第31話 軍勢チート
「サモン!」
「えっ!?」
ボスに追いつかれようかというその直前、マオが狼の群れを召喚した。ボスと狼達が戦い出す。
ええっ!? 何それ!
「マオさんそれは!?」
「私は使い魔を召喚するスキルを所持しています」
召喚士かよ!
狼は人間が乗れるくらいでかかった。それが20頭。ボスとの戦いを見るに1体1体の強さもそれなりにあるっぽい。
いや、多くね!?
マオ1人で転生者20人分の戦力って事!? ゲームバランスおかしいだろ! リセマラさせろ!
やべえ。逸材だ。おれはとんでもない大型新人を見つけてしまったらしい。
これならボスに一矢報いる事が出来るか!?
「死にたくないいいい!」
マオは逃げ出した。結局逃げるんかい!
「待ってマオさん! どのみち教会で集合ですから! 結局死に戻る事になりますから!」
追いかける俺。はたから見れば2人揃ってダンジョンの外へと逃げてるように見えただろう。それを咎める声がかけられる。
「お前らどこへ行く! 敵前逃亡か!?」
その声の主はホスディア。まだ生き残ってたらしい。ホスディアもまた俺達を追って後に続いた。
「マオさん逃げないで!」
「逃げるなミョンチー!」
「俺じゃねえ!」
「嫌ああああああああああ!」
逃げるマオ。追う俺。それを追うホスディア。
後方をちらりと確認。ボスは追って来てなかった。狼の最後の1体が倒される瞬間だけが見えた。
そのまま俺達はダンジョンの外に出てしまった。戦闘終了と同時にボスはリセット。奪われたスキルは元に戻っていた。
「なるほど、新人なら仕方無いな。次から参加すれば良い」
ダンジョンを脱出して生き残ってしまった俺達。マオの事情を聞いたホスディアはあっさりと許してくれた。
「良かったですねマオさん」
「羞恥。見苦しい所をお見せしました……」
「じゃあ教会に戻るぞ。2人とも目をつぶれ」
ナイフを取り出すホスディア。いや怖えよ。……うん、俺もやっぱり死ぬの怖いわ。マオの気持ちも良く分かる。
「1つ提案があるのですが」
「なんだ?」
「この作戦については理解しました。より効率良く偵察する方法が存在します」
「効率良く?」
「肯定。具体的には――」
~明智勇一のダンジョン~
区分 :ボス
タイプ:河原
人数 :6名以下(解除)
対象者:ペンジール
「「「GRRR!」」」
ダンジョンを駆ける狼の群れ。それが自在な連携によってボスを追いつめようとしていた。
だがボスの方も負けてはいない。四方八方から襲い掛かる狼相手に剣と魔法で渡り合っている。放たれた炎が周囲を照らしていた。
着実に数が減らされていく分、狼の方が不利か?
とはいえ圧倒的な強さとは言い難い。
「このボス、弱いですね」
「同意。転生者全員で強襲すれば勝率は高いと予測」
俺の感想にマオがそう返した。
俺とマオは今、2人だけで偵察を行っていた。ダンジョンの外から狼とボスの戦いを眺めている。
マオの提案はシンプルに手分けをするというものだった。今回の強行偵察に必要な戦力をマオは1人で持っているからである。
さらにマオのスキルのある特性が、偵察の効率化に拍車をかけていた。
使い魔は死んでも時間が経てば再召喚出来るのである。そしてマオは教会で回復する必要が無い。
なぜなら使い魔は武器扱いだから。
〇〇を召喚し扱う事が出来る、というのが武器スキルの説明文。そして武器スキルは召喚に魔力を消費しないのである。
うーん、これはチート。それともシステムの穴から生まれたグリッチと言うべきか?
とにかくマオは偵察の度に死に戻る必要が無い。偵察の大半は町からの移動時間だがそれが無いのだ。
だからマオの担当は町から遠いエリアとなった。ホスディア達は町に近いエリアを担当。
ちなみに俺は教育係としてマオに同行した。まだまだこの世界のルールについて教えないといけない事が多いからな。
そうこうしている内に戦闘は終了。途中からボスが大技を連発し始めてあえなく全滅した。
「追いつめられると奥の手を出す感じですかね?」
「解析完了。このボスの能力は成長チートです」
「成長チート? 経験値うん倍みたいな?」
確かに最初は弱かったのに後半は強かったな。戦いの中で成長したのか。
マオが言うには、
・時間が経つほど勝手に強くなっていく
・相手を殺すと一気に強くなる
・攻撃を受ければ耐性が付き、剣を振れば技量が上がる
という事らしい。
「誰も殺されずにボスに15秒以内に致命傷を与えれば勝機はあると予測」
いや短い短い!
「このボスはとりあえず保留にします?」
「肯定。それがよろしいかと」
俺達は次のボスへと向かったのだった。




