第52話 廃村のダンジョン
レンガ作りにおいてメインといっても過言ではない作業、それは焼き入れ。数日干して余計な水分を抜いてから窯で焼けば、粘土はレンガへと生まれ変わる。
そしてレンガを焼くために必要な物とは燃料、つまり薪だ。
「おっしゃ! 思いっきり暴れてリフレッシュするでぇ!」
「お、ケムシン今日は元気だな」
「昨日の作業は大変だったっスからね」
俺たちは薪を求めてダンジョンへとやってきていた。
~廃村のダンジョン~
区分 :ノーマル
タイプ:廃村
人数 :4名以下
難易度:☆☆☆☆
目の前には村。木造平屋で古さと粗末さを感じさせるボロ家が並んでいた。あばら家と言ってもいいかもしれない。
この家々を倒して薪として持って帰るのが今回のミッションだ。必要な量は荷車満載を4つ分。なのだが……
「きゃー! 襲撃よ!」
廃村のはずの、というかダンジョンのはずのこの村には住民が居た。村の入口に居た奴が俺たちを見て一目散に逃げだす。その姿は――
「牛が2本足で走っとる!」
「喋ったぞ!?」
「頭にリボン付けてたっスよ!」
牛が村に逃げ込み騒がしくなる。どうやら村にはそれなりの数の住人が居るっぽい。
俺たちは村に入ってみた。そこには――
「ブヒー! 人間が入って来た!」
「豚が2本足で立っとる!」
「喋ったぞ!?」
「帽子かぶってるっスよ!」
沢山の豚と、
「ヒヒーン! 皆逃げろー!」
「馬が2本足で立っとる!」
「喋ったぞ!?」
「スーツ着てるっスよ!」
同じくらいの馬と、
「コケ―! コケコッコ!」
「ニワトリが2本足で立っとる!」
「いやそれは普通だろ!」
「あ、そうやったわ!」
「すごく・・・大きいっス」
人間サイズのニワトリも居た。
俺たちを見てパニックになる動物たち。リアル鳥獣戯画な光景に立ち尽くす俺たち。
「お、男たちを集めろ!」
「武器! 武器持ってこい!」
「コケコッコー!」
おっとまずい。戦える奴らが集まって来た。槍とか抱えてる奴もいる。蹄なのに随分器用に武器持ってるな。
「どないする!?」
「殲滅あるのみっスよ!」
シリルさん血の気多いな。だが俺には1つどうしても気になる事があった。
「ちょ、ちょっと一旦ダンジョン出よう」
「了解や!」
「え、戦わないんスか?」
「いいから」
俺たちはUターンし村を脱出した。
(マオ、あいつらってモンスターか?)
『モンスターです。まちがいなく敵ですね』
(喋ってたし、なんか普通に暮らしてるっぽいんだけど……)
俺が気がかりな点。それは彼らがマオみたいな心を持った存在かどうかである。さすがに殺人(?)は忍びない。
『あれはそう動くようプログラムされているだけですね。私のように友人が欲しいという願いから生まれた存在ではありません。おそらく転生者側の戦意を削ぐための演出でしょう』
あ、ふーん。ってことは……
「皆、もう1回行ってみよう」
「ダンジョンにスか?」
「ええけど、なんかあるん?」
「多分だけど――」
俺たちは荷車は外に置いといて村へと入っていった。
「きゃー! 襲撃よ!」
「ブヒー! 人間が入って来た!」
「ヒヒーン! 皆逃げろー!」
「コケ―! コケコッコ!」
ワ―ワーワー。騒ぐモンスターたち。2度目の突入だというのに、さっきの事が無かったかのような驚きっぷりである。
「完全に1回目と同じリアクションやな」
「一気に茶番に見えてきたっス」
「本当に決まった通り動いてるだけなんだな……」
見た目ではそうだと分からないあたりにこのダンジョンの悪意を感じる。プログラムだと気づかなかったら大半の人は躊躇してしまうだろう。なんなら俺なんかまだ躊躇しそうだし。
「お、男たちを集めろ!」
「武器! 武器持ってこい!」
「コケコッコー!」
敵の戦闘員が集まって来た。俺は斧を召喚する。
「とりあえず襲い掛かってくる奴らだけ倒すか」
「まあそれでもいいっスよ。私達剣無いし」
「クワ効くやろか?」
「人間は殺せー!」
「「「うおおおおおおおお!」」」
こうして侵略者と住民達の凄惨な戦いが始まったのだった。




