもね。
なんだか、ちょっと疲れたかも。
もう寝ようかな。
じゃあ、続きはまた今度。




