第36話 解釈違い
「やから断るって。もう絡まんといて」
ケムシンはケロンチョの勧誘をあっさりと断った。そして興味を無くしたようにボス戦の方に目をやる。
対してケロンチョは理解できないといった顔だった。
「な、なんでです? おかしいでしょう!」
「おかしくないで」
「あなたには何のメリットも無いでしょう!? 何が不満なんです? 待遇ですか? なんなら私と対等な地位のツートップとして――」
「違うって。もうええから」
ケムシンが勧誘を断るのは知っていた。ホスディアが事前にケロンチョの企みを推測して教えてくれてたからな。
その推測通り、ケロンチョは本当に何も理解していないみたいだ。人が損得だけで動くと思っているんだろう。
「もしかして……遠野さんに何か弱みを握られているのですか!? なら私が――」
「あ゛?」
あ、ケムシンがキレた。初めて見た。
青筋くっきり出てるなー。メンチ切ってるケムシンってなんか新鮮。
「な、なんで……ありえないでしょ。早く転生したくないんですか? せっかくボスを倒してお膳立てしてあげたのに!」
まだ倒してはないだろ。
歯ぎしりするケロンチョ。自分の思い通りにならなかったのが相当悔しいようだ。今まではトップとして自由にできてきたんだろうな。
もう終わりかな? さすがにこれ以上誘ってはこないと思うが。これだけ拒絶されればいくらこいつでも諦めるだろう。
ケロンチョは最後にこう吠えたのだった。
「こっちは強い転生者を集めないといけないのに!」
結局お前の都合じゃねーか!
その時だった。
ピシャーン! ゴロゴロ!
「え?」
稲光が駆け抜けた。密集してボスを包囲してたやつらが一斉に感電。
「な、なに!?」
「ボスや!」
「みんな死んだぞ!」
生きてるのは、離れて見てた俺たちだけ!?
黒焦げ死体の輪の中からボスが姿を現した。電撃を纏い、両手で剣を構えている。
「そんな! 魔力切れのはず……!」
「どういうことだ!?」
「魔力切れじゃなくて、クールタイムが長かっただけなんや!」
「まじか!」
いや、それよりも……!
なんで無傷なんだ!? 左腕斬られただろ! いつ生えた!?
「倒せたと思ったのにっ! 虹ビーム!」
ケロンチョが魔法を放った。7色の光の束がボスを貫く。だがその穴はすぐにふさがった。
体を電気にして攻撃をすり抜けるチート。実際に目にしてみて、俺はまさかと思った。
「体を電気に変えたときに傷も戻ってる!?」
知らないぞ!? 俺こんなチート頼んで無い! 再生能力なんで持ってないはずだ!
まさか……解釈違いか!?
俺の説明を聞いた神が、俺のイメージと違う理解の仕方をしたんだ!
「マズいで! 変身!」
ケムシンが鎧を着こんで前に出た。
「俺が避雷針や!」
直後ボスの攻撃が発動。ケムシンは一人でその攻撃を受け止めた。
それでも死なないケムシンにボスは剣を打ち込み続ける。だがダメージ無効だと理解したのか、ボスはすぐに俺に標的を切り替えた。
「やべっ!」
ピシャーン! ゴロゴロ!
雷鳴が轟く。
「なっ!?」
割り込んできた狼が俺の代わりに死んだ。
「サモン!」
マオの声がすると同時に狼の群れが姿を現す。狼は次々にボスの電撃を受け死んでいった。
「無事ですか」
「生きてたのかマオさん! どうして!」
「うっかり死にたくないので包囲から離れて見てました」
おいコラッ! でも今回はナイス!
「こ、この使い魔は!」
ケロンチョはただ突っ立ってるだけ!
狼を全滅させたボスが再度電撃を放った。
「ウミガメシールド!」
ウミガメを盾にそれを防ぐマオ。
「何それっ!?」
狼以外も召喚できるのか! 電気貫通してないし!
「任意の使い魔に任意のスキルを持たせて召喚が可能」
チートじゃねえか!
ボスを纏っていた電撃が消えた。また長いクールタイムに入ったのだ。
「サモン!」
マオが象を召喚した。ボスの頭上に。
轟音と共に押しつぶされるボス。地面が陥没した。直後象を真っ二つにし脱出したボスだったか、その右足は潰れ、それ以外も全身ボロボロだった。
「逃がさへんでえ!」
そこにケムシンが突っ込んだ。
「喰らえ! 俺の新しいスキル!」
ケムシンが両手を合わせた。まさか、その構えはカメハメ――
「魔導拳!」
波〇拳じゃねーか!
ケムシンの放ったエネルギー弾がボスに直撃。吹っ飛んだボスが放物線を描きこちらに降って来る。
「ミョンチー様、とどめを!」
「やったれぇ! ミョンチー!」
お前ら……任せろ!
「うおおおおお!」
俺は斧を振りかぶる。狙うは墜落の瞬間。
一撃で終わらせる!
俺は、ボスの首に斧を振り下ろした。




