0039・古の悪魔とタヌキ
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種族レベルが上がりました
メイン職業:ネクロマンサー・下級のレベルが上がりました
召喚モンスター:ファルのレベルが上がりました
召喚モンスター:セナのレベルが上がりました
召喚モンスター:ドースのレベルが上がりました
召喚モンスター:フォグのレベルが上がりました
おめでとうございます。召喚モンスター:フォグは進化が可能です
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「お前の所為で……私は、こんな……」
「あっ、そういうのどうでもいいんで。使い魔だっていうなら、さっさとついてきてくれる? 急ぐよ」
「えっ? あっ、ちょっと待ってよ」
僕達は急いで中層を出る。このまま話していて魔物に襲われたら堪ったもんじゃない。それにフォグの進化が可能になったんだ。残念ながら君の話につきあってる暇は無いんだよ。急いで脱出しなきゃならないんでね。
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「ふう、やれやれ。あのまま中層に居たら殺されてたかもしれない。帰り道で魔物が出なくて良かったよ。それはともかく、フォグ! 種族進化をしようか?」
「ワン!」
「ちょっと待ちなさい! ついてこいって言うからついてきたんでしょうが!? まずは説明しなさいよ、ここはいったい何処なの!?」
「ここは<屍人の森>だよ。ブラッディアという国にある、スカルモンド地方。そこにある森。瘴気が集まってる所為で野良アンデッド? 瘴気アンデッドが出てくる森だよ」
「そんな陰気臭い所に住んでるなんて、あんた世捨て人? ネクロマンサーだし分からなくもないけど、一人孤独に居たら頭おかしくなるわよ?」
「失礼だね、まったく。そもそも師匠が居るから1人じゃないよ。それよりちょっと静かにしててくれる? フォグの進化だからさ」
フォグが楽しみにしてるのに、いちいち五月蝿い所為で機嫌が悪くなってきてるんだよね。よしよし、早速進化先を見ようか。
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・ハイゾンビドッグ:ゾンビドッグの上位種。鼻が効き、敵を見つけ出す能力は更に向上するものの、攻撃方法は噛み付きぐらいである
・スケルトンウルフ:スケルトンになったもののウルフ種に進化。強い嗅覚と鋭い牙を持つが、打撃に弱くなってしまう
・ゾンビフォックス:ドッグ種からフォックス種に進化。嗅覚は変わらないが、反面【火魔法】が使えるようになる
・ゾンビラクーン:ドッグ種からラクーン種に進化。嗅覚は変わらないが、【土魔法】が使えるようになる
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まさかここまで進化先が多いとは思わなかった。そして師匠のトライボーンウルフはスケルトンウルフからの派生だろう。オオカミだけは強いからスケルトンからスタートするんだろうか? 他がキツネとタヌキで魔法だからねえ。
困った僕は、素直にフォグに何になりたいかを聞いてみた。すると、何故かフォグはあっさりとラクーンに決める。【土魔法】が使いたいのか、それともタヌキになりたいのか……どっちか分からないけど、本人の希望だからポチっと。
フォグも光り輝いて「ピカッ」で終了。ラクーン、つまりタヌキになった。
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召喚モンスター:フォグがゾンビラクーンに進化しました
召喚モンスター:フォグは【アースバレット】を習得しました
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思ってた通りのタヌキ顔だし、お腹はダルダルだ。それはいいんだけど……。
「うわー! 何これー!! だるだるー、ぶよぶよー。あはははは、柔らかーい!!」
「キュウ……」
何だがフォグが嫌そうな顔してるなぁ、それとタヌキになったからか関心が減ったセナ。犬が良かったんだろうか? 何故かタヌキになってから反応が鈍い。……いや、違うな。自分が構おうとしたら先に取られたからか。
「とりあえず興奮してるところ悪いんだけど放してやってくれないかな? フォグも迷惑そうにしてるから」
「ああ、うん。ゴメンゴメン。こんなの初めて見たし、ぶよぶよで柔らかいし、触ってて楽しいのよ」
「まあ、気持ちは分かるけどね。それはともかく、使い魔だとか古の悪魔だとか言ってたけど、どういう事? 使い魔になると何かあるの?」
「あー、うーん……分かってなさそうだから、まずは私の事ね。私はラスティア。かつて<狂性の悪魔>と言われて恐れられてたんだけどね、やり過ぎたのか大悪魔に封印されたのよ。君が持ってた短剣ね」
「ふーん。僕の名前はコトブキ。こっちのスケルトン・クラフター・下級がファル。こっちの……フォグをモフってるのがグーラのセナ。後ろに居るゾンビホースがドース。そしてゾンビラクーンに進化したのがフォグ」
「ふんふん。で、コトブキはネクロマンサーと。私がどうなったのか分からないけど、誰かが封印の地から盗み出したんでしょうね。その結果、私は表に出て使われた筈だけど、何故か全く私の力に汚染されてなかったのよ」
「呪いの事を言ってるんだろうけど、呪いがありますっていう鑑定結果なのに素直に使うバカがいる訳ないじゃん。切りつけたら呪われるんだから、投げるに決まってるよね?」
「………コトブキ、あんた私を投げて使ってたの? 何て奴、短剣を使わずに投げるなんて……!」
「そんな事を言われても、さっき言ったように呪われたい奴なんて居ないんだしさ、呪われないように使うに決まってるじゃん。その結果、僕を魅了出来なかったって事?」
「そうだけど、そうじゃないわ。その後も【魅了】を使ってたけど、永い封印で力を奪われてたからか碌に効かなかったの。そうしたらいきなり石を投げてきたのよ! あれ、とんでもなく痛かったのよ!!」
「だーかーらー、そんな事を言われても困るって。僕達を殺そうとしてきた以上、抗うのは当然だよ。そして抗う以上は殺し合いに決まってるじゃん。そっちから殺しにきた癖に何言ってるのさ」
「いや、まあ……そうなんだけどね。本来なら切り付ける度に私の力が星に拡散し、使われて壊れて私は復活。使った奴を下僕にして、拡散した力を吸収。多少は力を取り戻す筈だったのよ。まだ強い力と意識がある内にそうしておいたから」
「その後、永い年月が経って僕の手に渡り、僕は切りつけもせずに使ったから弱体化したままって事かー。僕の前に盗賊が持ってたよ? 男の尻を狙うような連中だったけど」
「うぇ、それは勘弁。私はサキュバスの悪魔よ? 女性淫魔として男の相手なら喜んでするけど、お尻はねー……それはインキュバスの役目じゃないかしら? まあ、そんな事言ったらインキュバスの連中が怒るでしょうけど」
「サキュバス”の”悪魔ってどういう事? サキュバスって悪魔じゃないの?」
「??? 違うわよ? 悪魔と言えるほどの力を持った者を<悪魔>と呼ぶの。私は悪魔を名乗る力を失ったから、唯のサキュバスね」
「ああ、そういう事なんだ。ならウルフマンの悪魔とか、キャットマンの悪魔とかも居るんだね?」
「昔で言えば居なかったけど、永い間封印されてたから何とも言えないところね……で、これ今どこに向かって歩いているの? かなりヤバ気な奴が居ると思うんだけど?」
「僕はこれから昼食だから、師匠の家に戻ってるだけだよ。っていうか、もう目の前だけ……ど?」
「コトブキよ、なにやらおかしな波動が感じられるから変だと思って待ち受けておったが……随分と久しぶりじゃのう、ラスティア」
「ゲッ!? <暴虐のエンリエッタ>!! 何であんたみたいな頭のおかしい奴が居るのよ!?」
「たわけ! ここは妾の家じゃ、おって当然であろうが。しかもコトブキは妾の弟子じゃ、ラスティアがおる方がおかしかろうが!」
「えっ!? コトブキ、こいつの弟子なの!? 止めときなさい、あいつはネクロマンサーの癖に自分の手でブチ殺さないと気が済まない変人よ? だから<暴虐>と呼ばれたんだし」
「阿呆か! 妾と会う前からコトブキは前に出て戦うタイプじゃったわ! 戦い方は碌に教えておらん!!」
「……マジかー、頭のおかしいコンビだったなんて」
前で戦うってそんなに変かな? 全員で戦った方が早いと思うけどね。




