Re:3 夢へと進みし……②
背丈よりも高いこの草の茂み……。
あの不自然な男は間違いなく、ここを進んでいった。もしくは、それ以外の可能性だって、無い訳ではない。ならば自分は、どう動くべきなのかを考えてた。
本来、尾行というのが悪いことだというのは十分に理解してる。けれど、それを考慮したとしても、男の行動は十分におかしかった。一般人がキョロキョロと必要以上に辺りを見回して、その後に猛ダッシュするなんてことは絶対に無い。そう思ったんだ。
「もしかして、左か……?」
ベガが何かに気付いて、歩き出した。それが何なのかは分からなかったけれど、僕はベガを信じて、後に続く。ベガが前に来ると、やっぱりその可愛らしい髪が目に入る。実はとってもサラサラなその髪は、いつ見ても綺麗だ。右側に垂れ下がっている一本の、俗に言うらしいアホ毛もまた、僕の心を魅了してきて……。
「ここだっ」
「わわっ!?」
突然の静止に対応することができなかった。危うくベガを巻き込んで躓くところだった。
……何でって……み、見とれてたからだよ。
「ルイ、大丈夫か?」
そんな僕の感情は理解していないベガは、ただただ、僕を心配していた。「その表情に元気をもらったから大丈夫だよ(イケボ)」なんてことは、友達だから流石に、恥ずかしくて言えないけれど……。素直に嬉しかった。
「う、うん、大丈夫……」
僕がにっこりと笑うと、ベガもまた、笑顔になる。ほんの一ヶ月で、ここまで仲良くなれるものなんだ、なんて。毎日生活しているからこそ、なのかもしれないけれど。でもまさか、宇宙人(暫定)と仲良くなれるとは。
「ほら、見てみろよ」
そう言って、茂みのある場所を指さしたベガ。そこは他の場所とは大分違って、弱々しくて。頑張れば通ることもできそうだった。というより、何でここに「草のトンネル」があることが分かったのだろうとずっと疑問だった。後に聞いたところ、どうやら足跡で分かったらしい。どうしてそこに着眼しなかったんだ僕は……。
「でも、こんな小さな隙間みたいな所、入っていけるかな」
ちょっと心配だと言うと、ベガは呆れた表情をして、僕に説いた。
「入れるか入れないかじゃないだろう。こじ開けるんだ」
どうしてこの子は時折かっこよくなるのだろうか、なんて思った上に、もし仮に、僕が女なら確実に惚れていたと思う。
……そんなことを考えているうちに、僕の顔は軽く火照ってしまったようで、ベガにもそれは気付かれてしまった。
「ルイ、どうした? 顔が赤いぞ?」
「あ、はは。なんでもないよ」
自分でも良く分からない状況だったし、恥ずかしくなって、トマトのように赤くなるのも嫌だったから、華麗にスルーした。すると、ベガはならいいんだと言い、背中から僕をひょいと担ぎ上げ、おんぶ状態にさせられた。
「はえ、えっ!?」
「よーしルイ。ここ、突っ切るぞ」
「え、突っ切るってちょま、まさ――――――――かッ」
――秒速約340メートルが、その一瞬にして解放された。
メルカには、こんなアトラクションがあるって聞いたことがあるけれど、もしかしたらベガがいたら、それをいつでも体験できるんじゃないだろうか。
「(ところで今何度だろう、ああ、速度か。ってそんなボケかましてルッ)」
「抜けたぞルイー。おーい、るーいー??」
こないだあった衝突よりも前にも、僕はこんな恥ずかしい気絶をしていたんだ。




