練習試合その二
試合当日、二度目の会場に立つ。
前回はそんなに観客がいなかったのに、今回はけっこう多い。なんていうか、女性陣の数が目立つ。
「なんでだろう?」
首を傾げ、女性陣が密集しているゾーンを見ていると、その中心部にいた女性が立ち上がり、私に向かってお辞儀をしてきた。頭は下げてない。腰を下げるお辞儀の仕方で……これ知ってる! カーテシーとかいうやつだ! そしてそれをしてる人も知ってる! ナタリアだ!
えぇと、こういう時男性側も専用のお辞儀ってあったよね。昔パパがママにしてたの見たことがあった。なんか、右手をお腹の前に回して、右足を引いて軽く頭を下げるやつ! 頭を下げるっていうか、上半身を傾ける感じの!
思い出を可能な限り掘り起こしつつ、それっぽく再現する。傾けていた上半身を戻すと、ナタリアが微笑ましそうな顔をしているのが、遠目にも見て取れたので、たぶん平民にしては頑張ってる程度にはできていたんだろうと思う。
「ぶっさいくな礼だな」
中央部に進み出てきていたブルースが、そう嘲ってきた。こういうやつってよく、ブスとか不細工とかノータイムで言ってくるよね。考える前に口に出ちゃうんだろうなぁ。可哀相に。
「僕、平民ですからね」
練習さえしたことないんだし、不格好なのはしょうがないと思う。ナタリアに笑われなかっただけマシ。
「へぇ、平民って自覚あったのか。てっきりいい気になって、自分は特別だとか勘違いしてるんじゃないかと思っていたぞ」
「あなたは思ってそうですよね」
すっごい勘違いしてそう。それを勘違いだと分かりたくないから、こうやって無理矢理相手させようとしてくるんだろうけど。
「俺が特別なのは当たり前だろう」
あ、やっぱり。はいはいすごいすごい。
やり取りを続けるのも面倒なので、肩をすくめて審判を見た。審判は前回と同じ人で、その人も肩をすくめ、前回と同じ注意事項を述べていった。
「制限時間は十分だ。その時間で決着がつかなければ引き分け。それまでにどちらかが負けを認めるか、スペルの外側にまではじき飛ばされるか、意識を失えば勝敗が決まる。ただし致命的な攻撃は許されていない。攻撃の大きさ次第では違反とみなし、反則負けとなることもある。よいな」
審判の言葉に頷き、礼をする。こっちは頭を下げるやつだ。一応、武術の授業では頭を下げる礼を習っているのでこっちにした。ブルースの方は顎をしゃくるような動きをしている。格好をつけているのかもしれないのだが、却ってかっこ悪い。貴族用のお辞儀しか馴染みがないんだろうか。気の毒に。
「それでは、始め!」
審判の声と同時に、水をまいてエアダッシュをする。
ジョンとの訓練で気づいたのだが、やはりこちらの世界にピストルはまだ早かったみたいだ。私のイメージするピストルの速度と、ジョンが放つ砂礫の速度は全然違った。前世のピストルの弾道、私には百パーセント確実に見えないけど、ジョンのは目で見える速度だったのだ。そりゃ駆けっこよりは確実に早いけど、大リーグのピッチャーほど早くないと思う。あれ、見えないよね?
ジョンによるとブルースの弾速も見えないってほど早くはないとのことだったので、水蒸気によるエアダッシュでジグザグ走行すれば対処できると予測した。
「くそっ」
予測通り、ブルースは的を定めきれずに舌打ちをしている。が、近づけば近づくほど的は当てやすくなる。なので、再び水を、ブルース近くにぶちまける。
「水っ?」
一定距離まで近づいた後、ブルースの背後へ走りつつ、腐属性魔法を発動。今度は加熱した水蒸気で周囲の空間を満たす。
「なっ、見えないっ?」
そう、煙幕である。気配で斬るとか撃つとか、そういう手練れのやり方じゃなさそうだったので、視界を封じることにしたのだ。
「うわっ!?」
こ、こいつ! 適当にぶっ放しやがった! 審判に当たったらどうするつもりなんだ!?
……なんか……アホにはアホの対策が必要だったんだな……。これ以上乱発される前に、意識刈り取ろう。
「こっちこっち」
背後に回って囁く。振り向きかけた脇腹に、エアジェットにより強化されたパンチをお見舞いする。エアクッションで保護してなかったら私の拳が痛んでいた気配。
「うぐぁっ」
よろめいた。もうピストルは撃てないだろうと踏んで、ブルースの腹をエアキックで思いっきり蹴る。キックの威力というよりも、広範囲からぶわっと押し寄せた空気の力でブルースが吹っ飛んでいく。スペルの外に出せたかな?
「あ、ぐぁっ」
スペルぎりぎりでよろめいて体勢を立て直そうとしている。が、よろめいている今こそがチャンスである。追加でエアキックを繰り出すと、ブルースはそのまま場外に吹っ飛んでいった。
……案外、楽勝だったな? エイデン先生に殺されないですみそう。
「勝者! リオン!」
審判の宣言に、前回とは違う、
「きゃーっっっ!」
という、甲高い歓声が沸き起こった。
「うわぁ」
すごぉい。私、こんなの初めてぇ。
女の子の歓声って、自己肯定感爆上がりするな!? うっかりヒーロー気分になっちゃいそう。クラスカースト上位男子の見当違いな格好つけを笑えなくなっちゃう。
「やはり君は素晴らしいな。どうだ、今度剣術クラブに見学に来ないか」
「剣術……いや、僕は風属性じゃないので」
「君が腐属性なのはよく分かっている。だが腐属性魔法で動きの補助をしているだろう。風属性も同じだ。魔法で動きの補助をしつつ戦う方法論が、我々にはある。ダンジョンの戦闘でも有用だと思うぞ? 長時間戦闘のため魔力を節約する方法もあるしな!」
魔力を節約……剣術。今のところ私たちのメンバー、魔法使いだけなんだよね。剣士系がいない。つまり私が剣士系になれば、前衛として戦えるということでは。前衛剣士。かぁっこいいっ! これぞ少年漫画の王道なのでは!?
「えっと、あの……僕、本格的には剣術習ったことないんですけど……」
武術の授業でちょびっとかじったくらいである。
「平民だろう。当然のことだ。平民出身の騎士でも、素晴らしい腕前の者もいる。始めるのに遅いということはないぞ」
「僕、参加したいです……!」
「歓迎しよう!」
闘技場の真ん中で審判と固い握手をする私たち。その私たちに向けたっぽい拍手がさらに大きくなる。たぶん本来ならライバルと固い握手をするシーンだと思われるのだけど、まぁ相手がブルースと思えばなくてもいいかな、と思う所存。
ナタリアは、と思って視線をやると、また立ち上がって丁寧な挨拶を受けたので、今生二回目のボウ・アンド・スクレープ。なんだか責任取ってナタリアを娶らなきゃいけない雰囲気だと勘違いしそうになる。そうか……これがカースト上位男子のやらかす見当違いな格好つけ……! 求婚したら一気にシーン、ってなるやつ! そもそもリオン君、下半身は女の子だから女子とは結婚できないしね!
エイデン先生やユージーンたちも安心した顔で笑ってるし、よかったよかった。っていうか、果たして戦う意味があったのだろうか……。
腐属性魔法使いの一年生が、武闘会予選で再び勝利したというニュースで、ちょっとばかり身辺がざわついたけど、一週間もすればその騒ぎも落ち着いた。
酵母菌テイマーになったハンフリーは、今はどの酵母菌が美味しいパンを作れるかという実験段階に進んでいる。集めた酵母菌を分離して、それぞれの瓶の中で大切に培養している姿を見ると、前世の研究室に送りたい殺意がわいてしょうがない。だがカールのために保存期間の長い、美味しいパンは絶対に必要なのである。駄目よリオン、先輩を前世に送っちゃ!
その日の武闘会メンバーはそれぞれの属性棟で学習する曜日で、ユージーンと二人で、彼の死属性魔法をどうやって無害化ーー峰打ち化?ーーするかについて話していた。
「死と眠りって近いって言うじゃないか。死んだように眠るとか言うよね? 即死じゃなくて、深い眠りにつかせる効果とかにならないかな?」
もう、思いついたことをそのまま言うだけである。できるかどうかは試さないと分からない。アイデアがないと試すことさえできないので、どんな突拍子もない思いつきでもちゃんと話してほしい、とユージーンからは言われている。すっごい変な思いつきばっかり言ってると思うんだけど、ユージーンから呆れた目で見られたことはない。出来たエエ子や……。
「植物も眠るかなぁ? 生き物で試すのって、ちょっとまだ怖くて」
厳密にいえば植物も生きているのはユージーンも分かっている。でも内臓があって血液ーー体液?ーーが流れている生き物を殺すかもしれない方が、忌避感が強いのはとてもよく分かるのだ。
「うぅぅん……じゃあ、ハンフリー先輩の酵母菌試してみる? ハンフリー先輩が大切にしてるやつじゃなくて、なんか最近時々出てくるんだよなって言ってたやつ」
そう、酵母菌のみで構成している小瓶に、雑菌が入り込むことがあるのだ。っていうか、それは普通のことなのだ。研究室でもそういう雑菌に占領されたシャーレを見て、いったい幾人の研究生が雑菌を呪ったことだろう。
でもハンフリーは酵母菌テイマーなので、そういう雑菌が入り込んできたよーっていう酵母菌のSOSを素早く感知し、雑菌を別の瓶に移すなどの改善策を容易に実行してしまうのだ。あぁぁ、前世に送りてぇぇっ!
で、そういう雑菌専用の小瓶もあるので、それを使って睡眠状態にできないか、試してみるのはどうだろう。うっかり死んじゃっても……まぁ。可哀相かもしれないけど、目に見えない雑菌にまで同情していては、微生物学なんぞやってられないものだ。そもそも体内では自己免疫システムによって、細菌やウィルスなんて毎日いっぱい殺戮されてるもんね。不殺生なんて言っても、生きてる以上無理だよね。
「酵母菌? って、眠るのかなぁ?」
「どうだろう? 活動が弱まったら眠ってるって思っていいかも? あ、ハンフリー先輩に聞けばいいんじゃないかな? 今眠ってますかーって」
先輩が便利すぎる。最強かよ。
「そうか……じゃあ僕、ハンフリー先輩の研究室に行ってみる!」
「あ、僕もーー」
「成功したらリオン君にも見てもらうから、広間で待ってて! もし時間になっても行けなかったら、先に剣術クラブ行ってて!」
目をきらきらさせながらそう言う受け君に勝てる人、誰かいるだろうか? 私は勝てない。完敗である。悔いはない。
だけど思いがけず一人である。
「うぅぅむ……」
じっと自分の手を見る。なんかこう、もっとスピードのある攻撃手段ってないだろうか。光の速さ、までは求めていないけれど、少なくともブルースのピストルよりは速い攻撃手段がほしい。ダンジョンのモンスターって、そんなにちんたらしてないと思うんだよね。
「スペルが手元にない時の、即効性のある攻撃手段もほしいよなぁ……」
スペルの描いてある手袋は、普段はつけていない。でもたとえばダンジョンで、寝起きで戦わなきゃいけないこともあるだろう。たぶんダンジョンで装備を解いて、油断しきって眠る、なんてことはないと思うけど、それでも寝ぼけて手袋を外していた、なんてことはあり得ると思う。実生活でも、いきなり暗殺者に狙われて、そんなことが起こり得るなんてこと思わなかったから、対策さえしてませんでした、なんて、ちょっとかっこ悪いというか。
「なんだろうなぁ……腐敗……腐食……」
うーん、首を傾げつつ、自分の中に単語を並べていく。どれもなんだかあり得そうにない。
「……私の属性、案外普通なんだなぁ」
化合物で人体に害があるのは毒物だが、敵にだけ効く毒というのも難しい。魔物にだけ効く毒があればいいのだけれど、それだと武闘会では役に立たない。武闘会で役に立つ毒だと、ダンジョンでは味方に効きそうで危険だし。
「やっぱり剣術かなぁ」
エアダッシュとかエアスラッシュとか、水蒸気や空気の力を借りた攻撃力増強によって剣を振るえば、普通に戦うよりは強くなれるだろうし。
「……あ」
そうだよ、剣。
「剣に毒とか!」
無機物を直接体内に入れれば毒になるのでは! 毒剣使い! カッコいいけど性格悪そう!
普通に気体の力を借りて攻撃力増強した方が、正当派っぽくてカッコいいかもしれない。
実は審判の人ーー剣術のショーン・シーマン先生ーーの剣術クラブにはあれから出入りさせてもらっている。ジャックたちはそんなに乗り気じゃなかったから誘わなかったんだけど、意外なことにユージーンが行きたがるので、一緒に通っている。属性別授業の後、放課後に毎日残って練習する、課外活動と同じ活動時間だった。別に毎日通わなくてもいいらしいんだけど、毎日こつこつ練習した方が強くなると先生は言っていたし、貴族の子供は小さい頃から手ほどきを受けている子もいて、そういう子は私たちよりもっとずっと強いので、遅れている身としては真面目に通うことを選択している。
「ーーおや、君一人なのかい? 珍しい」
「あ、アシュリー様。それにイーノック先輩」
アシュリーはやんごとない嫡男なので、一人で行動しないらしい。この腐属性講義棟に来る時はいつもイーノックと一緒に来ている。
「君は話題の人だからね。一人でいるのが不思議に感じるよ」
「あぁ、練習試合のことですか? たかだか一年生の勝敗なんて話題、すぐに埋没しますよ」
私というよりも、今はブルースの失態の方に話題は変わってるんじゃないだろうか? どうやら婚約者選びに難航しているようだとかなんとか。私が責任を感じた方がいいんだろうか。
「そんなわけないだろう。もうすぐ腐属性魔法を授かった令嬢が転入してくるというのに」
「え? そうなんです?」
やっぱりいたんだ! どんな人なんだろう。エイデン先生みたいな硬派な武闘派ゴリラだったらどうしよう。できれば話しやすい人がいいな。
「パーシヴァルの姉だそうだ。三年生に編入するらしいな」
「へぇぇ」
パーシヴァル少年は二年生で、初めての武闘会練習試合の対戦相手だ。そんなに悪い子じゃなかったし、そういえば姉がいるとも言っていた。腐属性だとも。そうか、そのお姉さんが学園に入学するのか。
「賜色式まで、優秀な令嬢と名を轟かせていたのだが、学園には入学しなかった。となると色無しか腐属性と、皆分かっていたのだろうが。……君のおかげだな。君のおかげで、腐属性魔法がただの、弱く厭わしい魔法ではないと、証明されつつある」
あぁ、最弱四天王な例の話かな。
「僕、まだまだですよ。もっと可能性はあるのに、いまいち結果に結びつけられないんですよね。もっと強力な攻撃手段にできるはずなんですけど」
ダンジョンで無双! みたいな強力な魔法にまだできていない。もっと腐属性魔法には可能性があるのに、その一部しか掴めていなくて、口惜しい限りである。
「君は……すごいな」
「そうです? アシュリー様の属性ほどじゃないですよ。僕の頭じゃ全然、腐属性魔法の可能性を広げられてないので」
正直、悔しい! 腐士としてなら攻撃力カンストしてるのに、化学知識的な腐属性魔法だと、まぁまぁ強い、程度の力に抑えられてしまっている! たぶんそんなもんじゃないはずなのだ! この世界の、魔法の常識が分かっていないのも敗因だと思う。もっと色々詳しく知りたいんだけど、まだ魔法学に関してはそれほど進んでいないのだ。
「……君、贅沢だな」
「そうです?」
己を振り返ってみた。別に……ただ高難易度ダンジョンを楽に攻略できるくらい強くなればいいなって思ってるだけで、贅沢な望みを抱いているわけでは……ある、かもしれない。ちょっと高難易度って意味分かってますか、私? とっても難しいってことなんだぞ? とってもエロいってことじゃないんだぞ!? やだあたし、ちょっと勘違いしていたかもしれない。ブルースのこと笑えないじゃん!
「君、まだ一年生だろう」
「はい……」
「それなのに腐属性魔法の有用性をその身で示して見せた」
「それは、はい……」
戦えないわけではない、程度には示せたかもしれない……。
「君の活躍で救われる令嬢が、少なくとも一人はいる」
「はい……」
「それでも足りないと思っているんだな、君は」
「…………」
はい、と言いにくくて、ちらっとアシュリーを見た。気まずそうな顔をしているだろう私をしげしげと見て、美少年はおかしそうに、声を上げて笑い始めた。
「はっ、あはははっ」
これ、一緒になって笑ったらあかんやつじゃない……? 背後のイーノックを見ると、こっちは苦笑している。うーん、微妙なリアクション!
「本当に君は自由で……正直だな、自分の欲望に」
あ、その辺は自信がありますかね。
「平民なので。できること積み上げていかないと、生きてけないですからね」
この国の王妃様に命狙われてるしねー、そういえば。
「なかなか厳しいものなんだな、平民の暮らしというのは」
心の底から同情した目で見られた! このブルジョワジーめ!
あれ? でもブルジョワって言葉、フランス革命で貴族を倒した、富裕な平民の方を指すんじゃなかったっけ? ってことは、このお貴族様め! っていう罵倒の方が適してるってこと? そのまんまじゃん!
「……あ」
窓の外を見ると、けっこう日が傾いている。そろそろ夕方の鐘が鳴る頃合いだ。つまり、剣術クラブに行く時間ということ。まだユージーンは帰ってきていない。先に行っててって言ってたな。待っててもいいんだけど、迎えに行こうか。いやでも、成功したところを見せたそうにしてたもんな。実験の邪魔になっても悪いかもしれない。
「あの、僕そろそろ剣術クラブに行かないと」
「あぁすまない。一緒に出ようか」
イーノックも頷くので、恐れ多いことながらアシュリーと一緒に講義棟を出た。剣術クラブは男子寮に近い場所にある。というのもこの剣術クラブ、正確には男子剣術クラブという呼称なのだ。つまり、女子剣術クラブというのもあるのだ。そちらは女子寮に近いところにあるらしい。男子寮への道を途中まで行くことになるので、アシュリーは男子寮へ、私は剣術クラブへと向かう寸法だ。
「ーーお、リオンじゃないか。よぉ」
南から合流する小道近くを歩いていた生徒が、声をかけてきた。背が高い、茶色の髪。ーーおっぱい少年だ!
「えぇと、ブルース様」
「今から帰りか?」
「いえ、僕はクラブに行くので」
「ーーダフィ伯爵子息だね?」
練習試合で負かしたはずなのに、このブルースという男には恥という概念がインストールされていなかったらしい。こいつはしばしば、馴れ馴れしく声をかけてくるようになったのだ。なんか女心の達人? とか思われているらしく、どうやったらモテるかっていうのをしれっと聞いてくる。今更モテようなんて色々遅いと思うんだけど、人の意見を参考にしようとするスタンスは、悪くない成長ぶりである。
そのブルースに、アシュリーが話しかけた。今までアシュリーのことが見えていなかったらしく、声をかけられて胡乱な顔をした後、ぎょっとして二、三歩後ずさった。おっそっ!
「っこ、これはドリスコル卿っ! 平民と一緒に散策されるなど、思いもよらず……っ」
へぇー。こいつ、一応は上位者に払える礼儀、あったんだぁ。
「その平民に君は負けたのだから、もう少し丁寧な物言いはできないのかい?」
「はははっ、卿は冗談がお上手なのですね!」
ブルースにしては爽やかに笑った。日が陰ってきたのか、森の中の小道は、気温が一気に下がってきた。なんか鳥肌まで立っている。おかしい……冷気の発生源があざと可愛い美少年に見えてきたぞ……疲れてるのかな……。




