幕間のようです。
「『物語の外側』へようこそ。あなたには彼女の物語を見てもらった訳なのだけど、、、どうだったかしら」
少女は今この状況が楽しくて愉しくて仕方がないといった様子でこちらへと問いかけてくる。
「ーーー。」
「えぇ、そうよ。残念だけれど『書かれていた通り』彼女は死んだわ。ただ読んでいるだけのあなたには何がどうしてこうなったのかわからないでしょうけど」
「---?」
「彼女がどうして死んでしまったか知りたいの。そうね、別に教えてあげてもいいわ。」
○●
「もう気付いていると思うけど、彼女が死ぬことになったきっかけは『魔法を使えるようになったこと』よ」
「ーーー?---。」
「そんなに焦らなくてもきちんと説明してあげるわ。まず大前提として彼女の住むリデラ王国では『魔法が使えること』というのはあなたが思っているよりも重要なことなの。彼女の父も言っていたでしょ?すべての国民は五歳になると魔法の適性があるかを検査して適性がある場合には国に報告するって。それだけあの国では『魔法が使えること』は重要なことなの」
「……」
「そして『彼女が後天的に魔法を使えるようになったこと』これが一番の問題なの。正確には彼女自身ではなく魔法の適性検査の方に問題があったのだけれど、、、それはこの際置いておきましょう。さっきも言ったのだけれどリデラ王国では魔法の適性を持っている者を見逃さないよう五歳で検査を行う。でも彼女は検査で適正なしと言われたのにもかかわらず後天的に魔法を使えるようになったわ。このことがもし周囲に広まったらどうなると思う?」
「ーーー。」
「そうね、子どもを持っている親ならばこう思ってしまうかもしれないわね。『うちの子ももしかしたら…』って。舞踏会で彼女をナイフで刺した子、名前はココナちゃんって言うのだけどココナちゃんの親がその典型的な例だったわ。彼女の場合、これまでの素行の悪さから流れていた悪い評価も相まって余計そう思わせてしまったのかもしれないわね。『彼女でもできたのだからうちの子ができないはずがない!』とかね。その期待にココナちゃんも必死に答えようとしたわ。でも残念ながらココナちゃんには魔法の適性が絶望的なまでになかった。『本当に』なかった」
「……」
「ココナちゃんは努力家でね。これまでも両親の期待に応えようとそれはもう文字通り血が滲むほど努力をしてきた。でも今回ばかりは努力をいくらしても駄目だった。そんなココナちゃんに彼女の親はなんて言ったと思う。慰めの言葉?違うわ、『期待外れだ』ですって」
「ーーー!」
「ええ、普通なら最低の親よね。でも、『貴族の』親としてならこれが普通の反応なの。子は親の期待に無条件で応え、自らの価値を示すこと。それが『貴族の』子どもの役割。そうして自らの価値を最も示した子が次代の当主としてその家督を継ぐのよ。ココナちゃんは親の期待に応えられなかった。ただそれだけ」
「……」
「ココナちゃんもそれは理解していた。いや、しているつもりだった。まだ子どもの彼女には親から放たれた言葉はあまりにも辛すぎた。今まで親の喜ぶ顔を見たい。ただその一心で努力をしてきたココナちゃんを支えていたものが壊れてしまった。それからの彼女は何をしても上手くいかない、身が入らない、結果を出せない、焦った焦って焦って焦ってでも何も残せなくて何も変えれなくてなにもなにもなにもなにもなにもなにもなにもなにもなにもなにもなにも」
「……」
「そしてココナちゃんは『壊れた』……その後はあなたも知っている通りよ。舞踏会で彼女を目にしたココナちゃんは激情に駆られて近くにあったナイフで彼女を殺した」
○●
「これが今回の物語の流れね。これを聞かせた上でもう一度聞くわね、どう思ったかしら。彼女の死は理不尽?ココナちゃんが可哀想?もしかして彼女が死んだ時の周囲の反応を見れて面白かったとか思ったかしらぁ?」
「ーーー!」
「ふふっ、案外普通なのね。まあいいわ、今回のことを通してわかったかもしれないけど彼女の影響っていうのは予想しているよりもかなり大きなおーきなぁものなの。それこそ一挙一動で周囲に影響を与えかねない程に。それが良いものか悪いものかは結果を見るまではわからない。もちろん私にもね。だから私達はその選択をしたことでどうなるのか、その結果を見届けなければいけない」
「……」
「その結果今回のように彼女が死ぬかもしれないし彼女以外の誰かが死ぬかもしれない。だからね、最後にひとつだけあなたに覚えておいてほしいことがあるわ」
「彼女が死んだ後もその物語が続いていることを忘れないで。彼女は確かに死んだ。モナもセリアもそれを機にベルフォート家を去り、ココナちゃんは死ぬまで懺悔し続け、王の権威が失墜したリデラ王国では多くの国民が死んだ。別の物語が始まってもその事実は変わらない。だから、、、」
「わすれないで」




