クロ
ふわふわとした感覚、もうさすがに夢の中だと確信している
明晰夢と言うものか?意識はあるが夢である
そんな四度目の夢の始まりは幼い宗馬が神社に隠し置いた子猫を見にいく事から始まる
(この時、何かがあった)
幼い日の宗馬がいつものように猫を愛でようと駆け寄った時…居るはずの猫は居なかった
寝床に作った箱とタオル、僅かな食べ物もそのままで姿が無い
遠くに出るには子猫過ぎる、近くにいるだろうと探し出すが見当たらない
名前を呼んでいる「クロー!」
そうだ、あの子猫の黒猫にはクロと名付けていたんだ
蘇り出した記憶はこの先も少しずつ思い出していく
(探し回って…そうだ、見つけたんだ…)
夢の自分が先に認知し、幼い自分がその時を迎える
「クロ!」
木々の陰に横たわるクロを見つけたのだ
カラスか野生動物か…襲われた跡を胴に付け呼吸は浅い
子供ながらに動物病院へと走り出したかったが、隠して飼っていた身だ
現実的に親へ話したりお金の事だったり、田舎故の病院は市内にしかなかったりとパニックになった事を思い出す
(この時は無力感しか無かったな…)
クロは浅い呼吸のまま這いずりへたり込んだ幼い宗馬の膝に乗り上げた
「クロ…」
そのまま蚊の鳴くような声で宗馬を見て鳴き、震えながら手を舐め…動かなくなった
(子供だったからとは言え何もしてやれなかったな…)
少しずつ意識が現実に覚醒していく
その間際、確かに「ありがとう」と聞いた事のある女の声がした
宗馬は目覚めた
時刻は昼を回った所で三時間程夢を見ただろうか
ハッキリと思い出した
子供の時可愛がっていた猫の最期を看取る、あまりにもまだ心が未成熟だったのだろう
起きた現実を受け入れられずに精神を守る為、忘れる事を無意識に選んだのかもしれない
あの後、泣きながらクロを神社の神木下に埋葬したはずだが秘密裏に行ったので自分しか知らないはず
「蓋を開けてみれば子供のやった事…だけど当時大きなショックだったんだよ」
誰に言うでもなく宗馬は天井に呟いていた




