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0893・第六回公式イベント 一日目 その10




 夕食後はマイルームに帰ってログアウトし、今度は現実での食事とする。

 色々と準備をしたり他の雑事を熟し、珠の両親が帰ってきたら夕食作りをスタート。

 童女と作りつつ、それが終わったら食事を始める。


 「そういえば予想より早かったけど、今日から新規募集の受付を開始したらしいわよ?

 そんな事が運営からのお知らせに書いてあったから」


 「なんでこの時期なんじゃと思うも、この時期だからこそか。

 今は公式イベントの最中じゃし、公式イベントに関しては新たに始めた者の強さの関係ないイベントじゃ。

 それでかもしれんな。

 上手く公式イベントをクリアすれば、最初からの弾みとなる」


 「最終的にポイントが多ければ、なかなか良い物と交換できるもんね。

 そうなると最初から一気に飛ばせるでしょうよ。

 <レトロワールド>は装備制限とか無いし。

 ……あ、そういえば新たに募集するのは10万人みたいよ」


 「ここへ来て一気に増やすのう………

 それでも入ってくると考えておるのであろうが、相当の増員と言えるがな。

 耐えられるだけの増設をしたか、それとも最初からこの程度の数は予想しておったのか。

 果たしてどちらであろうな?」


 「駄目ならそれらの機器は次のゲームに使われるんだろうし、元からなんじゃないの?

 20万人って考えると多いけど、人気ゲームってそれぐらいログインしてるわよね?」


 「珠の記憶ではVRで20万は多いと思うぞ?

 月毎に払うておるし、それにスポンサーも沢山ついておるらしいしの」


 「あ、スポンサーで思い出したけど、新しい味を真っ先に<レトロワールド>で出すみたいな記事もあったわよ?

 なんでもVRで人気になった商品は、実際に商品化するんだってさ」


 その童女の一言に、珠の父親が納得顔で話す。


 「VRなら簡単に作れるんだから、それは分かるな。

 VRで配合を幾つも試して開発、それをVR内で商品として売り出す。

 そこで人気になれば現実でも買われる可能性は高いだろうしね。

 そっちの方が開発コストを下げられるだろうさ」


 「何度失敗してもVRだもの、痛くも痒くも無いでしょうしね。

 それに、案外世に出なかった味もVRなら売り出されるかも。

 実際に工場で製品として作られる訳では無いし」


 「そういえば工場で作られる事も無く消えていった味があるらしいしの。

 そういうのもVRであれば実際に売り出して様子見が出来るであろう。

 案外と訳の分からん物が売れたりするしの、人の世というのはよう分からん事が起きるものじゃ」


 「まあ、それはね」


 そんな話の夕食を終えると、雑事と後片付けを終わらせ風呂に入る。

 その後は全て終わらせて珠の部屋へ。

 そして寝るだけにしたらログイン。

 公式イベントに再び入る前に、色々とせねばならん事を終わらせる。


 プレイヤーマーケットに売りに出したり金銭を回収しておると、情事が終わったのか2人が出て来た。


 「お腹減ったわねえ。

 寝て起きてを繰り返してたから、中途半端な時間に食事に出る羽目になっちゃったわ」


 「色々とスッキリしましたけど、休日の使い方としてはアレ過ぎますからね。

 明日は訓練場で汗を流したりしましょうか」


 「そなたら、このような時間まで乳繰り合っておったのか。

 大変というか何と言うか、よくもこれほど長時間しておるものじゃ。

 それより食事や食べるものは倉庫に入れてあるので好きにせい」


 「あらら、ナミが居たのね。

 聞かれてても特に問題は無いんだけど」


 「変な話などせぬであろうし、するなら部屋の中じゃろ。

 それより既に夕食も終わっとるでな。向こうには連れて行けんぞ?

 妾も倉庫の片づけが終わったら、再び公式イベントに入るからの」


 「そっちは好きにして。私達は長い休日だと思ってるから」


 「本当に長いといいのですが、いつか終わるんですよね」


 「終わるからよいのであろうが。終わらねば唯の退廃じゃぞ……」


 「まあ、そうなんですけどね」


 「そうねえ。私は悪魔だから、退廃に誘う側なんだけど……」


 駄目だこいつら、普通に認めおった。

 本当に好きにせいとしか思わんの。


 それはともかくとして、倉庫の片づけが終わった妾は個室へと戻って公式イベントを始める。

 今は夜じゃからそこまで長くは出来ぬが、火の短剣を調べるのと多少のお金稼ぎは出来よう。


 妾は王の下を辞すると、足早にオータムの町まで行く。

 そしてそこから南に行き、まずはゴブリンチーフに接触した。


 「さて、火の短剣はどれぐらいの威力なんだろうね。

 それを確かめ………そういえば、短剣って片手武器か」


 アマロにも語ったが、両手持ちと片手でダメージに差が付いておるかもしれん。

 となると短剣は攻撃力は高くとも、与えるダメージが低い可能性がある。

 そこに注意して使わねばならんな。場合によっては青銅の剣の方が強いかもしれん。


 妾はゴブリンチーフに近づいて行くが、相変わらず一定距離に近づくと投げナイフを投げて来る。

 妾はそれを回避し、短剣で弾きながら近づく。

 短い分だけ取り回しは良いのじゃよなぁ……


 近づいた妾は殴りかかって来たのをかわすと、喉へと一撃を見舞う。

 しかし当然ながらクリティカルは無い為、死ぬ事は無かった。

 もちろん理解しておる妾は追撃を加え、3度の攻撃であっさりと倒す。

 という事は、両手と片手は関係ない?


 しっかりと攻撃が出来ておるかどうか、という判定しかしておらんのか?

 となると……


 妾は完全に手打ちでしかない攻撃で素早く切りつける。

 すると4度の攻撃でゴブリンチーフを倒した。


 「これは本当の手打ちで連撃を加えたから?

 それともランダム幅で4回になっただけ?」


 妾は6体居たうちの2体で実験した後、投げナイフを回避して再び完全な手打ちの連撃を加える。

 すると今度は3度で倒せたので、完全な手打ちでも問題ないと判明。

 今までの攻撃でも妾にとっては手打ちだったというのに、これでも大丈夫なのか……


 「流石に攻撃の判定が甘すぎるんじゃないかな?

 この程度の手打ちでさえ、しっかりとダメージが出てるってさ。

 レトロワールド本編の判定と違い過ぎる……」


 逆を言えば、向こうはしっかりと振れていなければダメージが出んという事でもある。

 道場などもあるので正しい振り方などは習えるからの、素人でも練習すればある程度は出来るであろう。

 それとは違うが……


 「これはアレだ。古いJRPGを基準にしてるから、こんなにアバウトなんだな。

 レトロゲームは判定がガバってるのが多いから、そういう意味で判定が甘いのであれば納得できる………か?」


 とにかく判定がガバいのは間違いないので、面白くなった妾はドコまでガバいのか真面目に検証する事にした。

 その結果、相当に酷くない限りは攻撃として通じると判明。

 故に最速を考えて行動する事に切り替える。


 「力が乗ってなくても、攻撃してあればダメージが出るとは思わなかったよ。

 となると、当然最速で行動するに決まってる。

 誰だって気づけばこうなるだろうけど、これも攻略法の一つかな?」


 妾は力を乗せる事もなく、最速での連撃を意識して繰り出す。

 攻撃と判断される最低限の攻撃を連続で行い素早く離脱。

 かわしたら再びステップインして連撃を開始。あっさりと残りを片付けた。


 今だけの動きじゃが、染み付いた妾の元々の動きが無くなるなどという事は無い。

 この程度で無くなるのは素人だけよ。

 刻み付けた動きは何も変わらぬが、意図的に最速だけを目指すのも面白いといえば面白い。


 力の乗りや手首の返しなど、全て無視して最速だけを行えばよいのだからの。

 こんな事は実戦で絶対にせぬ。せぬからこそ妾もやった事の無い分野なのだ。

 もしかしたら新たな発見があるやもしれん。


 故にこれは無駄ではあるまい。


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