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0817・運営さん達44




 2001年 1月28日 日曜日



 『本日より運営ダンジョンの48階に出現するクリムゾントータスから取得できる経験値がゼロになります。そして代わりに火炎龍樹が追加されるようになりました』


 「皆、よく頑張ってくれた。本当にお疲れさん。まさか彼がああも簡単にクリムゾントータスを倒すとは思わなかった。【スタンボール】の方の設定は変えると広範囲に影響が出る。なのでこういう形にするしか無かった」


 「まあ、取得経験値ゼロはそこまで難しくありませんからね。そもそも暗闇ダンジョン用に既に作ってある設定ですし、それを流用すればすぐに済みますから。しかし木材の火炎龍樹を置いても良かったんですか?」


 「こちらが意図しないものを“修正”したんだ。お詫びの品ぐらい渡さないといけないだろう? 倒せる者は倒せるし、出回るだろうがな……。結構な値段がするし、早々に乱獲出来るようなモンスターじゃない。飛び回るし、動き回るんだ」


 「確かにそれはそうですけど、経験値を与えたくなかった人物は乱獲すると思いますけどね? それはいいので?」


 「それは今に始まった事じゃない。彼に関しては特異点だと思えば済む。前にも言ったが、そんな特異点を中心に考える訳にはいかん。そんな事をすれば、大半の者が楽しめない苦行にしかならないからな」


 「まあ、そうですね。となると火炎龍樹に関しては、彼は例外で他のプレイヤーに対するお詫びですか。彼にとってみれば、木材が手に入るようになっただけと言えますね」


 「それで良いとは思うがな。彼もまた一人のプレイヤーだし、そこは尊重せねばならん。ナーフし過ぎてつまらんゲームだと思われても困るし、そもそも彼の場合は違い過ぎて大半のプレイヤーが諦めている」


 「同じ事が出来ない以上は諦めるしかないですからね。そもそも彼と同じ事をしようとしているプレイヤーも居ますけど、細かい所の技術力というかレベルが違い過ぎますから。AIに調べさせても完璧に限りなく近い動きじゃ、どうにもなりません」


 「あれはまさかだったな。まともな人間であればあるはずのブレ、それが彼の場合は極めて少ない。ほとんど完璧とも言える動きをしているんじゃ、一般人とは違い過ぎる。学生の大会にオリンピック選手が紛れているようなもんだ」


 「実力を見れば反則なんですけど、その大会への参加制限は、下の年齢しか無いんですよね。ほとんどが参加オッケーである以上は違法でもなんでも無いですし」


 「そうなんだよ。そして学生じゃなくオリンピック選手を基準にしてもな………学生がボイコットするだけだ。そんな大会に何の意味がある? 意味など全く無い」


 「だからこそオリンピック選手は放っておくしかない。本当にコレしかないんですよねえ……。ありがたい事に気にしていない者が多いですし、それなりの人数には好意的に受け止められています」


 「代わりにプロゲーマーの諸君が息をしていないがな。あれだ、一般プレイヤーが中等部から高等部なら、プロは大学選抜ぐらいだろう。それぐらいだと考えれば、オリンピック選手に勝てないのも分かる」


 「むしろ大学選抜だからか、オリンピック選手に対して「スゲー」って言ってますからね。思わず「子供か」と言いかけましたよ」


 「彼らプロも、たまにはそういう気持ちになれていいんじゃないか? それが気に入らない連中は辞めていってるしな。とはいえ聞いた話じゃ、別のゲームでも彼の事でイジられているらしいが……」


 「<タイムクエスト>ですか? 彼らはそもそも<レトロワールド>との相性が最悪に近いですからね。効率厨のグループですけど、そもそも最高効率を編み出す為の情報を開示していませんし」


 「マスクデータだらけにしてあるからな。ダメージすら出ないのは不親切だとか言っていたが、リアルを謳ってダメージ値が出る方がおかしかろうという話だ。まあ、ウチはリアルを謳ってはいないんだが」


 「そんなゲームしか出来ないと証明したようなものですけど、最高効率を提示するのが彼らの商売ですからね。そういう人達が彼らの動画をお金を払って見るんですし」


 「だが制作側からしたら、最高効率でみんな同じとか、救い様が無い荒廃した世界にしか思えんがな。勇者でも救えないだろ、そんな世界」


 「あっちもこっちも同じ装備に同じスキル。戦術も戦略も同じで、個性が無い。確かに勇者も救い様が無いですね。ていうか、勇者も救おうとはしないでしょう。そんな蟻」


 「揃いも揃って働き蟻みたいな姿だと思えば、確かに間違って「そろそろ仕事をお願いします」はいないな。っと、すまん」


 『プレイヤー<コトブキ>が強制ログアウトをしました。精神的なショックが理由と思われます』


 「「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」」


 …

 ……

 ………


 「で、コレが問題のシーンか。いったいどういう事だ? サッパリ分からないんだが、なんでこんな事になった? そもそも彼が知り合いを殺す理由は無かろう。さらに言えば五條のお嬢さんも、おかしな発言をしているぞ?」


 「いきなり話し方が変わっていますし、その言葉の後で首を捻って殺害。一瞬の早業ですし、彼の顔が凶悪な笑顔なんですよねえ。この顔とんでもない」


 「言いたい事は分かるが、口には出すな。なんか怪しい女性社員が何人かいるから」


 「彼ってそもそも美形なんですけど、その美形が猛烈に恐怖を感じる笑顔なんですよ。背筋がゾクゾクしてくるんで、それにやられる女性が居るのは同じ女性として分かります。ええ、そんなものです」


 「あー、うん。分かったから、そこから離れろ。とにかくだ、彼は五條のお嬢さんの一言でいきなり殺害、その後に殺害そのものを理解できずに強制ログアウト。これで間違いないな」


 「ですね。何が起きたか未だに不明ですが、起きた事を判断するとそれだけです。ですので誰に瑕疵(かし)があるのかと言っても……」


 「誰にも問題は無いな。そもそも五條のお嬢さんのセリフがおかしい。今まで「下郎」なんて言葉、使った事ないだろう。それが急に言い出したんだ。まるで別人に乗っとられたみたいにな」


 『プレイヤー<コトブキ>が復帰しました。特にバイタル等に問題は見られません』


 「そうか。ちょっと彼の所を映像に出してくれ。確認しておかねばならんだろう。精神的な事とはいえ、こちらに警察が来て事情聴取という可能性もゼロじゃないんだ」


 「特に彼の様子が変だという感じに、は?」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 「………私の耳が変になったのかな? さっき「イザナミ」って聞こえたんだけど……」


 「ちょっと待て、彼の肉体に神が降り、はいぃぃぃぃぃぃ!? 昔から神が降臨しているだと!?」


 「…………なーんか嫌な予感がしてきたなぁ、私。これってドッキリとか下らない事じゃなくて、事実である可能性が高いんじゃないの? だって彼が住んでいる所って白山だし」


 「………白山といえばイザナミか。もしかしてイザナミに関わりある白山とは、彼らが住んでいるあの白山だった?」


 「ああ、<黄泉津大神(よもつおおかみ)>ってハッキリ言ってる。これは間違いない気がするけど、現実問題として彼の妄想だとするしかないのよね。どう考えても、私の全てが「あれは神だ」と叫んでるけど」


 「奇遇だな。私も私の全てが「あれは神だ」と叫んでいるよ。むしろ多くの私がデスメタ風にシャウトしながら叫んでいるね」


 「物凄く分かり難い例えを、ありがとうございます。それにしても、それが事実だったとした場合に何が問題になりますかね?」


 「そもそも神が人間の肉体に降臨。まあ、この場合は神降ろしになるのか? そうなったところで誰も証明できないからな。問題は何も無いんじゃないか? 一般論だと、急に自分が神だと言い出した痛い子というぐらいだろう。一目見たらそうは思わんがな」


 「ええ、間違いなく神だと認めるでしょう。何というか、有無を言わせない説得力があるんですよね。何の根拠も証拠も無いのに……」


260715の投稿は815話となります。投稿を忘れていて申し訳ございませんでした

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