第30話 マオのスキル
ボスの強行偵察をするために町を飛び出したD班。担当は西方向である。ボスダンジョンを近い順に回る予定だ。
「中間の世界?」
「はい。ボスを倒さないと転生できないんです」
「ボス?」
「ボスは転生者と同じ数おるんや」
「転生者一人につき一体って感じです」
移動しながら俺とケムシンはマオにこの世界について教えこんでいた。
「ガチャ?」
「せや。ダンジョンをクリアしたら引けるで」
「ダンジョン?」
この世界って転生物のテンプレ世界観とは違うから説明しにくいんだよな。言葉の定義から説明しないとダメか。
出来るだけわかりやすく説明してあげないとな。
「ダンジョンには2種類あってですね――」
ちなみにボスダンジョンだが、マップを見ると大体均等に散らばっている。数は転生者と同じでおよそ100だ。それが数kmくらいの間隔で点在している。
一番遠いボスで町から30kmくらいか。担当範囲だけでも回るの相当大変だぞ。全部回るのは無理かもな。
というか、ちゃんと勝ち目のあるボス見つかるよな? 夜丸々使って何の成果も得られませんでしたじゃ困るぞ?
まあケロンチョや他のボス経験者が話し合ったって事は、探せば居るって事なんだろうけど。
あれ? 本当に偵察する必要あるのか?
ケロンチョ達ってボスの情報知ってるはずじゃね!? あいつらボス攻略専門パーティーだろ!?
「なあ、この作戦意味あるのか? ケロンチョ達ってボスの情報持ってるだろ?」
ホスディアに近づいて耳打ち。ホスディアは会議に参加していたから何か知ってるかも。
「ああ、気づいたか」
なにその不穏な返し。
「ボス戦の経験があるのは7パーティー、人数にして30程だ。そしてそいつらは互いに知り合いだ。なぜだか分かるか?」
「……この世界に来て長いから?」
「それもあるが、もっと切実な理由がある。固定パーティーでボスを倒すのは難しいからだ」
ああ、パーティーメンバーの入れ替えが多いのか。
「だからボス攻略者は協力関係にならざるを得ない。攻略法が確立したボスの情報は互いに共有して、できるだけ全員がスキルを得られるようにする」
攻略済みのボスも全員同じになるって事か。
「そしてこのイベントだ。奴らは自分たちが攻略してないボスに狙いが行くよう俺たちを誘導している節がある」
うわあ。
まあ分かるけど。スキルが手に入るのは初回攻略時だけだもんな。
「つまりこの作戦は、ケロンチョ達も知らないボスの情報を集めるためのもの?」
「その通りだ。まあ俺たちにとっては何の問題もない。ボスが倒せるなら何でもいいからな」
ホスディア、割り切ってるなぁ。
そうしているうちにダンジョンに到着。俺たちの前には天下一武道会みたいな石の舞台が鎮座していた。
~後藤大地のダンジョン~
区分 :ボス
タイプ:武闘場
人数 :5名以下(解除)
対象者:イババヤ
石台の中央にうっすら人影が見える。あれがボスだな。
「突撃!」
着いて早々一斉に突入するD班一同。作戦は無い。ただの力押しが通用するかを確認するためだ。
「困惑。これは……」
「マオさん、俺たちも行きましょう!」
しまったな。イベントのルールとか作戦を先に説明しとくべきだったか?
初めての戦闘だからな、仕方ない。とにかく慣れが必要だろう。右往左往していたマオの手を引き俺もダンジョンに足を踏み入れた。
「うわああああ!」
「スキルが! 俺のスキルがー!」
「許せねえええ!」
先に突入してた転生者たちが暗闇の中叫んでいる。何か起こったのか?
俺はとりあえず斧を出しておく。
と思ったら、
「あれ?」
斧出ろ。出ろって! 何で出ないの!?
「まさか……!」
俺はすぐにステータスを開いた。スキルロットを確認。あるのは「嫉妬深い射手」だけ。「貧乏性の木こり」は無くなっていた。
「スキル強奪だあああああ!」
誰かがそう叫んだ。そいつは次の瞬間死んだ。ボスが暴れまわっている。
「こんなん勝てるか!」
「返してくれっ!」
「強すぎぃ!」
ボスが多種多様なスキルを使いまくり蹂躙する。俺たちが追い着いた時にはすでに死屍累々。生き残りは数名だった。
「ひっ!?」
「落ち着いてマオさん! 死んでも教会で生き返りますから!」
「体は逃走を求める!」
「マオさん!?」
逃げたっ! ちょ待って!
「大丈夫です! 死ねば楽になりますから! 痛いの一瞬だけですから!」
「嫌あああああああああ! 死にたくないいいいい!」
ロボ子っぽいキャラ付けはどうした!
追いかける俺。そしてボス。
「うおボス来てる!!?」
「きゃああああああああ!」
新人のマオはステータスが初期値。俺はすぐに追い付いた。もちろんボスも追い付く。
「このっ、ダークバレット!」
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命中!
恐怖:失敗
低速:失敗
暗闇:失敗
拘束:失敗
封印:失敗
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あ、だめだ。やられる。
「サモン!」
マオが叫んだ。
「え!?」
目の前の光景に、俺は思わず目を見開いた。
ボスを包囲するように、狼の群れが召喚された。




