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心無き少年は悲劇を謳う  作者: 西村暗夜
2章 黄昏のワルツ
22/29

統率するもの、連なるもの 前編

そこは完全に破壊されており現在は別の建物が建てられている。

しかしそれはよそ者からは視認されることは無く、認識されることは無い。

「愚者だ、今戻った」

そう言いながら私は建物に入る為の唯一の扉の前に立ち、愚者のタロットカードをカードキーとしてかざした。

【識別コード、愚者を認識しました。おかえりなさい】

冷たい声で発された女性の声が終わると同時に、目の前の扉はカチッと音を立てて入るように促した。

私は軽い力でノブなど無いドアを前に押し出し、中へと入った。

「遅かったじゃねぇか、愚者」

その声が聞こえた途端、拳が自身の目の前に飛び込んできた。

それを横に避けた後、その手の持ち主を睨みつけた。

「…いきなり攻撃してくるなと何度も言ってるだろう、【戦車】」

そこには1人の大柄な男が仁王立ちで立っていた。

まるで自身の肉体を見せつけるかのように上半身を露出させ、茶色い髪と赤い目をした、いかにも肉弾戦主体の大男が。

「わりぃわりぃ、ついな」

全く悪びれる様子もなく言う戦車に、私は少しの苛立ちを覚えたが、ここでは抑えることにした。

「要件はなんだ?」

「そうだった、21:00に集まるとよ。お前だけアナウンスの時外出中だったんでな、節制の奴がお前に伝えておいてくれと」

「そうか、了解した」

戦車から伝えられたことを頭の中で連呼して刻みつけて、私は部屋へと向かおうとする。

「そういやお前、タナトスの子供達と戦ったんだって?」

そこへ、戦車がにやけ顔で面倒な質問をしてくる。

「…ああ、戦ったがなにか?」

「なにかってお前、そりゃタナトスの子供達なんて誰も戦ったことないんだぜ?感想を言えよ感想を」

…本当にこの男は面倒臭い。しかし一応こいつも仲間だ、情報を与えておけば次に奴と戦う時に有利になるかもしれない。

「面倒な敵だと思ったな。本人の能力もそうだが、美那里博士のバックアップがある以上、相手の手の内が掴めない内は相手にしない方が得策だ」

「ほう、あの博士のバックアップか。そりゃ厄介だわな」

戦車は難しい表情を浮かべながら言うが、すぐにいつもどうりの暑苦しい笑みを浮かべた。

「ま、どんな小細工だろうと打ち砕けばいいだけの話だな」

「やはり脳筋か…」

そう言いながら、私は戦車を置いて自室へと向かった。

途中、野太い声で抗議する声が聞こえたが気の所為であろう。


「…おかえり、兄さん」

部屋に入り、荷物を片付けソファに座ると、背後からか細い声が聞こえてきた。

「ああ、ただいま」

私はそれだけ言うと、ソファに横になりそのまま睡眠へと入った。



時刻 20:51


私は目が覚めると同時に自身の妹と共に指定された集合場所へと足を運んでいた。

目的地の前へと着き、大きく開いた扉を前にして小さく溜息をつき、私はその扉の向こうへと入っていった。

21の椅子が円状に並べられただけの部屋。

そこが我々の集いの場だった。

並べられた椅子は既に殆ど埋まっており、自身の指定の席を見つけ出してそこへ腰掛けた。

するとその隣に座っていた黒いローブを着た赤髪の女に声をかけられる。

「ちゃんと来ましたね、節制が戦車に頼んだのは失敗だと思いましたが、あの脳筋でも伝言ぐらいは出来るんですね」

女はそう言いながら、少し離れた席にいる戦車を見た。

当の本人は席に座ったまま眠っていた。

「呑気ですね、本当に。反吐が出そう」

いかにも気分が悪そうに言う女に対して、私は前を向きながら、「女がそんな言葉使いをするものじゃないぞ、【魔術師】」

と窘めるように言うと、彼女は「癖なので」と悪びれずに言った。

少しの間、魔術師と話をしていると、会議の開始を告げるブザーが鳴り響いた。

それと同時にこの空間の話し声はすぐさま途絶え、居眠りをしていた戦車もいつの間にか目を覚ましていた。

少しの静寂の後、1人の初老の男が席を立った。

「皆の者、今日は忙しい中よく集まってくれた」

男がそう言うと、皆が同時に椅子から立ち上がった。

それを見た男は少しの笑みを浮かべた後、皆の顔を見渡した後、口を開いた。

「これより、対業鬼特殊部隊、第14回目の会議を始める」

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