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「『双龍拳』!」


 セナとデカいのとが殴り合っている間に、ベルモットは金獅子の群を殺し、小さい方、アニスに肉薄していた。


『剛腕』と『武術』のスキルを十全に扱い奮闘するベルモットに対して、同様のスキルを扱い同様の練度で戦うアニスは、金獅子を抜きにしても強く、速かった。


そして、金獅子にはもう一つの能力があった。


「【金獅子装】!!」


 今までは金色の獅子が召喚獣の様に出現するだけだったのを、アニス自身を覆う様に展開することで、見た目はコンパクトに、アニス本人と金獅子のステータスを足し、武術機能まで向上した強化形態となった。


「異教徒のクズめ!泣いて許しを乞うても許さないからな!」

「……」


◇◆◇


 ボロボロに砕けた金獅子は光の粒となり世界に溶け始めていた。

 中身のアニスは最早虫の息で、端正な顔も腫れ上がってしまっていた。

 歯は抜けているし骨は折れていて、至る所が内出血で青や赤に変色している。


 ステータス上では金獅子を装備したアニスがベルモットよりも強いはずだったが、桁が違うわけではない程の差は、ベルモットにとっては大した問題にならなかった。

 

 セナは知らないベルモットの戦闘能力は、一介の奴隷が持っていて良いものではない。

 

「ベルモット……お前、強いんだな。」


 ボコボコのアニスよりはまだ軽傷だが、やはり殴り合った後のあるセナはかなり痛々しい見た目をしていた。


 セナはアニスに触れてステータスを奪うと、そのまま死に絶えるまでの暇も与えずアニスを殺した。


「ありがとう、ベルモット。これからも、頼む。」


 セナはベルモットと同じになる程度にステータスを振り分け、蜘蛛の子を散らす様に逃げていく騎士達を皆殺しにしていった。


◇◆◇


 襲撃して来た騎士を見る限り全員殺し、セナとベルモット、合わせて50万ものステータスを手に入れた。

 こうして外敵の脅威を消し去っても、街に入ることは許可されなかった。


 神聖騎士を3人、全部で4人殺した。

それは、神聖教との全面戦争を意味している。

 そんな危険分子を街に入れたら絶対に目をつけられる。

 その話を聞いた避難民達は嘆き、もうこのまま死んでしまうのかと絶望した。

 そんな中で、自殺者が出なかったのは他でもない、セナの存在があったから。

 セナは化け物の様に強いと噂される神聖騎士を四人も殺し、数千の騎士を血祭りにあげ、避難民を守り切った。


 セナこそがこの集団の頭であり精神的支柱となっていた。


「わかった。どうにかしてやる。」


 セナは、その街から少し離れると、【地】属性を使い簡易な高さ3メートル程の円形の隆起を作ると、地盤を固め地下に空間を作り生活環境を整えた。

 地上にも土で作った簡易住居を設け、地下には非戦闘員を、地上には戦える若い男を集めた。


 リーダーにハロを据えた、9人の若者がそこに集まった。


それぞれを【鑑定】し、ステータスを分配する。

 神聖騎士の土像相手に理解した地力の差。ステータスでは補えない戦闘能力こそが勝敗を決めると理解した。

 そのため、一旦9人からスキルを奪い、ステータスを均一にした。

 その9人の指導をベルモットに頼み、セナは拠点の生成を再開した。


 高見台を作り、地下空間に支柱を張り巡らせ、追撃に備える。

 第二陣を退けた結果、おそらく次の襲撃は一ヶ月以上先になるはず。3人も追加した神聖騎士という過剰戦力が負けるとは誰も思わないだろうから、時間差の第三陣は無い。と信じたい。


 問題は、入場を拒否して来た街の連中。

セナだけならともかく、セナと共に逃げて来た避難民まで受け入れ拒否するというのはあまりにも非人道的すぎる。

 

 食料問題は魔法の力で大丈夫だが、街の事は調べる必要がある。


 そのため、セナは自己鑑定で何か有用なスキルがないかも探すことにした。

 

「ん?」


 見ると、固有スキルの欄が増えていた。

殺した神聖教の中に固有スキル持ちがいたのだろう。


【交換】

【結界】

【自爆】

【視覚共有】

【召喚:春スライム】

【召喚:鉄鋼龍メタドラ】


 人数を考えれば妥当な個数なのかもしれない。

有用なスキルならもっと上の地位にいたのだろうが、上三つは用途が分からなすぎる。

 しかも、魔物の召喚なんてしてるやついなかったから、使えないスキルの可能性も考えておく。


「【交換】って何を?」


 【自爆】はそのままだろうし、これを持っていた奴は人間爆弾になりたくないから周囲にはこのスキルを黙っていたんだろう。

 【結界】も、どういうスキルか想像できない。


「例えば木の枝と、何かを【交換】する?」


 よく考えれば、スキルの文字を【鑑定】で読めば良かったのだが、その必要はなくなった。


 【交換】と唱えた瞬間にはその手のひらから木の枝は無くなり、代わりに剣が握られていた。

 それと同時に、訓練をしていたベルモット達の方から悲鳴が聞こえた。


「わぁ!?剣が枝に!?」


 実技の訓練中ではなく素振りの最中だったから運が良かった。


 事情を説明して剣を返し、【結界】についても試してみる。


「【結界】」


 セナを中心とした半径3メートルほどの球体が出現し、セナの体が少し浮く。


厚みは5センチ程に見えるが、頑丈そうな見た目だ。


「耐久テスト!」


 そんな結界を躊躇なく殴るセナだが、結果は意外にも。

殴った衝撃で球体が横移動し、セナもつられて動いてしまった。


「硬くはないのに壊せない。」


セナの抱いた印象はそんなもの。

 しかし、壊せないとなると壊したくなるもの。

壊せないものがあるという不安要素を解消する。


「……『一閃(スラッシュ)』」


 先の戦いで、集中すればランク2のスキルが使えるとわかった。

 これを使って、結界を内側から破壊しようと試みる。


「……手応えはあった。けど、割れない。」


 切り傷はついた。

しかし、破壊にはまだ一歩届いていない。


「剣術のスキルって意味不明なんだよな。」


 セナはそう思っているが、それはセナが初期スキルしか持っていないからそう思うだけである。

魔法系のスキルは使用可能な魔法がなんとなく頭に入っているが、剣術等のスキルは鍛錬や伝授による習得以外だと『一閃』のような初期スキルしか使えない。

 最も、セナは初期スキル以外も持っているのに使えていないだけだが。


 もっと言ってしまうと、セナとベルモットが同じステータスで戦えば、10割でベルモットが勝つ。

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