0076・フィーゴと【憑依】
青銅の物をまずはインゴットにしていく。魔力が厳しいので出来るかは分からないが、まずはやってみよう。
………出来るには出来たんだけど、まさか1回で魔力が殆ど空になるとは思わなかった。その所為でこれ以上は何も出来ない。仕方なく後は回復に努めるも早く呼ばれた為、夕食をとってログアウトする。今日はここまでだ。
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2000年 8月15日 火曜日
今日もログインするんだけど、したらすぐに【ゴースト】を召喚しないとね。せっかく新たに召喚できるようになったのに、召喚登録だけで精一杯だったからなぁ。とにかく新たな仲間だから歓迎しないと。
ログインした僕はお腹の上に居るギンを横にどけ、起き上がると召喚を始める。【ゴースト】の召喚には2割ほどのMPが必要だったが、初回だからしょうがない。
「お前はフィフス・ゴーストだからフィーゴだ。宜しく、フィーゴ」
「………」
当たり前といえば当たり前だけど、フィーゴはゴーストなので喋れない。そのうえ能力値は物凄く微妙としか言えなかった。一部を除いては。
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<フィーゴ>
ゴースト Lv1
※能力
力:1
耐久:1
魔力:7
精神:7
敏捷:1
器用:7
※スキル
【憑依】
※装備
なし
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<特殊スキル> 憑依
仲間に憑依する事で特定の能力値を向上させられる。憑依する時と解除する時に自身のMPを消費する
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試しに僕に【憑依】させたのだが、その際の能力値がこれだ。
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<コトブキ> 【憑依】
※種族・職業
種族:魔人(♂) Lv24
メイン職業:ネクロマンサー・下級 Lv10
サブ職業:錬金術師・下級 Lv7
※能力
力:15
耐久:15
魔力:21+2
精神:18+2
意志:15
敏捷:16
器用:15+3+2
感覚:16
魅力:5
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魔力などの能力値が増えているので、今から行う作業にとってフィーゴは非常にありがたい。おまけに魔法の威力も上がるので、ネクロマンサーにとっては非常に都合が良い。ここまで優秀な仲間なら待たされた甲斐があったってものだ。
とりあえずファルには台所に手伝いに行ってもらい、その間に昨日の青銅製の武具を全て素材にする。その後ファルの武器を作ってみたのだが、やはり青銅は優秀だった。
ついでにセナのトンファーとヌンチャクを作ったところで素材が尽きたけど、セナは気に入ったらしく振り回してる。危ないから止めてほしいんだけどなあ。
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<棍棒> 青銅の狼牙棒 品質:3 レア度:1 耐久270
棍棒の先にトゲが沢山付いた武器。類似の武器は沢山あるので珍しくはない。
攻撃力9 破壊力3
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<格闘> 青銅のトンファー 品質:4 レア度:1 耐久240
カタカナの「ト」のような形をした攻防一体の格闘武器。元は農具から派生したと言われるが、真偽の程は定かではない
攻撃力6 破壊力2
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<格闘> 青銅のヌンチャク 品質:4 レア度:1 耐久250
2本の棒の間を縄や鎖で繋げた武器。元は農具と言われるが、真偽の程は定かではない。暗器として使われてきた過去がある
攻撃力6 破壊力3
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サブ職業:錬金術師・下級のレベルが上がりました
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とにかく耐久が高いという事もさる事ながら、このゲームは材質で耐久力も変わるみたいなんだ。なので石と木と同じ耐久力じゃないだろう。しかし、フィーゴが【憑依】してくれていて狼牙棒の品質が3かぁ……。初めて青銅を扱うとはいえ厳しい。
朝食に呼ばれたので食堂へ移動すると、師匠からツッコミを入れられてしまった。
「ほう、ゴーストを召喚出来るようになったか。【憑依】させたままなのは良いが、あまり頼りにし過ぎぬようにな? 能力の加算に慣れ過ぎると、己の実力を引き上げようとせぬようになるからの」
「あんたが本気出す時の姿も同じなんだから微妙な話よねえ。まあネクロマンサーにとっては重要な姿とも言えるけど。………ん? コトブキの使い魔な訳だし、もしかして私も【憑依】を受けられる?」
「む………ふむ、可能じゃの。そのゴーストとのバスはコトブキを通して繋がっておるので問題無い。しかしそなたは<踊り子>であろう。もちろん他にも色々出来るのは知っておるが、魔力がそこまで関わるのか?」
「【魅了】や【誘惑】は魔力も関わるのよ。もちろん相手の精神状態も重要なんだけどね、それでも魔力を伝播させるから、割と魔力を消費するの。それでも魔法よりは使わないけど。それに、そろそろ魔法も覚えなきゃ駄目ねえ」
「あっ、【浄化魔法】。私も忘れてたけど、あんたも忘れてたでしょ。ダンジョンに行く前に頼むわよ。あの魔法、綺麗にしたり出来るし便利そうなのよね」
「ふむ。アンデッドには【光魔法】か【浄化魔法】じゃからの。とはいえ【光魔法】はのう………どうしてああも自己主張が激しいのか、理解に苦しむわ」
「ピカピカ鬱陶しいのよねえ。昔、天使の星に金ピカの武具を着けて【光魔法】を連発する騎士が居たわよ。<黄金の騎士>とか呼ばれてたかしら? あまりにも痛々しいから、【魅了】してブッ殺したけど」
「ああ、そういえばそんなヤツおったのう。あまりにもバカバカしいうえに、大した実力も無かったのを覚えておる。<深淵の魔女>はその真逆じゃの。アヤツは今でも、黒く影があるのが格好良いと思っておるしな」
「アレって間違いなく不治の病よねえ、関わらないのが一番よ。周りに何を言われたところで気にしないし、むしろ陰口を嫉妬と認識する連中だもの。どうにもならないわ」
<深淵の魔女>はまさかの厨二病患者だったのか。色々アレ過ぎるけど、僕も関わらないようにしよう。誰かが弟子になるんだろうけど、きっと同系統の人だろうから余計に関わらない方がいいね。厨二病が2人とか嫌すぎる。
朝食を終えた僕とトモエは、準備をしてから師匠の家を出発する。ダンジョン街に着いたら昼食を購入し、迷宮魔法陣で11階へ。今日はここから15階のボスへと向かう。最近はどんどんとレベルが上がっているからか、夜は細工の方のレベル上げをしているみたいだ。
順調に攻略していくものの、ついに攻略できていない14階に辿り着いた。ここからは地図を描きつつ進んで行く必要がある。それにしても壁から大量にゴーストが向かってくるので、まずはゴーストを間引いてからだ。
ちなみにフィーゴは僕がどれだけ【浄化魔法】を使っても苦しんだりしないので、やはり召喚モンスターと瘴気アンデッドは根本的に違うのが分かる。トモエとギンも【セイントバレット】を連発しているが、ギンが覚えたのは自分からだ。
何故か見よう見まねで使い始め、至極あっさりと【浄化魔法】を覚えたらしい。トモエは「天才!?」って言いながら喜んでたけど、【浄化魔法】で構われるのが嫌だからだと思うよ?。
自分で使えればトモエに頼まなくてもいいしね。
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召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
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レベルが低いからっていうのもあるんだろうけど、レベル1からだと本当にポンポン上がるね。ゴースト系統は【憑依】ありきだからか、敏捷がまったく上がらない。魔力系統のスキルを覚えさせた方がいいかな? そっち方面にしか育たなそうだし。




