0096・運営さん達06
2000年 8月12日 土曜日
『悪魔の星のフィールドにレアモンスターである<首狩り兎>が出現しました。最も近くに居るプレイヤーは<コトブキ>です』
「また彼も妙な事に関わりがあるねえ。一日に一度、世界の何処かにレアモンスターが湧く仕様にはなってるけどさー。いろいろな事を巻き起こす彼の近くにピンポイントで湧くとは……」
『正しくはプレイヤー<コトブキ>の前で土ウサギと大ネズミが争い、土ウサギがレベルアップして進化し<首狩り兎>となりました』
「いやいや、どんな確率よ。おっそろしく低い確率の事が起きてるじゃん。ある意味で運が良いというか、それとも運が悪いというべきか。あいつレベル相当高いからねえ。とある場所に行かないと出現しないし、ポップ数もビックリするぐらい絞ってあるからなあ……。全てはレアイテムの所為だけど」
『プレイヤー<コトブキ>は拘束系魔法を駆使して倒し、<首狩り兎の尻尾>を入手しました』
「はぃぃぃぃぃぃいぃ!?!!? あんのクッソ低い確率を突破したっての!? えっ! 何かの冗談でもなくマジで!?」
「どうした? 何かあったのか?」
『プレイヤー<コトブキ>が低い確率で出現した<首狩り兎>から、レアアイテムである<首狩り兎の尻尾>を入手しました。つまり非常に低い確率で出現した魔物から、非常に低い確率で手に入るレアアイテムが出たという結果です』
「何だそんな事か、いちいち驚かせるな。確かに極めて低い確率だろうが、出ん訳ではないのだ。驚いてないで仕事しろ」
「あっ、はい………。あれ? オレだけなの、驚いてるのって。だってビックリするぐらいの低い確率だよ? ………さーせん、真面目に仕事しまーす」
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2000年 8月13日 日曜日
『プレイヤー<トモエ>が、プレイヤー<コトブキ>と合流するようです。これは魔女同士の交流によるものですので、通常のイベントの範囲内であると思われます』
「…………うん、確かに。<支配の魔女>が<破滅の魔女>の所に行くだけ、というより温泉の事を聞いたサインが逃げ出したというだけだ。問題のある行動じゃないし、別に咎める必要もないね。それに合流するのも双子の姉弟だし」
「<双子の悪魔>とか呼ばれて、割と色々なゲームで有名というか、知ってる人は知ってる双子だけど。………姉の方は従魔が殺されてるねー。残ったのはメスゴブリンだけ? ……迷賊に殺されたのかぁ、残念。まあ、姉の方は彼ほどおかしくないし仕方ない」
「実際には十分トッププレイヤーの力量を持ってるんだけどね、弟君がちょっとおかし過ぎるだけで。ある意味では可哀想だと思わなくもないよ。まあ姉弟仲は悪くないみたいだけど」
「ゲーム内で姉弟の抗争とか面倒臭いからねえ。私怨からくる怨みだとどうにもならないし、そういう面倒なのは関わりたくないし。まあ、姉がストーカー被害に遭ったら、キレて犯人を虐殺するような弟だから問題無いとは思うけども。あっ、犯罪者は自業自得ね」
「あれ? ホブゴブリンって喋れたっけ、ハイゴブリンの方じゃなかった? ………あー、どっちもに切り替えたんだ。まあ、喋れずにゴブゴブ言ってるだけなのもねー。余計に人気無くなりそうだし、早めた方が良いのも確かかー」
「おぉー………流石は【色欲】の悪魔。ガッツリ魔物を引き込んでる。普通なら殺される危険性があるけど、双子は完全に虐殺してるねー。そして地味に姉の方も上手く動くっていうね。何度も言うけど、この体はおかしい。絶対に高校生の体じゃないわよ、グラビアレベルじゃないの」
「いや、女子高生で漫画雑誌の表紙を飾る子とか、普通に居るから。もちろんグラビアモデルとして。この姉の方は特にそういう仕事してないって聞くけど、世のグラビアモデルが文句言ってくるスタイルだとは思う」
『アバターで変更されているのは髪の色だけです。これはプレイヤー<コトブキ>も変わりません』
「なんだよねー。何なの? この美形姉弟は。意味が分からないし、色々おかしい。どんな親から産まれたら、こうなるわけ? 私にも分けなさいよ」
「無理に決まってるだろ……。それは横に置いておくとして、【色欲】の悪魔が煎餅好きってどうなんだろう? チョイスがお婆ちゃんかよって言いたくなる。で、姉に出すのは歌○伎揚げかい……」
「何故かホブが無表情でボリボリ食べてるけど、ああいう人って居るわよね。目の焦点が合ってないっていうか、一点見ながら食べてる人」
『プレイヤー<トモエ>の支配下であるホブゴブリンの好感度が急激に上昇しています』
「ま、放っておきゃいいさ。好感度が上がっても言う事を聞きやすくなるだけだし」
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2000年 8月15日 火曜日
『プレイヤー<コトブキ>がスカルモンド地方のダンジョン15階に到達しました。現状の限界まで到達した事になります』
「それは構わんが、早いな。あそこは……ツインヘッドドッグ10体か。簡単には勝てん筈だが……まあ、彼なら突破はするか」
『5階のボス戦で手に入れた<オーク玉>を投げつけ、ツインヘッドドッグを昏倒させて倒しています。その所為でノーダメージで終わってしまいました』
「………アレを使ったのか。私もテストに参加したが、あれは人に耐えられる物じゃないぞ? よく彼は耐えたな。開発の一部が自然界に存在する素材をわざわざAIに調合させてまで生み出した物だ。ある意味で兵器と言っても過言じゃないんだが」
『プレイヤー<コトブキ>が鋭角牛の角を使って武器を作成しています』
「それは到達出来た者の特典だから構わん。現状では容易に手に入って優秀な武器の元となる素材だ。彼なら十分に活用するだろう。それに今プレイヤーマーケットに流しても、高くて喰いつかんさ。まだまだプレイヤーは金を持ってない」
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2000年 8月16日 水曜日
『プレイヤー<コトブキ>がハイ・トラップボックスを倒し、レアアイテムであるハイ・トラッパーウィップを手に入れました』
「初めて倒す者には渡るようになってるからいいんだけど、彼には鞭を使う仲間が居ないから姉の方に渡すでしょうね。まあ、修理も出来ない武器だから壊れたら終わりだけど、それまでは活躍するんじゃない? って感じね」
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2000年 8月18日 金曜日
『プレイヤー<コトブキ>が全プレイヤーの中で、初めて基礎スキルを習得しました』
「ほう。彼にしては遅い気がするが、ようやく大事な基礎に気付く者が現れたか。まあ、それが彼だったというのも面白い話ではあるのだがな。1つ1つしっかりと聞いて認識し、丁寧に覚えていかないとスキルとして発現しないようになっているのが基礎スキルだ。それにしても彼が、か。おそらく周囲以外には話すまい」
『掲示板に介入致しますか?』
「いや、放っておけばいい。先行者利益は気付いた者の特権だ。こちらがそれを毀損する訳にはいかん」
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2000年 8月20日 日曜日
『プレイヤー<コトブキ>が運営ダンジョンの初回攻略者となりました。スキル【昏睡眠】はプレイヤー<コトブキ>が得た事になります』
「あらら。他に攻略してる子達も居たんだけど、やっぱり通常ダンジョンも15階まで攻略してる彼には勝てないかー。まあ、順当なところだと思うし、【昏睡眠】は色々アレなスキルでしかないからいいけど」
『完全に回復しきるまでは、何も出来ない無駄な時間を過ごす事になるスキルです。仮に他の者が習得しても、使わなくなると思われます』
「まあ、最初は通常の回復時間を1厘短縮して、回復量の1厘増加だっけ? 1厘って0.001だもんねえ。ある一定のレベルから加速度的に増えていくけど、そこまで育てないでしょ。暇じゃないんだし」
「それでも回復時間が短縮されて、回復量が増えるなら使う気がするけど? 彼ってそういう事しそうだし。だからこそ色々やらかしてくれてるんだと思うよ? しかもあれ、レベルが上がるのが早いスキルだからさ」
「………」




