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0049・第一回公式イベント05




 このイベントも中盤の様相を呈してきたのか、徐々に人数が減ってきた。既に4回死亡して出された者達が居るんだろう。そんな中、僕達のように一度も死亡していない者も居る。まあ、僕達の場合は死ねないというのもあるし、生き残るしかない。


 僕達が死ぬと大幅に戦力ダウンして、ラスティアを守れなくなってしまうしね。そういう意味でも死ねないんだよ。ただ減ってきた数を考えると、ここから見える範囲では天使の星の方が少ない気がするなー。……今の内に教えてもらおう。


 僕はドースの馬上にいるラスティアに、とある魔法の魔法陣を教えてもらう。ラスティアは僕がそれを使用する可能性を考えているらしいが、向こうがこっちを見ていないうちに教えてくれるかな?。



 「まあ、たいした魔法じゃないから教えてあげるけど、それを使う可能性があるって事ね?」


 「そう。その時が来たらラスティアも遠慮なく使っていいよ。追い込まれている陣営がやる事なんて、古今東西1つしかないからねえ」


 「ああ……成る程。大将首を獲っての敵軍の瓦解を狙うでしょうね。それに内容で負けていても、敵の大将の首を獲れば「勝った」と言い張れるもの。昔から変わらない事よ。その所為で歴史書が二転三転するのよねえ。当時を知っている者からすればバカバカしいんだけど」


 「そりゃ、そうだろうね。僕としては追い詰められたら一騎打ちを挑んでくると思うんだ。それが一番勝率が高いからね、特に追い込まれている状況だと」


 「つまり、受けろって事ね。面倒臭い事を言い出してくれるじゃないの?」


 「とはいえ、ここで活躍すれば相当目立つよ? <狂性のラスティア>ここにあり、って大悪魔に見せられるんじゃない?」


 「………はぁ。分かったわ、その役受けてあげるわよ。その魔法を教えてくれって言ってきたって事は、突っ込む気マンマンだしね。援護してくれるんでしょ?」


 「心配しなくても、ラスティアを死なせたりしないよ」


 「………そ、そう///」



 さーて、後は向こうがそれを提案してくるかだけど……仮に提案してこなくても、ラスティアが教えてくれた魔法で一度は大混乱が起こせるだろう。ふふふふふ、僕達の勝ちはこれで揺らがないね。


 おっと、いけない、いけない。勝利するまで気を緩めちゃ駄目だ。喜ぶのは勝ってからでいい、ここから逆転されて不利になる可能性だってあるんだ。


 それにしても、僕はラスティアを守らなきゃいけないけど、皆は前で戦ってるなー。ちょっと楽しそう。


 僕もそうだけど、シズ達も一度も死んでない。このイベントではデスペナルティを受けないから死んでも問題無いんだけど、何だか嫌な予感がするんだよね。師匠とラスティアの話で、死ぬと肉体が忘れるってあったし。


 このイベント中も死亡はしない方が良さ気だ。っと流石に後ろに居すぎるか、少し前に出よう。そう思って前に出たんだけど、どうやら悪魔の星の皆は結構押し込んだらしく、それなりに前に出ても大丈夫そうだ。


 なので前に出ていき、射程ギリギリぐらいで敵に【ダークバインド】を使う。フォグも【アースバインド】を使って地味に敵に嫌がらせをしている。セナはつまらなさそうにしているが、ファルはドースの右前に居て矢などを警戒中だ。


 セナも見習ってほしいものだが、暇なのは仕方ないか。ドースも暇そうにしているが、それでも気を緩めてはいない。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 終盤。随分数が減った相手は、遂に僕達の予想通りの行動に出てきた。



 「こちらは天使の星の大将<仁王>だ!! 悪魔の星の大将に一騎討ちを求める!!」


 「てめーらが負けてるからって、急に都合の良い事言い出してんじゃねーよ! このまま勝負かけるに決まってるだろうが!!」


 「「「「「そーだ! そーだ!」」」」」


 「黙れ!! 三下!!! うぬらになど聞いておらんわ!!!」


 「「「「「………」」」」」


 「こちら悪魔の星の大将<狂性のラスティア>よ。そちらの提案を受け入れましょう」


 「かたじけない! 正々堂々、全力で挑ませてもらう!!」



 そう言って両者は前に出る。ラスティアはドースから下りて前へ、向こうは背負っている剣を鞘から抜いて前に出てきた。両者は5メートルくらい離れた場所で立ち止まり、相手を見据える。


 少しの間があった後、両者は弾かれるように前に出た。仁王は肩に剣を水平に置くスタイル。おそらくは肩や背中の筋肉で跳ね上げる気なんだろう。昔からそういう一撃必殺系の剣術はあるらしいし、間違ってはいない筈。


 僕の予想通りに振り下ろしてきたけど、当然ラスティアも予想している。急激にブレーキをかけて立ち止まると、目の前を剣が素通りする。その直後一気に敵に加速。とはいえ仁王もそれを予見していたのか素早く横っ飛びで離脱し、立ち上がると同時に剣を水平に振る。


 しかしラスティアは動かず、相手の攻撃を待っている。基本的にラスティアは一気呵成に攻める時以外は、自分からは動かない。回避に自信があるのか、そういう戦い方をしてきた証だろう。両者は再び睨み合いをはじめる。


 ジリジリと動きつつ、自分に有利な形を作っていき……再び弾かれたように突撃する。2度3度と繰り返し、再び相手の隙を探しつつも自分の形を作っていく。仁王は必死だが、実はラスティアには余裕がある。仁王が気付いてるのかどうかは分からないが。


 再び両者は前に出て、仁王は脇構えから水平に振り抜いてきた。当然ラスティアは殺傷圏内に入らずに止まるが、そこに矢が高速で飛んでくる。ラスティアは腕で無理矢理受けて防ぐも、天使の星の連中は一気に攻めこんで来た。



 「なっ!? 矢が飛んできただと!? まさか<アポロン>か! ふざけた真似をしおって!!!」



 僕は予想通りになった事を一人ほくそ笑みつつ、素早くドースと駆けていく。すぐにラスティアの下に着いた僕は、ラスティアを強引に身体強化で持ち上げてドースの背に乗せる。そしてドースに【疾走】を使わせてすぐに離脱させた。


 仁王は何とも言えない顔をしているが、僕にとっては予想通りの展開だ。一気に襲ってきた天使の星の連中をギリギリまで引きつけた僕は、ラスティアから教わった【ダークウェーブ】の魔法を使う。おそらくまだ誰も使えないであろう範囲魔法だ。


 前方180度に広がる攻撃魔法で、そこまで大きなダメージは無い。ただラスティアいわく、この魔法は障害物や他者を貫通するので使い勝手は悪いらしい。何故なら味方にも被害を出すからだ。とはいえこの状況では非常に都合が良い。


 僕が発射した魔法は突っ込んできていた天使の星のプレイヤーに大混乱を与えた。そして僕はもう1度【ダークウェーブ】を使い相手の勢いを弱めたら、一気に先ほどの弓使いの下へと走る。今日ずっと手出しをしてきていた奴だって分かってるんだよ!。


 弓使いは慌てて周りの連中に助けを求めているが遅い。僕は3度目の【ダークウェーブ】を使い周囲の盾士にダメージを与えると、一気に跳躍して弓使いに棒を振り下ろした。その一撃で弓使いは死亡したが、僕は構わずに前に出る。


 そのまま【身体強化】を使いつつ走って行き、天使の星の復活ポイントに突っ込む。光が出てきているので分かりやすい。その直後、さっきの弓使いが現れた。今の僕の顔はきっと満面の笑みだろうと思う、それが自分でも分かるんだ。


 お前はさっさと死ね!。



 「ケェェェェェェェェ!!!!」



 裂帛れっぱくの気合いを込めて棒を振り下ろし、全力で頭をカチ割ってやる。イケメンに作ったアバターの美貌が恐怖で歪むのは、実に楽しいねえ。


 お前はここで死ね! 今すぐ死ね! ゴミどもは死ね!。


 全ての思いを込めて光から現れる奴等を殺し続ける。


 ああ、これこそが戦場の殺し合いだ。無意味で無価値で惨たらしい死体の山。素晴らしき哉、僕と同じ醜きニンゲン。


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― 新着の感想 ―
これはやばいぞ戦場に飲まれてる
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