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パワー・オブ・ザ・ワールド  作者: アカ ハル
藤原悠人 死亡
1/23

藤原悠人 第一の人生の幕引き。

ピーポーピーポー

という警察のサイレンが高層ビルの並ぶ街並みで鳴り響く中人々はただただ立ち止まり、ある者はスマホを片手に現場に近寄り、ある者はその現場から抜け出し反対方向へと逃げていた。

そんな光景は スクランブル交差点を歩く俺にとって別に気にしなくてもいい としか考えずにただただスーパーの半額セールのチラシを片手に眺めて歩いていた。

俺の名前は藤原 悠人 25歳独身のサラリーマンだ。

兄弟は上に姉 下に妹と弟がおり、大人になってからは姉は両親の介護を、残りの俺と妹と弟は自由気ままにそして自然に社会に取り込まれて行った。そして

今日は七月の九日 俺の誕生日だ。

いつもは金欠で困っている俺だが、誕生日くらいはいつもより派手にしたいと思い スーパーへ買い出しに出ていた。

いい天気だなと思い、空を見上げると ふと変なことに気付いた。建築中のマンションの所で何やらボヤ騒ぎが起こったようだ。

さっき騒いでたのはあれが原因か。

そう思った時、そのボヤの近くの鉄骨が動いた気がした。少し近付いて見ると.....やはり揺れていた。

どうやらまだ設置されないままボヤが起こり不安定な状態になっているんだろう。と考えた時だった。

ビュゥゥゥゥゥゥ!!!

人混みを 街並みを突然の突風が襲った。

少しの時間だったので特に膝をついたりするほどの激しい風でもなかったが、そんなことより自分の意識は目の前の少女に向いていた。

「逃げろ!!!!上だぁぁぁぁぁぁ!!!!」

そう叫ぶある男性。歳は俺と同じだろうか。だが今注目するところはその内容だった。 それを聞き上を向く人々の目には、

突風で落ちてくる鉄骨の姿があった。

そして皆が気付く。

このまま落ちたら その真下にいる少女が危ない。と

それを理解し足が動かない群衆がほぼ全員。 その中で動こうと考え 走って少女を助けようとした者が少数。

だがその少数でも距離が離れすぎておりきっと届かないだろう。



もっとも 一番少女の近くにいてそれで少女の危機にいち早く気付き 群衆より早く走り出していた俺以外は.......



気付くと体が動いていた。 助けなきゃ

そう思った時には足は動いていた。 口は震え、落ちてくる鉄骨が目に映る。

このままでは死んでしまう。

それでも助けなくてはという思いがあった。

だが 思った以上に鉄骨の落ちる速度が速かった。

このままでは少女と共に自分までもが鉄骨に潰されるのでは?

その疑問が浮かんだが、ふと少女の目が自分には見えた。

近くの親が手を伸ばしても届かないだろう場所で、

少女は目から大粒の涙を流していた。

「届けぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

そう叫び、俺は最後の一歩に全力を込めて跳び 少女の背中を押した。

その勢いで少女は奥へと抜け出すことが出来た。

その代わりに俺の体に 重く 尖った鉄骨が上から降り 背中に刺さった。



「キャァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

そんな声が響き 街中では人々がパニックに陥っていた。

皆は逃げ惑い 俺を見ていた人々は皆 足が震えたまま 立ち尽くし、座り込み 俺の惨状を目撃した。

俺は背中からその鉄骨が体を貫き、身体中から鮮血を噴き出していた。


いてぇ 腹と背中が焼けるように熱い。


口から血反吐を吐き その今にも閉じそうな目で前の方を見やる。

親の体に抱きつき、親と泣きながら少女は親の腕に抱かれていた。


良かった。


そう考えると自然と目が閉じていた。これが死かぁ そう考えた時だった。


「おにぃちゃん ありがとう」


震えるような それでいてなんとも優しい声に俺は安心する。


《告) 謎の犠牲行動.....結果.........藤原悠人死亡。 あまりにも不可解な行動.....よって藤原悠人をサンプルとして輪廻の輪から除外するものとする。なお 能力(スキル)の獲得は転生時に行うものとする。》


その声を最後に自分の意識は細い糸を切るかのように プツン と切れた。

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