21
ベルモットの助力により窮地を脱したセナは、ベルモットとステータスを分配して乱戦に突入していた。
数千人の兵士たちを血祭りに上げ、大量のステータスとスキルを獲得する。
時折回収したステータスをベルモットと共有することで、セナとベルモットは着実に強くなっていった。
そして、神聖騎士2人に近づく。
「げえっ!ラッセルもやられたの?うわぁ引くわぁ。異教徒のゴミに負けるとかラッセルもカスやなぁ。」
「こら、アニス、死んだとは言え同胞を貶すのはやめなさい。彼らは己の職務に真摯に向き合い華麗に散ったのです。賛辞こそが相応しい。」
甲冑を着込んでいるから詳しくはわからないが、身長が140センチ程度の小柄のやつと、逆に2メートルは簡単に超えてそうな細長いやつが並んでいた。
会話から、小さい方の名前はアニスというらしい。
「ぐっ!?」
相手の出方を見ようとしていたセナの両足に激痛が走る。
見れば、地面から突き出した槍の様なモノがセナの足を貫通していた。
ベルモットを見ると、そちらにも同様の槍が生えていた。
「『雷鳴』のラッセルを殺したのは褒めたるわ。でも神聖騎士2人に勝てると思わない方がええで。僕らのコンビネーションはエゲツないからね。」
「『金獅子』のアニスと『土像』のメル。我々神聖騎士はそれぞれがそれぞれを引き立てる力を持つ。その意味が分かるな。」
小さい方は手に持った小さめの剣をセナに向けて突き出すと、その先から黄金に輝くライオンが複数体出てきた。
また、それに合わせる様に足を貫いていた槍が更に盛り上がり、その根本から人の手の様な物まで生えてきた。
金のライオン、金獅子。土の人形、土像。
つまりはそれがこの2人の最大の能力。
「ベルモット、最大火力の『炎』魔法を出せ!『光天・煌乱熱波』」
「はいっ、『炎天・獄乱波動』」
光の乱反射と炎の光源で周囲が光に包まれる。
しかし、セナにはその中での全てが見えている。
目が光に強いとかそういうのではなく。
目を闇魔法でガードしているから。
光の中、神聖騎士は目を閉じていた。
ライオンも動きは止まったが、土像は動いていた。
『健脚』の高速移動で神聖騎士の背後に立つ。
目を閉じているはずのデカい方が振り返った。
「『水天・濁流砲』!」
数千リットルに達する大量の水を放出し、デカい方に射出する。
土像をまきこんでの奔流はデカいのと小さいのを分断させた。
「ベルモット!跳べ!」
「はいっ!」
光源が弱り始めたが、土像は全部流した。
金獅子は小さい方の周囲をガードしているが、そっちは無視する。
「『一閃』!『スラッシュ』!『スラッシュ』!」
ベルモットの対空時間中に、デカい方に斬りかかる。
ベルモットには跳躍後の着地点を指定していない。
このまま行けば金獅子の群に突撃する。
イマイチ、ランク2とやらの精度が芳しくないため、中途半端な真空波や、かまいたちが出るだけの『剣技』がデカい方に傷をつける。
出血も少なく皮一枚を切る程度の斬撃は、セナに疲労感と緊張をもたらす。
デカい方も弱まった光に少しずつ目を開け始め、土像が地面から生え始める。
セナとデカいのとの距離は数メートル。
あと五歩も踏み込めば触れられる距離を、セナは詰めきれずにいた。
決定打はセナの足に絡みついた土像の手。
脆い土塊が足に絡まり、進行を妨害していた。
あと少しでベルモットも着地する。
この光では金獅子の動きが再開して、ベルモットに襲いかかるのもすぐだ。
奇襲、不意打ち。これまでに重ねて来た勝利の全てが邪道な戦法によるもの。
その地力の無さが今露呈する。
「『山崩鎚』!」
セナの胸に焦りとパニックが訪れ、時間が遅く感じる。
数分に及ぶ思考の中、聞こえて来たのはベルモットの高く芯のある声音。
そして、その声の方向からの爆発音の様な轟音。
見れば、金獅子の一体がベルモットの足の下でぐにゃりと変形して伏せている。
頭らしき部位には金色の液体を吹き出す金色の塊があるだけで、獅子の姿はまるで見えない。
「『手刀・金剛斬』!」
今度は、手の指を揃え、水平打ちの構えで金獅子に対峙するベルモットが見えた。
小さい方の視界が回復して、金獅子が動き始めたと同時に、その手刀を横薙ぎに払う。
瞬間、金獅子は横に一本の線が入り両断され、その後ろにいた小さい方の胸部にも一本の切り傷が。
「よそ見をするか。悪くないぞ。嘘だがな。」
セナの耳に言葉が聞こえる。
碌に会話もしたことがないし、第一印象は最悪だし、それとは別に感に触る声だった。
セナの頭に衝撃が走り、足の土手を砕いて後方に飛ぶ。
足元の拘束から解放されたが、今度は倒れた体を土の手が抑える。
「アニスは不意を突かれたらしいが、貴様を殺して向こうに加勢すれば問題無い。我々神聖騎士は神より授かった能力以外にも、鍛え上げた肉体での戦闘にも精通している。二人の神聖騎士を手にかけ驕ったな。」
デカい方が倒れたセナに近づき、トドメを刺すように拳を振り上げる。
「さっき。」
「ん?」
「跳び膝蹴りだったんだな。見えなかった。」
「……」
「でもな。蹴られた感覚があったから、ダメ元でやってみたんだ。手以外からでも獲れるかなって。」
「……なに?」
「お前の『魔力』だけだけど、獲れちゃった。」
魔力だけだが、奪うことに成功した。
セナの身を拘束する『土像』は最早機能しない。
拘束力も無くなったただの土は、服の汚れにしかならない。
「魔法が……どういう手品か分からんが、肉体での勝負になっただけ。来い、叩き潰してやる。」
そこからの戦闘は泥沼だった。
殴り殴られ、蹴り蹴られた。
その度にセナはデカい方からステータスを奪い、スキルを奪い、属性を奪った。
『敏捷』『忍耐』『筋力』『知力』『幸運』『HP』『剛腕』『信仰』『聖痕』『光』『聖』
様々なステータスを奪われ、デカい方の肉体は自由を失う。
デカいのは最早ゾンビの様なボロボロさで、セナは小汚いというボロボロさで、その場に倒れた。
セナの目に映るのは、真っ青な大空を背景に、小さい方を殴り殺しているベルモットだった。




