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0095・運営さん達05




 2000年 8月7日 月曜日



 「さて、アップデートも無事に終了したし、特にバグ報告も無しと。とりあえず今のところは平穏無事に進んでるけど、何かしらの不具合は出そうね。それにしても、早速お菓子に群がってる連中の多いこと多いこと」


 『どの食品が売れているかのデータはとれているので、提出するデータに問題はありません。ただ各々のプレイヤーの状況、環境により食べる物は異なると思われます』


 「まあ、それはねえ。今日の気分で食べる物を決める人も多いし、しょうがないわよ。ほんの僅かで手にとってもらえるかどうかが変わる。食品関係のお仕事って大変よねえ。まあ、私達も他人事じゃないんだけど」


 『プレイヤー<コトブキ>が使い魔にお菓子を与えています』


 「え? ……ああ、本当だ。特に問題無いから放っておいていいわよ。別に能力が上がったりする訳じゃないし、ゲーム内通貨でお菓子が買えるだけだしね」


 『使い魔<ラスティア>の好感度は急激に上昇していますが?』


 「………うん、問題ないわ。使い魔の好感度は離反するかどうかでしかないし、彼は使い魔に命令しないからね。こっちが用意してた離反イベントとかブッ飛ばしてくれてるから、その辺りはもう諦めてる。だからスルーしていい」


 「彼は相変わらずこちらの想定をスルーしてくれるねえ。離反しかけて慌てて関係を修復、そうやって使い魔のありがたさを教える筈が、ひたすらに好感度を上げ続けるだけかー。上限は設定してないけど、離反イベントなんて絶対に起きない数値まで上がってるね」


 「本当にね。ここまで上げてどうするの? っていう勢いで上げてるわよ。まあ、その辺りは好きにしてもらっていいんだけど。どうせ他の連中は離反イベントを1度は起こしてくれそうだし」


 「………ああ、これは起きるね。特に随分細かく指示してる奴は離反するんじゃないかな? そうなると自由になる。暴れるのか、それとも違う誰かがゲットするのか。その辺りは好きにしてくれていいんだけど……七大罪のうち出て来てるのは【色欲】と【強欲】と【嫉妬】か」


 「それも、何とも言えないところなのよねえ。1番離反の可能性が高いと思ってた【色欲】が1番離反しないっていう、こっち側の想定を完全に覆してくれてるからさ。この後もおかしくなるかも」


 「七美徳の方? 天使の星の七美徳も封印されてるけど、これは対となる形で休んでいるだけだから、七大罪の封印が解除されてる以上は目覚める。それは当然予定に組み込まれてるんだけど、【色欲】に対する【純潔】は……コレ大丈夫かな?」


 「………これもしかして、【色欲】が居る悪魔の星に行こうとしてる? 今のところは2つの星を絡ませる予定は無いからいいけど、両方の星が絡み始めると絶対に【色欲】に突っ掛かるでしょ。何でこんな面倒な事になってんの?」


 『使い魔<ラスティア>の好感度が高い影響です。大人しくしている為、居場所が分からず右往左往しています』


 「「あっ!?」」


 「しまったな。離反の可能性が上がる程、相対する者の居場所が分かるシステムにしてたんだっけ? それで相手が暴れているかどうかを監視してる、んだけど……好感度が高過ぎて相手の行動が判断できなくなってるって事かー」


 「行動どころか居場所すら判断出来なくなってる。それを解消する為、悪魔の星に行って直接監視しようって事ね。本来なら七大罪を持つプレイヤーと、七美徳を持つプレイヤーで争わせる筈が……」


 「彼の好きにさせろ。七美徳も力尽くで手に入れられる以上、彼なら【純潔】も手に入れるだろ。放っておけばいい。どちらも手に入れる事は事前に想定されている。本来なら最終的にどちらもを手に入れる場合がある、という筈だったが、早くとも悪い事は無い」


 「いいんですか?」


 「彼なら象徴的な意味合いになってくれるだろう、両方手に入れる事も出来るというな。ならば他の連中も目指すだろうし、それで七大罪と七美徳は取り合いになる。そちらの方が盛り上がるだろうし構わん」


 「弟君から取ろうとするプレイヤーが居るんでしょうか?」


 「まあ……居るんじゃないか? たぶん」


 「彼に喧嘩を売る者が居るのかは疑問ですけどね。さっき掲示板の方を確認してたら、弟君のファンスレが出来てましたよ。検証班の女性ばっかりでしたけど、彼女らは推しに殺されたいそうですね」


 「「………」」


 「アバターデータがログイン直後の状態に戻されるが……まあ、それも楽しみ方の1つか。こっちが口を出す事じゃないから、何とも言えん」


 「まあ、弟君の場合は殺すとしたら武器を振るっての可能性が高いから、近くに来るでしょうしね。推しを近くで見たいというのは分からなくもないけど……」


 「それどころかキャラを再作成してネクロで始めようとする者も居て、相互監視状態になってるよ。何故か検証班が殺伐とする不思議な展開になって、男性陣が右往左往してるね」


 「女同士の争いに男は口を出せんからなー、怖くて。それはともかくとして、七大罪と七美徳はこのまま変更無しだ。変えたところで余計な齟齬が生まれる元だしな」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 2000年 8月11日 金曜日



 『プレイヤー<コトブキ>よりGMコールがありましたので対応しました。プレイヤー<アポロン>が難癖をつけ、プレイヤー<コトブキ>に謝罪や賠償をしろと騒いでいます』


 「はあ? ………いや、何度考えても意味が分からないんだけど。いったい何に対する謝罪と賠償なの? 意味不明過ぎて全く理解できない」


 『プレイヤー<アポロン>は、プレイヤー<コトブキ>の所為で所属会社を解雇されたと言っています』


 「はあ? いったいどういう事よ。ウチはこのままのプレイ状況を続行するなら、ログイン禁止措置を正式に続けるって向こうに話した筈よね? だから一時的なログイン禁止措置にしかなっていない筈。そのうえ、それもまだでしょ?」


 『はい。他の監視対象は自発的にログインしていません。つまり一時的なログイン禁止措置の通達後にも、プレイヤー<アポロン>はログインしています。そのうえキャラクターを4度作り変えて悪行度から逃れようとしており、最後には種族をゾンビにしました』


 「あーあー、そこまでして弟君に恨みを晴らしたかったの? 流石に慣例とはいえ、ログイン禁止措置が通達された後にログインしてるって、更に印象悪くなるだけなのにねえ。こっちは証拠を握ってるんだけど」


 「セントラル、<ゼウス>と<魔界王>と<美女軍団>の全員のアカウントを凍結しろ。所属会社の社長からこちらに連絡があった。向こうとしては<レトロワールド>から手を引くのと、<ゼウス>を全員解雇し解散させたそうだ」


 「解散!? 思い切りましたねえ。性格はクズですけど、弓の腕前はかなり良かった筈ですよね? 真面目にやらせれば復帰の目もあるような……」


 「連中は他のゲームでもやり過ぎた。もはや所属会社でも庇いきれんという事だ。言葉は悪いが、今までは弱小企業が多かったからお目溢しがあっただけ。しかしウチにまで同じ事をしたからな。唯でさえ<レトロワールド>はスポンサーが多いっていうのに」


 「スポンサーを頼みに行った営業が泡を吹いたと言われてますからね。何でどの企業も簡単にOK出すんだって。あまりにもOKが出るんで、営業が開発にクレーム入れてきたぐらいですし。本当に面白いゲームなんだろうな? って」


 「まあ、蓋を開けて大爆死だと営業のメンツが丸潰れだからなあ。こっちは粛々とやるとしか言えんが」


 「ですよねえ……」


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