第38話 マオの告白
「俺たちのパーティーに入りませんか?」
俺の誘いにマオは小さく口を開け、そしてすぐに閉じた。わずかに目を伏せ沈黙する。
「む、無理にとは言いませんけど、こうして出会ったのも何かの縁というか……その、マオさんと一緒に居て俺は楽しかったですし。どうですか?」
「マオちゃんが来てくれるんなら大歓迎やで」
マオにはイベント中何度も助けられた。スキルが強いというのもあったがそれよりも、死にたくないと言いながらも電撃から俺をかばってくれた事が一番うれしかった。それだけで十分だ。
俺はこれからもマオさんと一緒に居たい。三人ならきっと楽しいだろう。
だが、
「申し訳ございません……」
マオはうつむきながら首を横に振った。
「私はお二人と一緒には行けません」
俺は今どういう顔をしているのだろう。残念そうなのか、悲しげなのか、それとも無表情なのか。
こういう時、どんな顔をすればいいのだろう。悲しそうにしたらマオが後ろめたく思ってしまうかもしれない。……だめだ、それ以外の顔にならない……。
「理由を聞いてもええか?」
返せずにいた俺に代わりケムシンが聞いてくれた。
「私は今までずっと騙してきました。目的のために嘘をつき、欺き、騙り、隠してきたのです」
目的? 隠していた? 一体何を?
「私には仲間になる資格などありません」
「別にええよ、隠し事くらい。仲間には何もかも打ち明けないといけないなんて決まりは無いで?」
「そうではありません。そういう話ではないのです」
どういう事だ?
「イベントが終わった以上、私は目的を達成しなければなりません。私の存在意義を、使命を、果たす必要があります」
「一体何の話や? マオちゃんの目的ってなんなん?」
「私は……」
マオの唇は少し震えているように見えた。
「私は本当は――!」
その時だった。
「ミョンチー! ケムシン!」
教会の方からホスディアの大声が聞こえた。思わず振り返る俺たち。
「今すぐそこから離れろ!!」
なんだ? ホスディアは何を言ってるんだ?
「馬鹿! 逃げられるだろ!」
「押さえろ! これ以上余計なことをさせるな!」
「行け! もう行っちまえ! 囲め!」
教会から一斉に転生者たちが出て来てこちらに押し寄せた。ホスディアは押さえつけられ、残りの奴らが俺たちを包囲していく。
「な、なんだ!?」
「どうしたんや!」
「……やはり来ましたか」
たじろぐ俺とケムシンとは裏腹に、マオは静かにそうつぶやいた。
転生者たちは武器を出し今にも襲い掛かって来そうな雰囲気だったが、それより先に包囲を完成させる事を優先していた。明らかに統率がとれている。
「皆さん! イベントが終わった今、理由は分からずともこれが最後のチャンスです! 絶対に逃がしてはいけません!」
「ケロンチョ……!」
やっぱりあいつか! 今度は何をしでかす気だ! マオは何か知ってるのか?
「マオさん、これは一体……!?」
「私を殺しに来たのです」
「ころっ!?」
マオがフードをとった。中に入ってた長い髪があらわになり風にたなびく。きめ細かく艶がある、腰まで届く綺麗な髪。
俺は何回か見た事ある。この世界じゃ珍しいなくらいに思ってた。マオの黒髪って。
なんで今フードを取るんだ……。
「私は『孤独な軍師』。東城真央というボスに搭載された、軍勢指揮用の賢者チートです」
「ボーナスステージだ!」
誰かがそう叫んだ。
「死んでください」
マオが召喚獣を出した。その数、多分100以上。
「あなたたちは私の敵です」
俺とケムシンは狼に喉元を噛み千切られ死んだのだった。




