第34話 雷チート
俺のボスの能力は雷チートだ。
電撃を放ち、雷の速度で移動し、そして体を電気に変えて攻撃をすり抜ける。
そのうえ最高クラスの身体能力と達人レベルの剣技を備えている。遠距離と近距離、物理と魔法、全てにおいて対応できる隙のない能力構成だ。
これが俺の、“僕が考えた最強のチート”だった。
「なるほど、偵察した通りですね。奥の手を隠し持っているのが一番の心配でしたけど、そんな事も無くてよかったです」
「はあ……」
「ホスディアさん、遠野さんのボスで本決定でいいですね?」
「仕方あるまい」
苦々しくそう返すホスディア。次の標的が俺のボスに決定したらしい。ケロンチョは意気揚々と帰っていった。
……え、マジで?
戦うの? 俺のボスと?
もっと先になると思ってた。まさかこんなに早く挑むことになるとは……。
「ミョンチー、災難だな……」
「え?」
ホスディアの言っている意味が分からず、俺はぽかんとした。
「うぅ……」
「よしよし。よく耐えたで」
その後の集会で俺は壇上に立たされボスの能力と共に晒された。どんな羞恥プレイだよ畜生!
「と言う訳で遠野さんのボスを狙います。偵察の時でも瀕死に追い込めたので、100人なら簡単に倒せますね!」
悲報。俺のチート、雑魚だった。
「皆さん、頑張りましょう!」
「「「おおおおおおお!」」」
と言う訳で俺たちは北に10㎞ほど進み、コロシアムに到着。これが俺のダンジョンだ。
「入口は一つ、直通で中のグラウンドに出ます。観客席はダンジョンの外扱いなのでただの飾りですね。登り口もありません」
ケロンチョの言う通り、コロシアムに入り通路を進むとすぐにグラウンドが見えてきた。グラウンドの周囲は高い壁に囲まれている。その壁に一つだけある入場門に俺たちはいた。
「グラウンドに入るとボスが動き出します。気を付けてください」
やばい、もう恥ずかしい。
「ボスが見えるぞ」
「男だ!」
本日二度目の羞恥に、俺は顔を覆った。
見ないで。引きこもりだった頃の俺を見ないで!
「あれがこんな美少女に!?」
「マジでTSじゃねーか」
見比べんじゃねえ!!
「ちっ、野郎かよ」
「ちょっと無理」
「帰るか」
勝手に失望すんじゃねええええ!
もういい! もう知らん! あんなボス知らない!
今すぐこの世から消し去ってやる!
「落ち着いて遠野さん! 一人で突撃しないで!」
黙れケロンチョ! 俺は遠野正平じゃねえ!
俺はミョンチーなんだ!
少しして
「どうどう、大事なのは内面や。見た目なんて気にせんでええで」
「同意。ミョンチー様はミョンチー様です」
ケムシンとマオになだめられ、なんとか俺は落ち着いたのだった。
~遠野正平のダンジョン~
区分 :ボス
タイプ:コロシアム
人数 :10名以下(解除)
対象者:ミョンチー
「では皆さん作戦通りに。突入!」
「「「うおおおおお!」」」
ホスディア率いる突入班20人が一斉にグラウンドに侵入した。迎撃に動き出すボス。
「散開!」
ホスディアが号令。20人が思い思いの方向に散らばった。
ボスが剣を構え前傾姿勢をとった。そして放電。バチバチと音を立てて全身が青白く光る。
直後稲光がグラウンドを走った。あまりの眩しさに俺は思わず目を閉じる。
再び目を開けたとき、突入班の半数は死んでいた。
「う、うわあああ!?」
「構うな逃げろ! ボスを入口から遠ざけるんだ!」
逃げ惑う突入班。それを追うボス。
またもや雷鳴が轟いた。ボスが雷と化して移動したのだ。そしてホスディア含む数名が即死。
攻撃を受けたホスディアは消し炭と化し、同時に剣でバラバラにされていた。耐久☆5ですら一撃でこれ。オーバーキルにも程がある。
なんだ。ちゃんと強いじゃん。あのボス。
俺は入口からグラウンドを覗きそんな事を思っていた。同時に落胆。簡単には転生できそうにない。
そうして数度の雷鳴の後。
「電撃が止みましたね。全員突入!」
ボスが入場門から離れたのを確認し、ケロンチョが号令をかけた。
グラウンドに駆け込む俺たち。突入班15名程の犠牲のおかげで、残り全員が無事に突入することができた。
「もう勝ちましたね。あとは消化試合だけです」
グラウンドの半分近くを埋め尽くす転生者を見て、ケロンチョが満足げにそう言った。
俺たちが用意した作戦は、すでに完了していた。
なぜこのボスが標的に選ばれたのか。
速い、高威力、防御不能という雷チートを持ちながら、それでも雑魚と判定された理由。
いや、必ずしも雑魚と言う訳ではないんだ。通常なら、6人までしか挑めない普段なら、このボスは最凶最悪と言って良いと思う。突入班も15人が瞬殺されたしな。
ただ、このボスは、雷チートが強力過ぎた。
もう一度言おう。速い、高威力、防御不能の三点セットだ。しかも密集してたらいくらでも感電して被害が広がるというおまけつきだ。
さすがにそのままじゃ勝ち目がないと神が判断したんだろう。
だからゲームバランスを取るために、違うところに調整が入った。
このボス、めちゃくちゃ燃費が悪かった。




